異をとなえん |

「日本文明世界最強の秘密」感想

2008.02.24 Sun

03:18:49

増田悦佐著「日本文明世界最強の秘密」をざっと読む。

「高度経済成長は復活できる」を読んで以来、増田ファンなので楽しめた。作品の中身は、鉄道の話一直線である。そこに都市論、自動車論がからむ。

競争力は何によってきまるのか、との命題から考え始め、原材料、技術、労働力、エネルギーの要素は移転可能だから、決め手にはならず、一番大事なのはインフラだとする。ここでインフラというのは、人間を大量に集積する都市が有利であることであり、特に人口を集められるのは鉄道中心の都市であるとする。結果、東京や大阪など鉄道中心の都市がある日本は他の国に対して競争の上で優位に立っているという、増田理論の結論が出てくる。

基本的にはいつもの増田理論だが、なぜ日本が鉄道中心の国づくりができ欧米がダメなのかについて説明が欧米エリート国家論に基づいて詳しくなっている。その他、パリやロンドンなどの都市がいかにダメとか、貨物の運搬は鉄道では荷物の積み替えがあるから不利で荷物の積み替えがない自動車に負けるとか、道路の改善提案とかが出てくる。道路の改善提案の善し悪しは、難しくてよくわからない。

本の中で一番印象的なのは、欧米のターミナル駅が頭端駅であり、日本のターミナル駅が通過駅であるという部分だ。頭端駅というのはプラットホームが櫛状になっている駅であり、昔の上野駅がそうだった。つまり行き止まりの駅である。上野駅は今も頭端駅かもしれないが、最近行ってないのでわからない。そこで、昔と書いている。

しかし、少し考えると鉄道でネットワークを作る場合は、そこから更に発展できるように通過駅になっている方が絶対いい。日本はターミナル駅であっても通過駅の方がいいとすぐに気がつくのだが、欧米はその事に気づかない。そして物凄く壮大な駅を作っていくことになる。筆者は欧米がエリート社会だからという所に理由を求めていくのだが、正直言って正しいかどうか判別できない。ネットワークを作るという発想が、そもそもなかったからなのだろうが、一路線の駅ならばともかく、二路線以上入っている駅で、通過駅の方があきらかに有利なのに、そうなっていない例は固定観念がいかに強いか考えさせられる。

増田理論の本としては一番まとまっていると思う。


「日本はもうダメだ」という悲観論のマインドコントロールから日本人を救い出す画期的論考!目からウロコが落ちて、明るい未来が見えてくる。

第1章 日本経済は本当に取り柄のない経済なのか?
第2章 21世紀こそ日本の時代
第3章 文明の栄枯盛衰はエネルギー効率で決まる
第4章 鉄道を発明したイギリス人、鉄道網を発明した日本人
第5章 欧米諸国をおおう絶望の深さ
第6章 鉄道は魔法の杖ではない!
第7章 陸上交通のベストミックス、旅客は鉄道、貨物は自動車
第8章 日本経済の逆襲は駅前から

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コメント

68 日本文明=日本国ではない

 戦前の日本は天皇=国家(すなわち日本文明=日本政府)の混同にあったせいで、不安定な社会になり戦争で負けてしまった。
 それ以前は日本文明(国体)は日本政府(政体)とちがって、永続性があるという確信を天皇の神聖性や万世一系の性質に象徴させたものである。そのため日本の国体は様々な政体の変化を体験しながらも、高い安定性をもたらす結果となり欧米と違い革命を経ずして近代化を成し得た。しかも西洋的にいう宗教への依存性もきわめて低い国柄になった。
 「鉄は国家なり」ということが示すがごとく、日本全体には国家という唯一絶対のシステムしか存在しないような幻想に陥っているが、空間的広がりだけでなく時間的広がりも評価してその占有率を評価しないといけない。そうするとその占有率はごく一部でしかなく今の日本政府が日本文明であるとはいえないのである。
 そういった法治国家日本以外にも社会を形作っているものがあることを、特に歴史性において積極的に認める自覚がわれわれ日本人には必要だと思われる。ものづくりにおいても然りだと思う。

69

竹田様、コメントありがとうございます。
ただ、意味がよくわからないです。
日本文明と日本国を同一視するのを批判していますが、
同一視する意見を見た覚えがありません。
たぶん、ある意見に対して日本文明と日本国を同一視すると
解釈した批判なのでしょうが、元の意見がくみとれません。
私の意見に対する批判ならば、そのへんを補足して欲しいです。
それでは。

74 ちょっと画期的?

 それ以前に、区別している論調はあまり見られないことに着目したほうがいいのでは。つまり、混同していることが様々な歴史的過程から常識化されすぎてしまったなかで、ちょっと画期的な話だと思います。

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