異をとなえん |

なぜ日本のバブル崩壊後の停滞は長く続いたのか?

2009.02.02 Mon

18:26:32

アメリカの大恐慌後の大停滞はなぜ長びいたのか。
日本のバブル崩壊後の停滞が十年以上続いているのはなぜか。
これらの理由をずっと考えている。
ブログでも意見を述べている。
それらの仮説をたてては崩すが、
いろいろ考えるとどうも納得できない部分が生まれてしまう。
しかし、最近自分としては本命ではないかという仮説が生まれた。

前書いた記事の

アメリカのバブルの真因

の中で、アメリカの自動車文明の変換が求められているならば、
停滞は長びくと書いた。
これについて考えているうちに、
大恐慌にも日本のバブルにもあてはまる気がしてきた。
すべては不動産価格のトレンドの変換が、
とはいっても不況だから、下落が原因ではないだろうか。

日本のバブルの崩壊を考えてみよう。

地方の「失われた30年」、生かされなかった道路・新幹線(2008/3/31 )

上記の記事にあるグラフを見てほしい。
バブル崩壊後、地方の地価が下がり続けていることを示している。
ともすると、地価の下落はバブル崩壊による不況のせいでおきていると捉えがちだが、
三大都市圏の地価が持ち直したことを考えれば、
地方の地価の下落は別の原因だということが想像できる。

地価の下落の原因は記事にも書いてある通り、人口の減少だ。
土地の需要の多くは、人々の住居用であり、人々の活動に伴なうサービス用だ。
人口が減少すれば、それらの需要は減っていく。
需要が減れば、賃料は下がり、賃料の将来分も含めた総収益が収益還元法によって地価となる以上、
地価も下がることになる。

土地がほとんど永久に使用し続けることのできる財である以上、
未来の予測はその価格に大きな影響を与える。
賃料が上昇し続ける予想があるならば、地価は高く計算され、
それに対して、賃料が下落する予想があれば、地価は低く計算される。
賃料は変わらない予想が、普通収益還元法で使われるが、
これは賃料にトレンドがある場合には、あまり役に立たない。
毎年賃料が5%上昇するとかすれば、すぐに収益は物凄い額になってしまう。
バブル期にとてつもなく地価が上がったのは、賃料の上昇をとてつもなく見こんだためである。
しかし、賃料の上昇がどれほどなのかは予測が非常に難しい。
バブル前の土地の価格が常に上がることを前提して、
えいやっとの取引になった理由である。

賃料の上昇を過剰に見込んだ地価の形成も、
実際の賃料が下がり始めると、それを無視するわけにはいかない。
賃料を下落傾向として計算しなくとも、少くとも賃料一定で再計算する必要がある。
三大都市圏の地価はそうやって調整された。
バブル時のさらに人口が集中して、賃料が上がり続けるといった予想を修正したことになる。
そして、三大都市圏では地方から人口を吸収して、一定の人口を維持するという予想で地価は定まったように見える。
もちろん、東京でも丸の内や新宿といった地域での偏りはあるし、東京、名古屋、大阪といった三大都市圏での偏りもある。
全体としては定常状態だろうという予想だ。

2006、2007年ごろのプチバブル状態では、都心部の人口集中が進むことによって、
中心部の土地が、さらにある程度地価が上昇する余地があることが明らかになった。
地価の上昇と下落は、その分を地価に盛り込もうとして、いきすぎたためだろう。

人々が、
地方に対して人口の減少を見込み、三大都市圏に対して人口の定常状態を見込めば、
それまでの人口が増え続ける予想で計算された地価は大きな影響を受ける。
この結果が、バブル後に発生した地価の大幅な減少であり、資産のデフレ状態だ。
この資産のデフレこそが、バブル後の停滞を長引かせた原因であり、
失なわれた十年と呼ばれた不況の原因である。

しかし、地価の下落はバブルの時に起こっただけではない。
田中角栄の列島改造論の時も地価の大幅な上昇が起き、
石油ショックで不景気になると大幅に下落した。
この場合、なぜ今回のような停滞が起きなかったのだろうか。
あの時点では、人口の減少ははっきりしていなかった。
人口は増えていたので、需給によって現在の賃料は上昇していき、その結果を見込んで地価は元に戻った。
結局、一時的な調整であってトレンドの変換ではないために、
長期に渡って影響を及ぼすことはなかった。

今回は日本の人口減少がはっきりしてきた以上、どこかの時点で地価のトレンドが下落に変わる必要があった。
それがバブルの時になったのは、景気変動の波がちょうど押しかぶさったからだ。

地価の下落が資産に及ぼす影響は大きい。

平成18年度国民経済計算

の3.付表(1)国民資産残高を見ると、
2006年の期末残高で非金融資産は2500兆円、それに対して土地は1200兆円で約半分をしめる。
たいていの国では、国民の実物資産の半分ぐらいは土地だろう。
日本の場合は住宅資産の価値が低いので多めに出ていると思う。
消費はケインズ経済学では所得の内の一定部分を消費性向として計算されるが、
親からの資産で暮している人もいるように、資産の影響も大きい。
一億の資産を持っている人は、所得がどうであれ、資産の部分の金利分を消費することは気楽にできるだろう。
つまり、消費は資産と所得を変数にした関数になる。

土地価格の下落が資産の下落である以上、消費は減ることになる。
土地価格の下落は気分だけのものでないことに、注意して欲しい。
人口の減少による下落だから、たとえばある時点で住む人がいなくなれば、
その土地は無価値といっていい。
厳密には農地などに転換すれば価値はあるが、極端に価格は下落するので、まあ無価値といっていいだろう。
十軒の家を賃貸にして暮していた人が、九軒の家だけしか借りてくる人がいなくなれば、
一軒分収入は減る。
その分消費は減らすしかない。
土地価格の下落は、そういう未来の収入が減少することを含んだ下落なのだ。

土地価格のトレンドの変換後の景気停滞はなぜ長く続くのだろうか。
土地取引は株式の取引などと比べて、数が少いので価格が下がっていることになかなか気づきにくい。
気づいたとしても、土地価格は下落しないものだという神話などがあれば、また反転するとみなが思う。
その結果、土地価格の下落が長く続かないと、国民はトレンドが変わったことを認識できないのだ。
値頃感による買いがなくない、人口が一定状態として、完全に収益還元法で計算した価格が、
正常な価格だと人々が認識するのようになって、下落は止まる。

たとえば、60年分の賃料で入る収益を計算しても、毎年毎年一年分入る収入は減ることになるが、
人口一定を仮定すると60+1年分の収入が加算されるので地価は変わらない。
それに対して、地方のように人口が減っている場合は、ちょっと違って、60+1年分の収入はあてにはできない。
そのため、毎年毎年賃料分だけ、地価は減少することになる。
地方の地価の場合は、また別の要因もあると思うのだが、それについてはまた別の所で書く。

地価が上記の要因を盛り込んでいる間、
地主は価格が下がっていることはわかる。
しかし、どのくらいまで下がるかは予想がつかない。
そこで、とりあえず、消費を減らし、貯蓄を増やすことで対応する。
失なわれた十年の期間はまさにその期間だった。
未来が予測できないから、消費を減らすことで対応するしかない。

地価が大体予測ができるようになり、
つまり、土地資産に対応した、使っていい消費分は予測できるようになれば、
そし、そこに所得の増加が加われば、消費は増えていく。
それによって景気は持ち直す。

なんかえらく長くなってしまった。
そこで今日言いたかったことをまとめると、
日本のバブル崩壊後の停滞の原因は人口の減少による土地の価値の低下であり、
それが長く続いたのは土地価格のトレンドの変換を人々が認識するのに時間がかかるためだ。
アメリカの大恐慌や地方のことについては、さらに言及したい。

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コメント

95

私は借金をみんなで返したから遅れたのだと思いますが、土地が値下がりし続けるからというなら、じゃあどうすればいいんでしょう?移民1000万とかは亡国云々以前に現実的ではありませんし。

個人的は農地は開発禁止、中心街以外は市街化調整区域にして中心部に人口を密集させて、無理矢理地価を上げるとかしか思い浮かびません。

96 Re:あかさたなさんへ

あかさたなさん、いつもコメントありがとうございます。
満足な返事もできなくてもうしわけありません。

> 私は借金をみんなで返したから遅れたのだと思いますが、

バランスシート不況論とかに近いのかな。
私もそんなこと、書いていたような気もするし。
既存の停滞の原因説に対しての、私の理解というか、批判はこのシリーズの中に加えようと思います。

> 土地が値下がりし続けるからというなら、

停滞の原因は土地が値下がりし続けることではなくて、土地が値下がりし続けることを認識できないことです。
一応記事の中の最後部分はそれについて書いたつもりなのですが、わかりにくかったか。
これについても、後で加筆したいと思います。

> じゃあどうすればいいんでしょう?

では、どうすれば良いのかについてもシリーズで書くつもりです。
なんか、みんな後延ばしですいません。

きちっと説明しようとすると、すぐ筆が進まなくなってしまうので。
一応当初の構想通りに書いてというか、書きやすい所から書いて、
後でわかりにくい部分を追加していきたいと思います。

それでは。

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