異をとなえん |

「アメリカでは成功したのに、なぜ日本でだけ金融緩和政策が効かないのか?」 - 基軸通貨ドルの終わりの始まり(前編)

2013.09.17 Tue

15:54:16

9月17日、18日のFOMCで量的緩和政策の縮小が決定されるともっぱらのうわさである。
景気が持ち直していることもあって、出口政策が開始されるらしい。
実際ニューヨークダウは1万5000ドルを超え、リーマンショック前の最高値を上回っている。
失業率も着実に減少し、新規雇用者数も増えている。
貧富の格差はリーマンショック前よりもさらに拡大し、上位1%の所得だけが増え、下位99%の所得は変わっていないなどという批判はあっても、景気が回復しつつあるのは間違いないらしい。

日本人としては若干釈然としない気分だ。
日本はバブル崩壊後、いつまでも景気は回復しなかった。
最近少し回復してきたとしても、日経平均がやっとリーマンショック前の水準であり、バブルの水準は程遠い。
日経平均の最高値38957円は、今となっては別の惑星の物語のように感じる。
それなのにアメリカは簡単にリーマンショック前の状況を回復してきた。
アメリカ人が日本人より優れているからか、それとも政策の問題なのか。

「アメリカでは見事に成功したのに、なぜ日本でだけ金融緩和政策が効かないといえるのですか?」、というのは『「円安大転換」後の日本経済』(p180)に出てくる質問の形を取った日本の金融政策への批判である。
日本もアメリカと同じ金融政策を取れば景気回復したのに、そうしなかったから低迷しているのだと批判している。
日本の金融緩和政策が不十分だったから、日本はアメリカのように景気回復しなかったのだろうか。
私は違うと考えている。
日本の量的緩和政策もアメリカの量的緩和政策とほぼ同等のものであった。
それが効かないのは別の理由があったからだ。

日本の量的緩和政策が効かないのは、日銀が国債を買い取っても、その受け取った代金が日銀の当座預金に預けられてしまうからだ。
金利を0にしても、プラスの金利の貸し出し先がなければ貸し出しは増えない。
手数料、リスクを考えると実際にはもう少し高い金利が必要だ。
日本には借金してくれる運用先がほとんどなくなっている。
どんなに資金供給量を増やしても、それが預金になってしまうだけでは効果がない。
供給された資金が活発に取引に使われて、始めて金融緩和政策が成功したといえる。

アメリカの量的緩和政策が効いたのは資産を買い取った代金の運用先があったからだ。
それは基本的に新興国の資産だと考える。
新興国は先進国に比べてまだ成長余地が残っている。
先進国に比べて成長率も高いのだから、金利も高い。
先進国から低金利で資金を調達して、新興国で運用するならば十分利益が出せるはずだ。

下記のグラフは「中韓苦境は自業自得だ 量的緩和の縮小で新興国パニック!」に載っていたものだが、新興国・発展途上国の外貨準備が拡大していることを示している。
新興国外貨準備合計
記事の中では、先進国全体の資産拡大にあわせてとなっているが、これは違う。
新興国・発展途上国が外貨準備を拡大しているのは、ドル安自国通貨高の輸出減少を心配して、為替レートを安定させるためにドルを購入しているからだ。
だからアメリカのFRBの資産拡大にあわせて、外貨準備が増加していると見なければならない。

グラフから目分量で見ると、新興国・発展途上国の外貨準備合計は2008年9月の約5兆8000億ドルから2013年3月の約9兆8000億ドルまで約4兆ドル拡大した。
それに対して別の統計で見ると、アメリカFRBの資産保有額は2008 年8 月の8,700 億ドルから2013年7月の3 兆5,288 億ドルにまで約2兆6500億ドル拡大した。
期間は若干ずれているが、それほど影響はないだろう。
差があると思うかも知れないが、貨幣乗数を計算に入れるのを忘れている。
新興国・発展途上国の政府がドルを購入したならば、運用するためにその金で短期国債を購入する。
銀行の当座預金に預けるより信頼性が高いからだ。
そうすると新興国・発展途上国に国債を売った金融機関は別の運用先を探さねばならない。
結局また新興国・発展途上国の資産に買うわけで、FRBによる資産拡大は貨幣乗数分だけその力を増していると見なければならない。
M1 Money Multiplierによると、リーマンショック前の貨幣乗数は大体1.6だ。
リーマンショック後は全体に取引が低調になっているので下がっているが、この為替と国債の取引は正常に動いていると思うので、1.6を使っていいと考える。
そうすると、FRBの26500億ドルの資産購入は1.6倍して42400億ドルの影響があった。
大体新興国・発展途上国の外貨準備拡大と同じだ。

日本の金融緩和政策が効かないのは、日本円が基軸通貨でないからだ。
日本の金融機関がアメリカと同じように、新興国・発展途上国の成長を取り込むためにその国の資産を購入しても、そのままでは円がその国の通貨に対して過度に円安になってしまう。
為替レートが適正に変化したならば、この場合は過度な円安が元に戻ることだから円高になることで、少々の金利差による利益はいきなり吹っ飛んでしまうことも十分にありえる。
だから日本の金融機関による新興国・発展途上国の資産購入には限界があって、ある程度円安になればそこで中止する。
日本の量的緩和政策に限界があるといっていい。

アメリカの金融機関による新興国・発展途上国への投資には限界がない。
ある程度ドル安になった時点で、新興国・発展途上国側は為替レート維持のため相場に介入してくれる。
アメリカと新興国・発展途上国の間に金利差がある限り、アメリカ側は投資し続けることができるのだ。
FRBが量的緩和政策を続けると、増えた資産額に金利差をかけた分だけ、アメリカは豊かになっている。
新興国・発展途上国の外貨準備4兆ドル、金利差を2.5%とすると、毎年1000億ドルアメリカに流れ込む計算だ。
アメリカのGDP15兆ドルの0.66%にあたる。
年成長率が2から3%の現在では十分意味のある数字だろう。
これが日本の金融緩和政策が効かず、アメリカの金融緩和政策が効いた理由だ。

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