異をとなえん |

「波乱の時代(下巻)世界と経済のゆくえ」感想

2009.03.11 Wed

01:43:28

アラン・グリーンスパン著「波乱の時代(下巻)世界と経済のゆくえ」を読む。
上巻は回顧録だが、
下巻は前FRB議長アラン・グリーンスパン氏の経済に対する考え方だ。
現在バブルの責任者と目されて、評判は落ちているが、
私は賢人だと思っていた。
実際に本を読んで、その考え方に触れ、感じる所がたくさんあった。

資本主義に対する確信も、その一つだ。
私は資本主義というか、市場経済をかなり広く解釈していりう。
それに対して、かなり厳密に資本主義をとらえて、
その優位性を語っているのが印象に残った。

その他にも、いろいろな事が頭に浮んだ。
今回の金融危機のことを考えると、どうしてアメリカ経済が好調だったのか、
そして、どうしたら金融危機になるほどのバブルを防げたのかを考えた。

アメリカ経済が好調だったのは、住宅の価格上昇だったことは間違いない。
なぜ上がり続けたかの理由は難しいが、上がり続けることによって、
経済はうまく回転していた。
住宅の価格上昇は、
投資の利子率を改善して世界から資金を集めることが可能にした。
資金のアメリカへの集中は、ドルを高めに誘導することを可能にし、
国内の製造基盤を海外に移すことによって、
簡単に利益を産み出すことを可能にした。
国内の産業基盤を放棄することは、労働者の所得を減らし、
消費を減らす効果があるはずだが、資産価格の上昇によって、
それは補われ、個人消費を高く維持し続けた。
資産価格の上昇、海外からの資金の流入、個人消費の拡大、
産業基盤の海外移動、これらがうまくつながってアメリカ経済は好調を続けた。
資金自体がうまく回るようにした、金融の役割も大きい。

けれども、資産価値の上昇が住宅のバブルだということが明確になった今では、
経済の成長もむなしい気がする。
バブルによる直接的な問題は、外国からの借金だが、これは証券化によって、
その多くを外国に転売している。
そういう意味でこれは大きな問題ではない。
残りも、ほとんどがドル建ての借金である以上、
アメリカとしてはそれほどの問題でない。

問題は、今後経済が苦しくなるにつれて起こることだ。
現在の危機が落着けば、海外からの資金流入は当分ありえない。
これほど手痛い失敗をした以上、アメリカの証券には当分投資できない。
そうすると貿易赤字を埋めるために、輸出を伸ばすしかない。
海外の競争に負けた産業を元に戻すのは、賃金を下げるしかない。
アメリカが切り捨てた産業を新たに入れるのは苦しい過程になる。
景気変動だから、仕方がないにしても、
アメリカにその後退に耐える力があるのか。
国内の分裂が深刻になっている今では心配だ。

このような犠牲を払うだろうことを考えると、
どうやったらバブルを抑制できたかを考えさせられる。

元凶が住宅価格の上昇であることは間違いない。
ある意味上昇は防げなかったかもしれないが、
少くとも税制上の優遇措置などは改善できた。
意図がどうであれ、資源配分を歪めることが望ましいわけはない。
日本のバブルも土地が相続の際に有利がことが、価格の上昇を招いた。
それは防いでおくべきだった。

住宅価格の上昇を止める以外の対策はなかっただろうか。
アメリカ企業が国内の労働者の首を切る事を抑制して、
海外への進出をもう少し緩やかにできなかったかと思う。
解雇された従業員の生産性が上昇しない限り、
経済としてもなにかメカニズムがおかしい。
日本の場合は、円高でもなかなか海外に生産が移ることはなかった。
ある程度長い目で見れば、円相場のトレンドが逆転することによって、
その経営にはそれなりの合理性があった。
アメリカ企業には、日本の経営の真似はできないのだろうか。
もっともアメリカ企業の経営者は真似しようなどど、全然思わなかっただろう。
たぶん、経営者にはアメリカの労働者も中国の労働者も区別をしていない。
世界経済全体にとっては、アメリカ企業のやり方は正しい。
しかし、アメリカ人、アメリカ国にとって正しいやり方かどうかは疑問を感じる。

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら