異をとなえん |

「都市再生」感想

2008.05.08 Thu

17:58:30

ロバータ・B・グラッツ著「都市再生」を読む。
「日本文明世界最強の秘密」に引用されていた本だ。

英題は「THE LIVING CITY」でアメリカの都市の衰退と再生を語っている。
最初の3章は退屈だったが、その後は面白い。
地方都市とニューヨークの衰退を、
コミュニティの努力によって復活していった物語が、
いろいろと綴られている。

地方都市の商店街が郊外に作られるモールによって売上を奪われ寂れていく。
現在の日本の地方都市で発生している問題がアメリカにも存在する。
筆者はモールや自動車が都市を破壊しいくと、繰り返し批判する。
そして歴史保存やコミュニティの強化によって都市が再生する物語を繰り返す。

ただ、コミュニティの努力が都市を再生したと
筆者は主張しているが、本当にそうなのか。
1973年の石油危機によってガソリンが値上がりした結果、
都市に住民が戻り、都市が再生しただけではないだろうか。

ニューヨークの都市再生も筆者はコミュニティの努力を重視している。
しかし、ニューヨークの産業の復活が人口の流入を促し、
都市の再生をさせただけではないだろうか。
ニューヨークの製造業は1960年代衰えたが、
新しい産業はまだ育っていなかった。
ブロンクスの荒廃はこのごろ起きる。
1970年代後半金融・不動産等のサービス産業が盛んになった事によって、
ニューヨークの復興が始まっている。

本に書かれている事例の年をチェックしていたが、
だいたい石油が安くて自動車をより乗りまわすようになると都市がすたれ、
逆に石油が高くなり自動車の使用を控えるようになると都市が再生している。
筆者は経済的な側面をほとんど取り扱わないので、
そこらへんの関連がよくわからない。
そのため、コミュニティの重要性に対する説得力が欠けることになった。

さらに、筆者はニューヨークと地方都市を同列に扱っているが疑問だ。
都市にとって、自動車やモールが敵であるという事を、
筆者は何度も指摘しているのだから、
アメリカで唯一と言っていい公共機関の整ったニューヨークは、
他の地方都市と分けて考える必要あったのではないか。

この本に語られていた事例が現在どうなっているかは本当に知りたい。
この本のアメリカでの発行年が1989年で、
その後原油価格は最近までずっと安いままだ。
ガソリン価格が都市再生にとって、
もっとも重要な因子ならば地方都市はまた衰退に向かっているだろう。

また、ウォルマートという言葉はこの本には出ていないが、
ウォルマートの発展が都市に及ぼした影響も気になる。

全体として読む価値はある本だと思う。

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら