異をとなえん |

北方四島「面積の二等分案」で妥協すべきか?

2013.03.06 Wed

22:07:57

北方領土問題に対して、面積を等分で分割して妥協すべきという案が出ている。
私は反対である。
その理由について説明したい。

そもそも日本とロシアは、なぜ平和条約を結ぶ必要があるのだろうか。
戦争自体は日ソ共同宣言によって終結している。
知らない人もいるかもしれないので補足しておくが、「日ソ共同宣言」は双方の国会によって承認されているので普通の条約と同じである。
だから、問題となっているのは領土の確定だけで、それ以外に日本とロシアの間で解決しなくてはいけない問題はない。
経済関係が進展しないのは、平和条約が締結していないからではない。
トヨタがロシアで自動車の現地生産をしているし、三菱商事、三井物産はサハリンの石油開発に投資をしている。
日本側が領土を返さないロシアに対して不信の念を持っているので経済関係が深まっていない、とは思うが直接的な関係はない。

それでは、なぜ平和条約を結ぶ必要があるのか。
普通に考えれば領土を画定するためである。
互いが自分の領土と思っている部分が違うならば、人々がぶつかり戦争に発展する危険性がある。
尖閣諸島は、その典型だろう。
けれども、北方領土問題では日本は北方領土に主権を行使しようとはしていない。
事実上ロシアが北方領土を実効支配し、日本は文句を言っているだけだ。
軍事力を行使し、実力で排除するつもりもない。
つまり、実質的に日露の領土は画定しているわけだ。
それなのになぜ平和条約を結ぶ必要があるのか。
特にロシア側にとってだ。

ロシアにとって平和条約を結ぶ最大のメリットは、日本が軍事力を持ってロシアに戦争を仕掛ける可能性をなくすことだ。
日本人としては、平和憲法を持っている日本が他国に軍事攻撃を仕掛ける可能性などほとんど考えられないだろう。
けれども他国から見れば、平和憲法だっていつ変更されるかしれたものではない。
日本が軍事力強化に方向を変え、核武装をして核抑止が効かない状況になると、ロシアにとっては困難な状況が発生する。
単純な通常兵器による戦争の場合、ロシアと日本の国力が互角だとしても、極東とヨーロッパロシアとの交通網の弱さを考えると、日本に分がある可能性が高い。

でもこの考えは日本の未来予測が甘すぎるという批判があるかもしれない。
戦後の長い期間、ソ連は日本に対して国力で有利であった。
現在は日本が優位でも、状況は変わりうる。
未来の日本は人口が減少し、国力が大幅に低下し、北方領土の奪還など夢物語になり、北海道に対してロシアが侵攻してくるのを恐れる状況もありえる。
では平和条約を結ぶと、ロシアが日本に侵攻してくる可能性はなくなるだろうか。
日ソ中立条約を無視して日本に侵攻し、そのまま居直っている国にそんなことを期待してもムダだろう。
つまり平和条約を結んでも、日本の国力が弱くなれば、ロシアは平気で日本に侵攻してくると考えておかなくてはならない。
逆に日本は平和条約を結べば、ロシアに対して戦争を仕掛けてでも取り戻すということは考えられない。
そういう意味で不利である。

もちろん、今の日本では条約は守るべきだと思っている人が主流だが、未来は変わるかもしれない。
だから平和条約を結んでもかまわないというのはおかしいだろう。
破ることを前提にした平和条約というのは、馬鹿げている。
基本的にはロシアが信頼できる国だということを信じて結ぶのでなければおかしい。
だから、日ソ中立条約に戻るのだ。
日ソ中立条約に違反したロシアには、日本に対して領土を要求する権利はない。
日本は太平洋戦争をした責任で領土の放棄がせまられた。
その分の主権の放棄をサンフランシスコ平和条約で認めた。
しかし、北方領土は放棄していない。
少なくともアメリカはそれを認めている。
それなのに、ロシアが北方領土を占拠し続けているのは自分たちが勝ったのだから、条約などどうでもいいということだろう。

つまりロシアは平和条約を本当に守る気があるのかといえばない。
そんな国と平和条約など結んでも、しかたがないだろう。

ロシアとの平和条約に意味はないけれども、領土が少しでも取り戻せればいいと考える人もいるかもしれない。
状況が変わっても、日本が北方領土を取り戻せる可能性は少ないからだ。
けれども、それはロシアも同じことだ。
ロシアも当面の間譲歩する必要性はほとんど感じないはずだ。
それなのに、譲歩するのはなんらかの経済的利益との交換を模索しているからだ。
極東地域への日本の投資を要求される可能性が強い。
それが利益だと考えられるかもしれないが、それ自体については平和条約は必要ないのだ。
結局、幾らかの島を幾らかの金で買うのと同じことだろう。
でも、そう考えると北方領土はそれほどの価値ある島なのかと思う。
経済的価値などほとんどないというのが私の考えだ。
だから、わずかながらだがロシアの国力が大幅に減退すると日本が北方領土を取り戻せる可能性があるのに、その可能性をほとんど無価値な島と交換するのは不利だと思う。

まとめると、日露平和条約は互いが信頼できるかどうかの問題である。
ロシアが過去の条約を勝手に破棄してもかまわないと考え続けるならば、わざわざ結ぶ必要性はまったくない。

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559 続:北方四島「面積の二等分案」で妥協すべきか?

昨日の記事に補足しておく。 昨日の記事では、ロシアとの平和条約は信頼関係を構築できなければ意味がないと主張した。 しかし、現実主義の立場から信頼などと関係なく、便宜的な関係を構築すべきという意見もあるだろう。 尖閣諸島の問題で日中関係が対立している現在、日露関係が安定していることは重要という観点からだ。 つまり日中の間で戦争が勃発した場合に、ロシアがどちらにつくかは戦争の状況を