異をとなえん |

アメリカの金利が上昇しているのはなぜか? - 基軸通貨ドルの終わりの始まり(中篇)

2013.09.18 Wed

15:48:00

前回、アメリカの景気回復の原因は新興国への投資だとした。
しかしそうすると疑問が出てくる。
2012年の後半ごろから新興国のバブルははじけ資産価格は下落を始めた。
その結果資金はアメリカに逆流していると思われる。
資金が戻っているので為替相場はドル高に向かい始めている状況だ。

それなのになぜアメリカの金利は上昇するのだろうか。
実際10年物国債の金利は2012年7月の1.5%を底に、最近(2013年8月)では3%ぐらいまで上昇している。
アメリカの資金が新興国に流れ込むことによって金利が上昇しているならば、逆流すると金利は下がるはずだ。
なんとなく話がおかしい。

もちろん新興国の資産価格が下降したから資金が逆流したのではなく、アメリカの金利が上昇したから資金が引きあげられているとも考えられる。
でもそうすると、今アメリカの金利を押し上げている原因は何だろうか。
どこに金利を引き上げるほどの資金需要が生まれているのだろうか。

量的緩和政策の縮小予測が金利を押し上げているとも思えるのだが、そもそも量的緩和政策は実施されると金利は上がっていた。
だから量的緩和政策が縮小されると、普通は金利が上がると思うが、下がると予想する人もいる。
アメリカ国債の金利が大きく上昇し始めたのが、バーナンキ議長の縮小発言の5月23日からであることを考えると、全然関係ないとも思えないが、基本は中立だと思える。
他に運用先がないならば量的緩和政策は国債を売った代金を中央銀行に預け直すだけで金利には影響しない、という意味だ。
それでは金利を押し上げた他の理由とは。

一つの理由は住宅投資の再開だ。
そしてこれが正しいのかもしれない。
不動産価格が十分下落したこと、人口が増加していること、金利が下がったこと、これらによって住宅投資が再開され、金利が上昇したわけだ。
大きなバブル崩壊がリバウンドで止まるとは思えないが、一時的な反発は常に考えられる。

もう一つ、シェールガス革命によって投資が増えているという理屈も考えられる。
ただこれはそれほど大きくはないらしい。
エコノミスト(2013/08/20号)のp31にはシェール革命の投資押し上げ効果は0.1%にとどまるとある。
シェールガス関連の投資が増えていても、その分原子力や石炭関連の投資が減るので差し引くと0に近いらしい。

どちらも今一つの気がするので、資金がアメリカに移動する場合為替レートを維持するために、新興国側が外貨準備を売却することが原因とも考えていた。
たとえば、中国から資金を引き上げられていくと、中国政府が為替レートを守るためにアメリカの国債を売って元を買うような可能性だ。
ブラジルやインドネシアも外貨準備を使って為替防衛をしているから、かなりアメリカ国債が売られていることは間違いない。
それだけを考えるとアメリカ国債の金利は上がっておかしくなさそうだ。
けれどもアメリカに戻った資金はどうなるかという問題がある。
銀行に預ければいろいろ変化したとしても、最終的には国債の購入に戻ってしまいそうだ。
たまたまのタイムラグで金利が上がるというのは、どうもきれいな理屈でない。

そこでひらめいたのだ。
今までアメリカも日本と状況が同じだと思っていた。
新らしい資金需要が生まれなければ金利は上がらないと。
けれどもアメリカは日本と違う。
アメリカは日本と違って資金余剰国ではない。
資金が流入しなくなればそれだけで金利は上がってしまう。
つまり需要ではなく資金供給の側に問題が発生している可能性に気づいた。

日本の資金がアメリカから流出しているから、アメリカ国債の金利は上昇しているのかもしれない。

日本の景気は良くなっているから、為替は円安にふれている。
経済成長率は2四半期連続して4%ぐらいだ。
他の国と比べて景気が相対的にいいから、輸入は増え貿易赤字が拡大している。
海外への直接投資も好調だ。
製造業は海外での設備投資を積極的に拡大し、あるいは海外企業を買収している。
日本の基礎収支(経常収支と直接投資の合計)は赤字化しているので、海外に資金が流れ、ドル円レートは1ドル80円から1ドル100円ぐらいまで円安になった。

円安は日本が大量に持っているアメリカ国債の価値を高め、売り時と考えた日本の金融機関が資金を引き上げ始めている。
アメリカ政府のウェブMAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIESによると、日本の米国債保有額は2012年10月の1兆1319億ドルを天井にして、2013年6月の1兆834億ドルまで下がり続けている。
485億ドル、ざっと5兆円の売却だ。
他の資料を見ても、2013年の証券投資で日本は売りこしている。
円安が日本に資金を呼び戻しているのだ。
日本が資金を還流しているので、アメリカ国債の金利は上がっているのかもしれない。

これは新興国が外貨準備を売却して為替レートを維持している話と違う。
日本の国債売却による資金還流は日本の貿易収支の赤字の拡大と直接投資の拡大の穴を埋めるものであり、見合いで戻るドルは国債市場に回らない。
一方新興国の外貨準備の売却は外国からの投資の引き上げに対応するものだ。
見合いの資金が投資のための資金であった以上、戻れば一時的にアメリカ国債に退避するのはむしろ当然の話だ。
国債を売った資金が国債に戻るならば、その取引は中立で方向性を示さないけれど、そうでなければ影響を及ぼす。

日本がアメリカ国債を売却することで金利が上昇したならばいろいろと納得できることがある。
10年物アメリカ国債の金利の底は2012年7月で、ほぼ日本の景気の底であった。
それから2012年いっぱいは大体1.7%ぐらいで推移し、2013年明けてから金利が上昇し始めた。
ドル円相場が円安に振れ始め、アメリカ国債の売却によって利益を出しやすくなってからだ。
そして5月22日のバーナンキ議長の量的緩和縮小発言で一気に3%近くまで上がってゆく。
これはアメリカ国債の価格でもドル円レートの面でも、ここらへんが売り時だと考えていた日本勢の背中を押したからではないだろうか。
状況が変わって利益が不確定になる前に売ろうとしたわけだ。

日本は世界最大の純債務国としてアメリカ国債の最大の買い手だった。
その国が資金を引き上げるのだから、アメリカ国債の金利が上昇しても不思議はない。
そして日本が国債を売却することによってアメリカの金利が上昇していることは重要な時代の変わり目かもしれない。
なぜ重要かは次回。

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