異をとなえん |

「大山康晴の晩節」感想

2008.08.29 Fri

20:13:54

河口俊彦著「大山康晴の晩節」(新潮文庫)を読む。
河口さんは将棋マガジンで対局日誌を連載している時から好きで、
よく読んでいた。
大山康晴論を書きたいというのは、折にふれ読んだ覚えがあるけれど、
結局出ないとばかり思っていたので、文庫で見つけて驚いた。

目次は下記の通り。

序章
甦った大山将棋
人間的な威圧感

一章 ガンとの闘い
六十三歳の名人挑戦者
熾烈な生存競争
棋界政治と大山会長
しのびよる衰え
晩年の驚異的な粘り

二章 生い立ちから名人まで
十二歳で木見八段門へ
名人への道−昭和二十年代の実力者た

三章 大山将棋の強さ
ナンバー2を叩け
強すぎて、面白くない

四章 早逝した天才棋士との闘い
若き山田道美の自負と懊悩
大山は催眠術を使う?
大山VS山田−大山奇勝を博す
絶局は大山戦だった

五章 追われる身に耐えて
升田に引導を渡す
中原に名人位を奪われた七局

六章 会長就任と永世名人
名人戦と三大新聞社の抗争
五十歳以後の勝星がすごい!

七章 ガン再発後の粘り
手術直前の対局−対有吉・小林戦
A級残留への執念−対高橋・米長戦
大スターの残光−対谷川・高橋戦

終章−まだ引退できないのか

史上最強の将棋指しとして名高い大山康晴の生涯を、
晩年に焦点を合わせて描いている。

本のテーマは大山康晴の勝負師としての偉大さだ。
そのために、盤上盤外での勝負術を記し、大山の心理状態、
対局相手の心理状態を語っていく。
ただ、心理描写は基本的に推測であって、
実際に確認を取っているのは少い。
そのため、もっともらしくはあるが、信じられない部分もある。

作品の中では、大山康晴の強さを将棋としての強さより、
勝負師としての強さにおいている。
私には納得できない。
大山が勝ちまくったのは、
当時の将棋界のレベルが低かったと解釈するのが一番理にかなっている。
現在は指した棋譜が直ちに広まって、棋士が研究を欠かさないのに比べて、
昔はずっとそれが弱かった。
毎日飲んだくれているような棋士が勝てるわけがない。
生活の全てを将棋に捧げているような大山に勝てないのは当然である。

河口氏の作品は実に劇的である。
現実よりもずっと劇的に見える。
羽生が天才だと印象付けられたのも、
実際の対局より河口氏の文章を通してであった。
後世の評価は現実よりも、それを表現した文章にある。
逆に言えば、真実を知りたかったら、
文章の裏側にあるものを探らなくてはならない。
棋士の実際は棋譜に表われている。
それを読み取る事ができない自分が、ちょっと残念だ。
信じすぎてはいけないけれど、読み物としては楽しい本だった。

以上がメインの感想だが、もう二つ印象に残った事がある。

一つは升田の事である。

私が棋界に興味を持った頃は、もう升田はA級を休場していて、
ほとんど印象がない。
しかし、本を読むとP92には

「そして当時の升田は将棋界のみならず、日本の大スターになっていた。
関西の新聞の人気投票では、一位がフジヤマのトビウオ、古橋。
二位が升田幸三であった。」

とあり、とてつもない人気があった事がうかがえる。
大山康晴は升田幸三を叩く事で、
どうしても世間では悪役と見がちであったらしいのが、
私には新鮮な切口だった。

もう一つは山田道美氏のことである。

本の中には、山田道美との戦いに焦点を合わせた一章がある。
私が将棋の勉強をしようと始めて買った本が、
山田道美著の「現代将棋の急所」という本だった。
将棋の本は、結局その本だけしか買わなかったから、
何回も読んで著者に親近感を抱いていた。
この本は山田道美氏の評伝にもなっているのが、少しうれしい。

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