異をとなえん |

『液冷戦闘機「飛燕」』感想

2008.03.27 Thu

15:58:49

「誉」エンジンについての本を読んだ流れで、旧日本軍の他のエンジンについても興味を持ち、『液冷戦闘機「飛燕」 日独合体の銀翼』を読む。

読んだ本は文春文庫版で、元々は1983年2月に出ていた本で、改訂し続けて2006年7月に再刊されたものである。「飛燕」の正式名称は陸軍の三式戦闘機といい、太平洋戦争が始まってから投入された陸軍の主力戦闘機となる。エンジンはドイツからライセンス購入したDB601という液冷エンジンで、そのため日独合体とタイトルになっている。

日本以外の諸外国では液冷エンジンが主流で、日本は空冷エンジンが主流だった。本の内容によると、液冷空冷は一長一短があり、どちらが優れているかの比較は難しいけれど、液冷エンジンの方が複雑で、基礎工業力が弱かった日本にとっては空冷の方が向いていたらしい。

本を読んで日本が負けるのも当然だと、今さらながら思う。陸軍が太平洋戦争開始後に投入した主力戦闘機は、この「飛燕」と次の「疾風」なのだが、「疾風」はエンジンが「誉」でどちらの飛行機もエンジンの不調に泣かされ、満足な性能が発揮できない。複雑すぎて生産が不調で整備もうまくいかない。結局、動くだけでも太平洋戦争開始前から使われていた「隼」の方がましだという話になる。もちろん、戦争中期には「隼」の性能ではアメリカの戦闘機に全然対抗できないので、それもつらいのだが。海軍は太平洋戦争開始前から使っていた主力戦闘機零戦を、使い続けた。後継機を開発できなかったといっていい。陸軍も海軍も太平洋戦争開始前の戦闘機が限界で、それ以後の開発は列強に追いつけなかったということだろう。工業力が劣っているとういのは悲しい話だ。

ただ、整備不良で戦うこともなく終わってしまうかと思って読んだ「飛燕」だが、それなりに戦ってはいる。飛べばまあ互角ではないんだろうけど、ぼちぼちではある。B-29に体当たり攻撃で戦った話は、悲しくはあるけれど、それなりの実績を示している。体当たり攻撃というのは、B-29に高高度約1万メートルで爆撃されると通常武装ではそこまで上がれないので、武装を外して攻撃するために使われた。一応、本土の戦いなので、攻撃後パラシュートで脱出できれば助かるのだが、人間業ではない感じではある。二度も体当たり攻撃して生きて帰った人がいるというのには驚かされる。

全体として、とにかく時間がなかったという印象が強い。本の中でも少しずつ改善はしている。けれど、一年や二年では短すぎる。液冷エンジンをあきらめて、空冷エンジンに変更した五式戦闘機が随分ましになったらしい事を考えると、その印象が深くなる。

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