異をとなえん |

アメリカの大恐慌が長く続いた原因は? - なぜ日本のバブル崩壊後の停滞は長く続いたのか?(その2)

2009.02.03 Tue

19:37:37

前回
の観点から、アメリカの大恐慌についても考えてみよう。
大恐慌当時と戦後のアメリカを比べてみると、何が大きく変わっただろうか。
日本の大停滞の原因が土地価格の下落だとしたら、
アメリカの停滞の原因も土地がらみではないだろうか。
そういう観点から考えると、戦後アメリカに自動車文明の花が開き、
郊外に人が移動していったことが、停滞の原因ではないかと仮説がたてられる。

大恐慌前、自動車は急激に売れるようになった。
自動車が大量に売れるようになると、
人々はより良い居住環境を目指して郊外に移動していった。
アメリカ型生活様式と呼ばれる、ハリウッド映画で同じみの、
広い家、芝生、子供、愛犬、家電製品、そして自動車のある生活に人々は憧れたのだ。
日本人にとっても、戦後豊かさの象徴となる生活にだ。

しかし、郊外に大量に住民が移動していったことには負の面もある。
都心からの住民の脱出による負の作用だ。

自動車が普及する前、アメリカは鉄道の国だった。
大陸横断鉄道が走り、大都市には通勤線がつながり、
路面電車がいたる所にはりめぐらされていた。
だから、今の日本の東京のように、都心部の地価は高く、
都心から離れていくと安くなっていたはずだ。

しかし、自動車の普及によって、路面電車は廃止され、
通勤用の鉄道も使い勝手が悪くなっていく。
それ自体が、さらに郊外への住民の移動を促す。

そして、住民が抜け出した後の住居に、
自動車を持てない貧困階級の住民が暮すようになり、
都心の生活環境はさらに悪化する。
結局、都心部はスラム化してしまい、普通の市民は暮せなくなった。
ニューヨークを除いたアメリカの大都市の都心部は、ほとんどがスラムに近いはずだ。

都心の一等地がスラム化したということは、この間に地価の急落が起ったということだ。
巨万の富を生む打ち出の小槌から、ガラクラへの転落である。

今述べてきたようなことが、正確にどのくらいの時期に起こったかは調べきれていない。

日本の今の住宅は、80年前の米国に及ばない
(読むには登録が必要)

上記の記事によると、ラドバーンプロジェクト、
(「車社会の到来を予測した歩車道分離の交通システムを構築した、世界最初の分譲地」)は、
1928年に始まっている。
実際に郊外に移動した住民の規模などはわからないが、
この頃から移動は本格化したように思える。
そして、
この前読んだグリーンスパンの自伝
によれば、マンハッタン生まれの作者が、郊外に転居したのは1950年だった。
ニューヨークが都市の集積の魅力を最も持った地域で、
住民の脱出が最も遅れただろうことと、
グリーンスパンがまだ24才の若者で、それより金持ちで車に早く手を出した層は、
もっと早く移動しただろうことを考えると、
大恐慌期に都心から住民が移動したことはおかしくないように思える。

住民の移動による地価の下落は、不動産の所有者たちには、とてつもない事態のはずだ。
実際の価格の下落は次のようになったと思う。
まず、大恐慌が始まったことによって、都市の地価が急落する。
正確には大恐慌によって、買い手がいなくなり、不動産取引が停滞する。
どうしても資金が必要な人は仕方がなく土地を投売りする。
地価は急落する。
この時点では、おおかたの所有者はまだ悠揚に構えていたことだろう。
不況による、地価の一時的急落であって、いずれは戻る。
それまで保有しておけばいい。
でも、どのくらい時間がかかるかはわからないから、
消費は控えめにして、貯蓄を増やそうと。

しかし、地価の低下は簡単には終了しない。
都心の中心部から郊外へ住民が逃げ出していけば当然だ。
家や部屋を借りていた人たちは、所有者と違って簡単に逃げだせる。
商業地や住宅地の所有者が、地価の低下が不況のせいではなく、
郊外に住民が移動していったせいだと、はっきり自覚するのにたぶん十年ぐらいかかる。
これが1929年の大恐慌開始から、1939年ぐらいまでに進行したことだ。

今まで述べてきたような過程を通じて、地価は下落していった。
鉄道形社会だったアメリカにとって、
土地資産が国民資産に占める割合は大きかったはずだ。
その資産が毎年小さくなることによって、
日本と同じようなメカニズムが作動して、停滞は続いていった。
これが私の考えたアメリカの大恐慌後の停滞が長く続いた原因だ。

自分としては、かなり納得できる仮説なのだが、あまり裏付けはない。
特に郊外への住民の脱出は戦後であって、
大恐慌期にそれほど盛んだったかという疑問がある。
その頃の、地価の推移や、
土地自体の国民資産の大きさがどれくらいかを検証することによって、
今後信頼性をあげていきたい。

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