異をとなえん |

「鉄道忌避伝説の謎」感想

2008.12.21 Sun

02:48:09

青木栄一著「鉄道忌避伝説の謎 汽車が来た町、来なかった町」を読む。

明治の鉄道を敷き初めた当時、宿場町などで鉄道が来ると町が廃れるとかいう意見で、
鉄道の路線が変更されたという話がある。
これは真実ではないと実態を調べた本だ。
後の時代になぜ自分の町に鉄道が来なかったかを理由づけるために生まれた伝説というのが、
作者の結論だ。

作者はこの結論を引出すために、まず当時の鉄道というものが勾配に非常に弱く、
始点と終点が定まってしまうと、ルートがほとんど自明になることを説明する。
結果、反対運動があっても路線は変わらないのだ。
そして、反対があったと仮定されている路線で、政府としてはそれが一番合理的なことを示す。
なんというか、これだけで伝説だということが私は納得できてしまった。

それだけでなく、さらに詳しく実例を見ていくのだが、
まったく予期しない所で感心した。

一つは、陳情の部分だ。
鉄道忌避というより、鉄道を引いてくれという陳情話が出てくる。
p64で線路の誘致が5年で20件、手紙を書いたり、上京してお願いしたりする表がある。
p65には停車場の建設が3年で30件ある表がある。
なんというか、今と同じなのだ。
これが1886年(明治19年)の頃というのが凄い。
鉄道忌避というより、鉄道誘致に全力を挙げていた。
日本人はがんばっていたんだなと、ちょっとうれしくなってしまった。
新規な物を拒否するより、積極的に受け入れようとしている。

もう一つは、そして本書を読んでの最大の驚きは、本題にあまり関係のない所にあった。
鉄道忌避伝説は、その伝説自体を私はあまり知らないので、それほど驚きはなかった。
ところが、江戸時代に東海道にあった川に橋を架けないのは、
幕府の江戸防衛のためという話も、伝説というのだ。
これには驚いた。
防衛のためと言うのを、私はすっかり信じこんでいた。
p139に1ページばかり、その説明がある。
要は、木造の橋では、洪水の時に押し流されてしまうので、
作っても仕方がないという話だ。
これは明治の鉄道建設で橋を架ける時、洪水を心配して、
架けないように陳情する事実で補強される。
橋がかかると、洪水で壊れた時、下流の損害が大きくなるらしい。
その危険性を下流の農民が気にしているところからも、
橋を架けることの危険性は世間に広まっているとして、伝説だという補強にしている。
ここらへん、私には少し理解しにくく、もっと詳しい説明が欲しかった。
本自体では少ししか扱っていないが、これだけで一冊の本になっていいような話だ。
橋が架けられるようになるのは、明治に鉄の橋になってからだ。

アニメ蟲師の第7話「雨がくる虹が立つ」に出てくる流れ橋とういのを思い出した。
壊れてしまわないように、洪水の時は、
回転して流れにさからわないようにする橋だ。
日本の川は物凄い急流だから、流れ橋や橋を架けられないという話に納得できる。
この本を読んで一番の収穫だった。

目次は以下の通り。

鉄道忌避伝説とは何か-プロローグ
鉄道史研究の発達と鉄道忌避伝説
 鉄道史学確立への道
 鉄道忌避伝説を疑う
 諸外国のおける鉄道反対運動
鉄道忌避伝説の検証
 鉄道のルートを決定する原則
 東海道線と宿場町
 甲武鉄道と多摩の町村
 日本鉄道土浦線と流山
 都市と駅の関係
実際にあった鉄道反対運動
 鉄道創業時の反対運動
 市街地・河川・宿場町での反対運動
 その他の反対運動
鉄道忌避伝説定着の過程
 地方誌による鉄道忌避伝説の変容
 伝説を拡げたもう一つの媒体
 今も拡がりつつある鉄道忌避伝説
鉄道忌避伝説を考える-エピローグ

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コメント

254 流れ橋

 こんちゃっす。橋の危険性のところ。
 橋が流されてくれれば問題ないんですが、流されなかった場合、それが水をせき止めてしまい、上流側の水位があがってしまいます。今みたいに土手が頑丈ではなかったので、その橋の上流側で水害が起きる、あるいは水害を拡大する可能性がある、ということではないかと思います。
 橋が水をせき止めることを警戒して、橋桁は簡単に流されてしまうような構造の橋(流れ橋といいます)が考案されていたということもありますし、いくつか実見しています(*1)。また、短い間隔で橋脚が作られている場合、上流側で水位が大きく高まってしまうという状況も、一回だけですが、実見しました(*2)。
 まあ、本論ではないということかもしれませんが、確かに「江戸時代における橋」については通説を大きく覆す説なわけで、もうちょい説明があった方がいがったんじゃないかという気はしますね。

*1 http://nekosuki.org/landscape/pieces/dsc10047.htm
*2 http://nekosuki.org/landscape/pieces/98035a12.htm

255 Re: 流れ橋

猫が好き♪さん、コメントありがとうございます。

橋が壊れると上流が問題なのですか。
どういう理屈かわからずに書いているので参考になります。
「鉄道忌避伝説の謎」は図書館で借りた本で、手元にありません。
今回の話を参考にして、もう一度目を通そうかと思います。

>  まあ、本論ではないということかもしれませんが、確かに「江戸時代における橋」については通説を大きく覆す説なわけで、もうちょい説明があった方がいがったんじゃないかという気はしますね。

いや、まったく。
これで一冊の本を読みたいです。

猫が好き♪さんのサイトはのぞいて見ました。
最初のページに初音小路の写真があって、初音ミクのことばかり最近書いている私には、偶然の一致でも驚きました。

谷中初音町の実写と初音ミクの合成のビデオを最近見て良かった覚えがあるので、興味がありましたら、どうぞ。

【PV】谷中初音町よりハロー【capsule+初音ミク+MMD】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm11145145

私はわざわざ場所を見にいこうとかは思わないのですが、ビデオとしてはいい雰囲気で感心しました。

それでは。

256 江戸時代の橋に関する本

| これで一冊の本を読みたいです。

 おれはまだ未読なのですが、これは面白いのではないかというそのネタの本が、検索にひっかかってます。2001/12/20が初版初刷らしいので新本で入手するのはむずかしいかもしれませんが。もし未読でしたら、ご期待に沿えるかもしれません。

創元社『大井川に橋がなかった理由(松村博)』

 ニコニコ動画は・・・パスワードどこにいっちゃったかなぁ。まずそれから探さないと(=^_^;=)。初音ミクは、持っていませんが聞くのは好きなので、パスワード探してみます。
 大貫妙子を歌わせている職人さんとかがいて「よくもここまで」とかときどき驚愕するようなものがありますね。

257 Re: 江戸時代の橋に関する本

> 創元社『大井川に橋がなかった理由(松村博)』

図書館にちょうど入っているので読んでみます。

> ニコニコ動画は・・・パスワードどこにいっちゃったかなぁ。

ああ、どうもすいません。
youtubeにもあります。
【PV】谷中初音町よりハロー【capsule+初音ミク+MMD】[HD1080p](1:11)
http://www.youtube.com/watch?v=iPBmpdGXsJU

ニコニコ動画のは、レトロな雰囲気と歌をずっと聞きたい人向けに無限ループ仕様になっています。

それでは。

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351 本>『鉄道忌避伝説の謎』-なんかもやもやとした読後感

『鉄道忌避伝説の謎』書評。