異をとなえん |

天野宗歩以来の将棋の革命か? - 船江恒平五段対ツツカナ戦感想

2013.04.08 Mon

22:13:58

第2回電王戦は2局目、3局目とコンピュータ側が勝利した。
ずっと見ていたが人間の強さに感動した。
コンピュータ側が優勢になれば人間は逆転できないだろうと思っていたのだが、その見込みをくつがえして局面をひっくり返す。
人間の直感というか、感覚的な読みがコンピュータの機械的で膨大な読みを上回るというのは、予想していなかっただけに驚きだった。
あれを見ていると、人間がコンピュータに勝つ可能性はどんなにコンピュータが進歩しても0にはならず、希望は永遠にあり続けるような気がする。
とまあこんな所が、対局が終わって直ぐの感想だったのだが、3局目を終わって別のことが気になっている。
船江恒平五段対ツツカナ戦の感想を探しても、私と同じ考えを述べている意見が見つからなかったので、そのことを記述する。

3局目、ツツカナは当然のように先手の飛車先の歩の交換を拒否しなかった。
これについては前に述べたこともあるが、コンピュータの読みがまだ浅いのが原因で人間の序盤の感覚は正しいと思っていた。
しかし、本当にそうだろうか。
コンピュータの判断が正しくて、人間の感覚が間違っている可能性も十分あるような気がしてきた。
飛車先の歩の交換は一歩持てることと飛車の利きが直接通るということで間違いなく得な手である。
それ自体をコンピュータが認識できていないわけがない。
それなのに拒否しないのは、歩の交換によって手得になる利益をより重視してるからだと思う。
もちろん、手得というのは局面が膠着してしまえば価値を失う。
その場合持っている歩というのが、絶対的な得として残ってしまうだろう。
だから、歩の交換を許して手得した側は先攻して一歩持たれた損を取り戻す必要がある。
あるいは2局目のponanza佐藤戦のように、端歩を突きこすといった具体的な利益を手に入れる必要がある。

ponanza佐藤戦では端歩を突きこされたのは、佐藤慎一四段のミスだという風に理解していた。
そんな風に佐藤四段の感想を解釈した。
けれども、端歩を受けていれば当然ながら別の部分は立ち遅れる。
その場合3局目と同じようにコンピュータ側が先攻する形で戦いが起こった可能性が大きい。

船江ツツカナ戦ではコンピュータの無理な仕掛けから戦いが始まった、という解釈が多い。
少なくとも序盤戦は人間有利な局面だったと思っている意見がネット上に多く見られる。
しかし、船江五段の指し手に明白な悪手があっただろうか。
明白な悪手はなかったというのが、大方の見解ではないだろうか。
それなのに、66手目4六角と打ったあたりでは相当に難解な将棋である。
加藤一二三九段の形勢判断では互角に近かったと思うし、今までの流れから考えると先手有利な感じだけれど、実際の局面を見るかぎりでは互角に近いように見える。
どう見ても既に序盤とはいえない状況なのだから、コンピュータ側の判断も尊重すれば互角だろう。
悪手を指していないのに、形勢が互角ならばコンピュータ側が悪いという判断は間違いだ。

その後、ツツカナの判断では67手目の4六飛が悪手で形勢はツツカナ側に傾いたとしている。
これについては、山崎バニラさん観戦記の最後に載っているツツカナの評価値フラグから判断した。
この判断が正しいかどうか。
94手目の6六銀で大逆転しているのだから、実はまだ船江五段優勢だった考えもあるかも知れないが、解説の鈴木氏もこの後はツツカナ優勢に傾いていたし、実際90手目の6八金打ちでは詰ましにいかずに、7七角打ちから飛車を取っていれば十分ツツカナ優勢に見える。
それなのになぜ詰ましにいったかというとツツカナ勝ちが見えたからだが、その読みに誤りがあったということだ。
その経緯は面白い話だが、私の主張とは関係ない話なので省略する。

重要なのはコンピュータの序盤の歩の交換を許した作戦が成立するのではないかということだ。
人間がそれに気づかなかったのは、かなり無理ぎみに先攻しなくてはいけないので容易には勝てないからだろう。
今回の序盤ではツツカナ側を持って指すと人間では簡単に負けにしそうな気がする。
一手誤ると即終了な場面を延々と耐えなければいけない。
人間が形勢不利と即断しても全然不思議ではない。
でも、今回示されたように実は形勢互角ならばどうだろうか。
序盤戦術に革命が起こるような気がする。
歩の交換を許さないための銀の上がりを早めに指す必要がなくなる。
そうなれば、序盤の戦術のレパートリーも大幅に広がるだろう。
天野宗歩が生み出した概念を根本的に変える革命かもしれない。

第4局目、第5局目とコンピュータ側は序盤定跡を外してくる可能性が強い。
そうすると人間側としては歩の交換は得だと考えているのだから必然的に取って勝負する将棋になる。
この2局は歩の交換を許す作戦が成立するかどうかを占う決定的な将棋となるだろう。
なんていうかわくわくしてきた。

船江五段の段位、名前を間違っていたので修正(2013/04/09追記)

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