異をとなえん |

アメリカの経済の立ち直りにはどのくらいかかるか?

2008.03.22 Sat

16:55:56

アメリカ経済の景気後退は確定的であり、問題はそれがどのくらい続くかに移ってきた。日本と比べてアメリカの政策は優れているから、日本ほど長期間は続かないという意見も多い。しかし、バブルの崩壊による景気後退は金融財政政策によって簡単に癒やせるものではない。バブルの崩壊による景気後退は、最も生産性の高い部門の雇用が失われるものであり、それを回復するには他の部門の生産性が向上し、バブル崩壊時の生産性に追いつかなくてはならない。生産性の向上は1年や2年で済むものでなく、5年いやもっとかかると思われる。

アメリカでの住宅価格の低下は2006年ごろから始まり、今年2008年金融危機となった。日本のバブル崩壊の時は、1991年に地価が下がり始めてから、「失われた十年」というように約十年続いて、2002年ぐらいから景気は回復した。金融危機が発生したのは、1997年でありアメリカは日本よりずっと早く事態が進行しているように見える。

日本の場合、金融機関が不良債権の公表を渋り、事態の認識の把握が遅れ、その結果公的資金の投入が遅れたのが、景気が回復しなかった最大の原因ととらえられている。アメリカでは不良債権は直ちに公開され、問題の発生が誰の目にもあきらかになっている。金融機関への公的資本の導入も、ベアスターンズの救済のためのFRBの貸付がリコースローンであるように、実態としては既に行なわれているといっていい。それでは、アメリカ経済は直ちに回復に向かうだろうか。私は疑問を感じる。バブルの崩壊の回復に時間がかかるのは、別の原因がある。

バブルは、金融業で金が金を産むといった貨幣の増殖が本質だと思われる。この結果金融業の生産性は非常に高くなり、莫大な利益が上げられる。バブルの崩壊は、この仕組みを壊してしまうものであり、金融業が今までの方法では立ちゆかなくなる。今回のアメリカのバブルの崩壊でも、証券仕組み債やサブプライムローンなどが、当分立ちゆかないだろう。実際、証券会社はこの部門の撤退を決めている企業が多い。また、これに保証を与えたモノライン会社や、助長した格付け会社の責任も大きい。これらの会社は、結局その責任を負って縮小し、また今後の信頼を大きく損なうことになる。つまり、今後アメリカでは金融業という最も生産性の高い部分が縮小されるのである。結果、生産性の高い部門から生産性の低い部門に人が流れるのだから、成長できないのは当然である。

バブルの崩壊が単純な景気変動と違うのは、職種の転換が必要なためである。景気変動の場合の不況は一時的に解雇されることがあっても、不況の終わりと同時に再雇用されるケースが多い。一時的なレイオフはそのための制度だろう。その場合、今までの能力等は生かされるのだから生産性はすぐに元に戻る。衰退産業がダメになり、従業員を全て解雇されてしまう場合もある。しかし、この場合、衰退産業ということは生産性自体が最も低いのだから、他の産業に転換することによって生産性が改善される可能性は高い。簡単に生産性が高い部門に移れるならば、むしろ成長が促進されることになる。

アメリカの場合、さらに長引きそうな特殊事情がある。アメリカは経常収支の赤字を資本収支の黒字で補っていた。資本が流れこんできたのは、金融産業によって高い金利をつけられたからである。金融産業が高い金利をつけられなくなれば、資本の流入は低下する。そのため、経常収支の赤字を補うために、輸出を強化せざるを得ない。しかし、輸出が少くなったのは生産性が低いために他国との競争に破れた結果である。経常収支の赤字と資本の流入がなくなった結果、為替がドル安になり輸出は復活するだろう。しかし、それは最も生産性の低い部門に人が配置される以上、成長はさらにブレーキがかかることになる。

金融危機が早く発生したのも、景気回復を速める要因かどうかは微妙である。

日本の場合は、生産性の高かった金融業が、利益が上がらず既に生産性が落ちているにもかかわらず、従業員を高給で雇っていた。従業員の雇用を簡単に削減できない事情がある。そのため、実体経済自体は成長率が低めになったがプラスを保っていた。最終的に金融危機が発生し、持ちこたえられなくなった銀行・証券が破綻し、従業員が雇用を失なった時点で成長率がマイナスに転換した。ただ、内部的には危機意識はあったので緩やかな変換は進んでいたと思われる。日本のやり方は、根本的な変革を遅れたかもしれないけど、金融産業の破綻を防ぐことによって景気後退を防ぎ、一般産業に回復の時間を与えている。

アメリカの場合の金融危機の発生は、強制的に従業員の解雇が進み職種の変換はかなり早くすすむ。だが、その代わり雇用の削減を通じた急速な消費の減退は多くの企業を倒産への導き、生産性向上のための努力すらさせないだろう。個人にまかせたアメリカのやり方は、不況を長引かせる可能性がある。

そんなわけで、アメリカの今後の状況は予断を許さない。日本の景気の回復に十年以上かかったのが、人口減少によるとしても、アメリカの景気の回復も少くとも五年は見積る必要があるように感じる。

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コメント

32

モノローン会社と書いたのは、間違いでした。
モロライン会社に修正します。

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