異をとなえん |

「波乱の時代(上巻)」感想

2009.01.12 Mon

03:13:41

アラン・グリーンスパン著「波乱の時代 わが半生とFRB(上巻)」を読む。
図書館には上巻しかなかったので、それだけの感想だ。
最近金融危機を起こしたとして評判が悪くなっている前FRB議長の自伝となる。

上巻の全体的印象としては、作者はアメリカのパワーエリートのはずだが、
どうもピンとこなかった。
エコノミストして順調に出世して、共和党の中枢部に入り、大統領と結びついていく。
なんというか、その感じがどうも感覚的につかめない。
アメリカ社会の理解が不足しているのが、その理由かもしれないが、
どうもさらっと流れすぎのような気がした。

長い本で時間をかけて読んだので、内容をかなり忘れてしまった。
それでも、一応、幾つか記憶に残った話がある。
記録のために残しておく。

最初の方にエコノミストとして成功し、
アメリカの各都市を回って時間が取れなくなる話がある。
北東部中心みたいだけど、日本よりずっと広いので、確かに大変そうだ。
日本だとエコノミストは東京を中心として、少し動いても大阪ぐらいというのは、
やはり恵まれている。
現在もワシントンとニューヨークを終始移動しなくてはいけないコストは、
かなりあるのではないだろうか。
飛行機があるといっても大変だ。

ブッシュ大統領、息子の方の当選直後、アメリカで税収が大幅に伸びて、
財政赤字が急に黒字になった。
あまりに急転にびっくりしている話が出てくる。
黒字自体も問題ということで、減税して解消しようとするのだが、
減税するとすぐに、税収の伸びが止まってしまうというのは、なんか信じられない話だ。
そんないい加減な予測で減税しているのか。
税収の伸びはITバブルの時の株価の上昇によるもので、
株価の上昇が止まると、税収の伸びも止まってしまう。
その実状がわからなかったというのが、ちょっと信じられない。
減税する前に、もう少し予測をはっきりさせようと思わなかったのだろうか。

この後、財政規律が緩んでしまい、議員たちが財政赤字を気にせず、
予算の拡大に励む話が出てくる。
作者は憂慮している。
基軸通貨国として、
財政赤字を幾らでも拡大できそうに見えてしまうのはやはり問題ではないだろうか。
最終的に、なんらかのコストを払うことを余儀なくされないだろうか。
日本の場合もあまり他人事ではないけど。

また、2002年以降の景気回復は高い成長を実現したにも関わらず、
下位階層ではあまり実感がなかったらしい。
賃金の上昇がなかったせいだ。
中産階級においても、それは変わらず、住宅資産の価格上昇で埋め合わされたが、
作者は格差の拡大を心配している。
今回の金融危機で、住宅資産の上昇も無に帰しそうだ。
さらに格差が拡がる危険がある。

最後の方に、共和党と民主党の党派対立が激しくなったという話がある。
共和党が保守派だけになり、民主党がリベラル派だけになる。
作者は党派に関係なくパーティに出るが、
出てみると実際には党派ではっきり区別されているらしい。
昔はそうでなかったと嘆いている。
私にはアメリカ自体の裂け目が拡大しているように見える。
上で述べたように、経済の格差が拡大しているのも原因だろう。
また、アメリカにおいて白人が少数派に転落するという予測もある中で、
人種間の差が対立の拡大に寄与しているのではないだろうか。
オバマ大統領の当選は、この流れを克服しようとする一つの現れだと思うが、
成功するだろうか。
アメリカ自体が坩堝の機能を失っている気がして、将来が心配だ。
アメリカの混乱は世界の混乱につながってしまう。

感想を書いてみて、どうもアメリカの将来に対する不安の部分が記憶に残ってしまった。
アメリカの全盛期を生きた人の自伝だからこそ、そんな感じを強くもつのかもしれない。

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