異をとなえん |

どうしたら基軸通貨は替わるのか? - 基軸通貨ドルの終わりの始まり(後編)

2013.09.21 Sat

17:07:53

基軸通貨には慣性がある。
何を持って基軸通貨と定義するにはいろいろ意見があるかも知れないが、貿易の決済通貨が一番重要だ。
現在の基軸通貨はドルであり、たいていの輸出入はドルで決済している。
この貿易通貨を変更することは非常に面倒である。
自分の財布に円、ドル、ユーロが混在し、支払う店ごとに通貨が変わっていたら管理が面倒で仕方がない。
しかも為替相場が変更していたら、商売していて自分が儲かっているかどうかもわからなくなる。
誰もが取引する通貨は一つに限定したいから、現実の世界ではドルが決済通貨になっている。

ドル建てによる取引が普通のこととなると、全ての仕組みがドルを前提にして動いていく。
保険、海運など貿易に関する全てがドルを前提にする。
そうなれば決済通貨の変更を考える企業もそう簡単にはできない。
無理に実行しようとしても、手数料等がずっと高くなって割りに合わなくなる。

基軸通貨ドルによる支配の仕組みは強力な慣性によって世界で普及しているから、普通は替わりようがない。
だから基軸通貨がどうしたら替わるのか、具体的な方法が見えなかった。
インフレかデフレのどちらかで終わるとは思っていたが、どうも決め手がつかめない。
ハイパーインフレが起これば確かに終わるだろうが、どうやって起こるというのか。
ハイパーインフレは生産設備の大幅な消失以外起こりようがないと思うのだが、アメリカで生産設備が消失するとしたら戦争に負けるぐらいだ。
アメリカが戦争に負けるとは思えないし、それ以外に起こりようがないとしたら平和裏に基軸通貨の交替は起こらないことを意味する。

普通のインフレは景気がいいと同義だろう。
そんなときに基軸通貨の変動が起こるわけがない。
需要は変わらずに供給の問題で起こるインフレもある。
石油ショックでは、石油が急激に高騰してインフレが起こった。

デフレは世界が不景気の状態だ。
物を売ろうとしても売れない。
ドルの価値が段々と上がっていく。
手に入れたドルをがっちりとしまいこんでしまう状態で、基軸通貨としての信用を失う状態があるだろうか。
基軸通貨の変更などありえないように思える。

しかし前回書いた、日本がアメリカに投資をしないことによって起こるドル金利の上昇は、デフレとかインフレではない別の基軸通貨交替の可能性を示している。
アメリカは経常収支赤字国であるから、経常収支黒字国から資金を集め世界に貸し出すことによって、金融センターの役割を担ってきた。
利ざやを稼ぐためには低い金利で資金を集め、高い金利で貸し出さなければならない。
低い金利で投資をしてきたのは、主として日本の金融機関だった。

日本の金融機関は海外に融資する能力が弱かった。
海外企業とのコミュニケーションをするにしても、言語に弱いことをはじめとしてコネや人脈がない。
当然リスクを分析することも十分にできないので、海外に融資できなかった。
だから海外に直接融資をするかわりにアメリカ国債を購入し、低い利ざやで我慢してきた。
日本企業が海外に直接投資をするならば、その企業に融資をすることで海外へ資金を流すことができる。
アメリカの金融センターを迂回して資金を融資できるようになるのだ。

日本から資金が流れなくなれば、アメリカは金融センターの役割を果たせなくなる。
国債の金利が上昇するということは金融が引き締め効果を発揮するということだ。
国債購入によって企業への融資や株式投資以上の利回りで運用できるならば、そちらへ資金が流れてゆく。
経済を成長するための投資が少なくなる。
ドルを借りて投資をする、新興国の企業も借金ができなくなれば成長をあきらめなくてはいけない。
普通でも経済が停滞するし、あるいはアメリカが金融の引き締め政策を取った場合頻繁に起こる金融危機が発生する可能性もある。

金融危機が発生するような場合、日本の金融機関が低利で円を貸してゆけば、円建てでの融資が世界に広がってゆく。
企業の主となる借金が円建ての場合、円建てで売り上げを確定させたい欲望が強くなっていくだろう。
1億円の借金を返済するために、1ドル100円の相場で100万ドルの輸出をした。
輸出代金を受け取ったときに円高で1億の借金を返済できなければ目もあてられない。
先物の為替相場を組むのは、手数料がかかるし、それならそもそも最初から円建てで輸出を目指した方がいい。
貿易も円建てで決済したい希望が強くなってゆく。

貿易金融にしても、金利は安い方がいい。
ドルの長期金利が上昇していくならば、短期金利も最終的にはそれに引きずられてゆく。
徐々にドルの競争力はそがれてゆく。
それより安い金利を円が提示すれば、その他の手数料を含めてもトータルで競争力が増してゆくことは十分に考えられる。

今回のアメリカの国債金利の上昇の理由が、本当に日本から資金が引き上げられているためかはわからない。
基軸通貨ドルの終わりの始まりも過大評価かもしれない。
しかし基軸通貨ドルの終わりが経常収支黒字国から資金が流入しなくなることで始まるのは確実に思える。

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