異をとなえん |

「日本力」感想

2008.12.15 Mon

02:00:42

伊藤洋一著「日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化!」(講談社+α文庫)を読む。
出た当時にも、ざっと目を通したのだが、図書館に入っていたので借りてきた。

日本も、まだまだ捨てたものではないという本。
金融危機によって景気後退しつつある状況では、実感は乏しくなっている。
私は作者も含めた日本肯定論者の話に影響を受けているので、
再読すると、特にうならされたような部分はなかった。
むしろ、データに基づいた実証論が少く、主観が多いので、説得力に欠ける。
私のブログの話みたいだ。
ただ、実際に現地に行って取材をしているのだから、主観でもそれなりの価値はある。

改めて読んだ中では、
なぜ日本文化は世界に広まっているのかという疑問が心に響いた。
作者は次の四つの理由を挙げている。


1.cawaii(kawaii)が国際語に近づいていることでもわかるように、日本人の持つやや独特な「かわいさ」中心の美意識が、世界的な支持を受けはじめた
2.世界経済の中心が欧米からアジアに移る中で、アジアの中心国としての日本の文化への関心が高まった。八〇年代に見られたような日本の経済的脅威の減退も好感された
3.日本が生み出す製品に込められた美意識(仕上げの良さ、環境保護などの考え方など)に対する支持が広まっている
4.宗教的縛りがなく、発想が自由で、無機質ながらいやらしさがなく、誰でもが入り込みやすい
(p282)


なんか納得がいかない理由である。
1と3と4の、日本の特徴(かわいさ、美意識、宗教的縛りのなさ等)が受けているというのは、
もっともらしいけど、これ自体はかなり前からの現象だ。
今現在世界で受けている理由でなければ、理由になってない。
また、2の経済の中心がアジアになっているからというけれど、
勃興しつつある中国に魅かれるならばわかるが、
経済成長がほとんど止まっている日本に魅かれる理由にはならない。
そんなわけで納得できない。

私の考えた、日本文化が世界に広まっている理由は次だ。
バブル当時、日本人の一人当たりGDPは世界一に近づいていた。
バブル崩壊後の1995年の円高の時は世界第二位で、世界一になったことはないけれど、
その時の世界一はリヒテンシュタインみたいな小国だったから、
実質的には日本は世界一だった。
その後、円安になった結果、一人当りGDPは転落していったけれど、
レベルとしては世界一のままだ。

バブルがはじけて経済が停滞していった結果、
日本は成長することを模索して、
あらゆる点で新しい商品を開発していかねばならなくなった。
世界一のレベルの国が、さらに新しいものを生み出そうとしているのだから、
そこが世界の最先端になる。
世界の最先端で生み出されたものが、
他の国にとって魅力あるものになることは不思議ではない。

では、アメリカ文化の広まる力が弱くなっているのはなぜだろう。
アメリカは実質的に世界一の国だった。
石油危機後の停滞時、アメリカは経済を復活するために非常に努力をした。
その結果が、レーガンの時代であり、
インターネットを始めとした新しい文化を生み出していった。
それが世界に広まっていった。
そして、アメリカもバブルの時代にはいっていった。
バブルは見かけの富が増えることで、
価格に見合った価値のない商品が次々に買われていった。
その為、本当の意味での新しい商品開発はなくなっていった。
それが、アメリカ文化の浸透が弱まっている理由だ。

日本が世界の最先端にあるというのは、
海外に行く日本人が減ったことや、
海外への留学生が減ったことからも伺える。
日本人の海外から学ぶ意欲が弱まっているという意見も多いが、
私には海外よりも日本の魅力が増したからだと考えている。

ともすると、こういう話には日本民族独特の特徴とかが挙げられるのだが、
私はそういう話は好きではない。
基本的に、民族の特徴というものは信じない。
もちろん、民族の特徴はある時点ではあるが、
それは時代とともに移り変わっていくものだからだ。
現在、日本が魅力ある存在になっているのは、
日本がトップランナーとして走っているからだ。
日本がバブルに最初に突入し、世界がようやくそれに追いついてきた。
世界は今後自信喪失の時代に入っていく。
日本はトップランナーとして、世界をリードしていきたいものだ。

最後に目次を付記しておく。

文庫版まえがき グローバライゼションを企業、街、個人が活用する時代
まえがき 美しい製品を作り出す国の将来

第1章 勝ちパターンに入った日本
第2章 中国が抱える大弱点
第3章 中国の創造力の真実
第4章 いびつな韓国経済
第5章 「祭りなき国」の反乱
第6章 神格化されたインドの実像
第7章 世界を席巻する文化と経済
第8章 くたばれ悲観論

あとがき 溢れんばかりの創造性に恵まれた民族

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コメント

78

たぶん報道しないか、いろいろ屁理屈付きで否定しながら報道するだろうけど、また円高で1人あたりGDPは増加するでしょうね。

79

あかさたなさん、またコメントありがとうございます。
コメントがつくと、読んでいる人がいるとわかってうれしい。

> たぶん報道しないか、いろいろ屁理屈付きで否定しながら報道するだろうけど、また円高で1人あたりGDPは増加するでしょうね。

円高で1人あたりGDPが増加するのに、
それを報道しないマスコミはけしからんという、マスコミ批判として受け取りました。
ちょっと、マスコミを擁護すると、
為替相場の変動でドル建ての一人当りGDPが変動するのには、
社会全体が慣れたのだと思います。
短期的な為替相場の変動が、一人当りGDPを変化させても意味ないです。
バブルの時に一人当りGDPが下がっていたのは日本全体があまり成長していないことの現われで、
つまり長期的には意味があります。
ただ、その場合には個人個人の生活がどうなっているかが大事でしょう。
そんなことを重視すれば、ドル建ての一人当りGDPを重視しないのも、ありかと。

あかさたなさんのブログも少し読んでいますので、
なにか意見がありましたらコメントします。
それでは、また。

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