異をとなえん |

「ひとりっ子」感想

2008.03.04 Tue

00:27:31

グレッグ・イーガン著「ひとりっ子」を読む。

グレッグ・イーガンの書いた作品で邦訳されているのは全部読んでいるが、短篇は今一つな感じが多い。短編は生のアイディアだけで、できている作品が多いのだが、私には筆者がそれに拘る理由が見えず、とまどってしまう。「ひとりっ子」は短篇集だが、量子論や数学が強調されている所で理解できない部分が多かった。取り上げるのをやめようとも思ったが、備忘録になるので記述しておく。短篇集の「祈りの海」や「しあわせの理由」は面白い作品も多かったのだが、ほとんど忘れてしまったのがその理由だ。作品一つ一つについて簡単な感想をつけてみる。

「行動原理」

自分の感情を薬によって変更し、人を殺すことを決断する話。あまり好きではないけど、自分の意志で決定したならそれでいいのではないかと思う。私だったら、最初から悩まない。

「真心」

夫婦が互いに愛する感情を永遠に固定化しようとする話。感想は上と同じで、あまり好きではないけど、自分の意志で決定したならそれでいいのではないかと思う。永遠であろうとする感情に共感できない。永遠なんてない。

「ルミナス」

全然わからない。世界が違うと数学自体が違ってくるという話だと思うのだが、それが全然理解できず解釈できない。世界が違うと適用できる数学の体系が違ってくるという話ならわかるのだが、どうもそういう話ではない。お手上げだった。

「決断者」

自分の意志を決定しているものは何かという考察。私は単純に自分の意志は脳という機械による、単純な生化学現象だと思っている。それと同じ結論を出していると思うのだが、そうすると、だからどうしたと感じてしまう。

「ふたりの距離」

自分と他人の間の意識をどこまで一致できるかというような話。落ちは疑問。自分と他人の間の意識が完全に一致したとしても、別れればまた別になっていくと思う。それで一致していると考えるのは、おかしくないだろうか。

「オラクル」

アラン・チューリングとC・S・ルイスをモデルにした作品。タイムマシン、ホモ、信仰とかいろいろな物が入っているごった煮みたいな作品で、なんとも掴みがたい。

「ひとりっ子」

子供を失なった夫婦が人工知能によって、子供を作り出す話。量子論解釈による自己の意思決定の意味みたいな話がからむのだが、くっついていないように感じる。はっきりいって、いらないのではないだろうか。少女の虐待話もあって、ちょっといやな感じになる。

感想を改めて書いてみると全部悪口になってしまった。話としては、「ふたりの距離」がおちがあるだけましな気がする。かなりのグレッグ・イーガンファンでないと勧められない。

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら