異をとなえん |

「ウォルマートに呑みこまれる世界」感想

2008.07.26 Sat

23:09:56

チャールズ・フィッシュマン著「ウォルマートに呑みこまれる世界」を
ざっと読む。
アメリカは、やはり何かが間違っているのではないかとの感を強くする。
その後読んだ、
日テレブックスが出している「未来創造堂 未来を切り拓いたモノ創り」が、
日本の素晴らしさを教えてくれるのとは正反対だ。

目次は次の通り。

第1章 ウォルマート・イフェクトの脅威
第2章 サム・ウォルトンが釣り上げた大きな魚
第3章 父と娘でつくった大ヒット商品
第4章 ウォルマートの強大な圧力
第5章 ウォルマートに"NO"と言った男
第6章 私たちはウォルマートについて、いったい何を知っているのか
第7章 「いつも低価格」の裏側で何が起きているのか
第8章 1セントの節約は、1セントの儲け
第9章 ウォルマートと健全な社会

ウォルマートは世界最大の小売企業で世界一の売上高と世界一の従業員数を誇っている。
この本はウォルマートそれ自体よりも、
ウォルマートのその大きさが社会に与えている影響を描いている。

ウォルマートは"everyday low price"というモットーのもとに、安売り戦略を続け、
アメリカの大都市以外の地域でほぼ独占的な販売者となり、
ウォルマートに製品を卸しているメーカーのほぼ独占的な購買者になっている。
この結果社会にいろいろと歪みを与えている。

ウォルマートは毎年毎年メーカーにコストの引下げを要求している。
これ自体は問題ない。
資本主義経済の企業として当然だ。
問題なのは、メーカーがコストの引下げを行うために品質を落としていることだ。
正常な市場ならば、価格の低下に見合わないほど品質が劣化したならば、
その製品は売れなくなる。
しかし、ウォルマートは地域でほとんど独占しているので、
消費者は品質の低下した製品を受け入れざるをえない。
この結果、消費者は損をしているし、メーカーも品質を低下させるということは、
付加価値を低下させている事だから、より貧しくなっていく。

さらに、メーカーにはコストの低下を常に要求しているので、
最終的には生産コストが最も安い国に生産を持っていくしかなくなる。

ウォルマートの世界だけを見れば、サービスが低いので従業員の賃金は安く、
メーカーの従業員はアメリカから中国に行ってしまう。
アメリカ国民は貧しくなっているだけだ。
もちろん、ウォルマートとメーカーの利益は出ていて、
その利益がアメリカに還元されているのだがら、
アメリカ全体では得になっているのだろう。
しかし、格差は拡大し続け、アメリカの賃金と中国の賃金が一致し、
生産が移管できなくなるまでアメリカのメーカーの従業員は賃金を削られ続ける。
これでは、世界全体の利益は増えていても、アメリカ国民はうれしくないだろう。

結局、ウォルマートはアメリカの付加価値を付ける力を減らし続けている。
最初に書いた「未来創造堂 未来を切り拓いたモノ創り」で、
日本人が付加価値を増やし続けているのと正反対だ。

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