異をとなえん |

「日銀は死んだのか?」感想

2008.11.02 Sun

00:45:08

加藤出著「日銀は死んだのか? 超金融緩和政策の功罪」を読む。

目次は以下の通り。

はじめに
第1章 量的緩和下で進行するマーケットの異変
1 機能麻痺状態になった短期市場
2 当座預金ターゲットによる量的緩和とは
3 効果が見えてこないマクロ経済
4 「タンス預金化」する余剰資金
第2章 量的緩和策はなぜ効かなかったのか
1 量的緩和はマネーの「ブラックホール」
2 マネタリーベースという幻想
3 株式・為替市場に向かわない余剰資金
4 日銀が当座預金引き上げに慎重だった理由 ---中長期債買切オペの急激な膨張
5 時間軸効果とポートフォリオリバランスの問題
6 なぜ国債買切オペ増額をしてもインフレが起きないのか
7 FRBの量的引き締め策は有効だったか
第3章 誤解だらけのインフレターゲティング政策
1 過熱する導入議論
2 海外のインフレターゲティングの実態
3 未達成時の罰則規定をどうするか
4 スウェーデンのプライスレベルターゲティング
第4章 日銀に打つ手はあるか ---追加緩和策を検討する
1 これまでの金融政策を延長する
2 為替レートを円安誘導する
3 変わり種の金融政策
4 非伝統的金融政策:「不健全な領域」
第5章 日銀国債引受によるインフレ政策は可能か ---高橋財政の検証
1 インフレ政策導入に至る背景:構造改革の挫折
2 インフレ政策の劇的な成功
3 国債売りオペでインフレは制御できたか
4 インフレ政策下の日本経済の変化
5 高橋インフレ政策に対する海外の視線
6 行き詰まるインフレ政策
第6章 FRBの国債価格維持政策とアコード
1 アメリカにも存在したゼロ金利
2 FRBの国債価格維持政策と「アコード」の締結
3 デフレ下のアコードはどうなるか?
第7章 インフレ政策は日本を救うか?
1 現代の日本でインフレ政策は有効か
2 インフレターゲティング導入の際の警戒点
主要参考文献


現在の日本において、量的緩和策は効かないよという本。
実務に詳しいので説得力がある。
理論も用語も難しく、読むのに骨がおれ、
正確に理解できない部分も多い。
けれども、理論自体は明晰なので、知的好奇心が刺激される。

参考になる部分も多々あった。
もっとも、目からうろこだったのは、2004年の円売り介入での話だ。
あの時の円売り介入は非不胎化介入だったので、
景気回復にそれなりの貢献をしたと、私は思っていた。
しかし、作者によると、非不胎化介入の効果はほとんどなく、
景気回復の要因は、ドル円相場の下限が設定された事によって、
外国債投資が活発になった事にあるという。
なんとなく納得できてしまった。
為替相場が固定されれば、低金利国の日本から、高金利国のアメリカへの、
投資が盛んになる。
そして、ほぼ確実に儲かるから、景気が良くなるのは当然だ。

また、政策金利を下げていくと、短期市場がほとんど成立しない状況になることがわかる。
取引コストが金利より大きくなるので、銀行は日銀の口座に資金を預け放っしにするからだ。
量的緩和政策が効かない一つの理由だ。

絶対的な評価としては良書だと思う。
量的緩和政策の具体的な状況を理解するには、必須だ。
現在進行中の金融危機は、中央銀行の強力な流動性の供給で、
一服しつつある。
しかし、アメリカでも政策金利が低下し、日本と同じ道を歩んでいるかにみえる。
この状況の理解に極めて役に立つ本といえよう。

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら

127 [本]

  「日銀は死んだのか?」加藤出(図書館)を読む。面白い。 経済の解説書。2001年出版。 当時のゼロ金利・量的緩和という金融政策に市場はどう動いたのか、という話。 数字やら日銀の操作が細かく書かれているが、ザックリ結論を言うと 「国債買いオペ(量的緩和)は民間金融