異をとなえん |

続々:中国に生じている世界秩序を肯定する力と否定する力

2013.02.21 Thu

21:49:03

中国では二つの大きな力が対立しながら動いてることで、外交活動に深刻な意思不全の状態が生じている。
戦前の日本で、外務省の欧米派が必死になって欧米との間で対立を激化させないように活動しているのに対して、軍部や外務省の強硬派がそれらを無視して実力行動に出るようなものだ。
日本の中国侵略は、妥協して止めようとする力も動いていたが、結局のところ現地で実力行使をする軍部に押されていった。
穏健派の外務官僚は欧米との間で交渉をまとめ妥協を繰り返しても、行動で担保することができず欧米からの信用を失っていった。
それが戦略的に意味のある外交を取れなくなっている最大の理由だ。
中国の外交も同じような問題を抱えている。
尖閣諸島の問題での対日外交が典型例だが、今回は北朝鮮外交を考えてみたい。

北朝鮮の核実験に対して、中国は今までのようにあいまいな態度に終始している。
核実験に反対する意図を示すものの、具体的な制裁措置は取らない。
中国は北朝鮮の核実験を許容していると解釈する人もいるし、習近平がついに怒って対応措置を取ると考える人もいる
ただ、これらの解釈は中国が単一の意志に基づいて行動しているという仮定で間違っている。
中国は明らかに内部対立によって、一つの意思を示せないのだ。

中国が北朝鮮に制裁措置を取らないのは、北朝鮮の体制が崩壊しては困るためだと解釈する人が多い。
先ほどの記事には、次のようにある。

引用開始

 中国はここ数十年、朝鮮半島に対しては安定を最大優先目標としてきた。中国にとってのその『安定』とは朝鮮半島が南北分断されたままに留まることである。北朝鮮のエネルギー源の85%は中国が供給しており、中国は北の政権を揺るがし不安定化させる能力は十分に持っている。しかし実際にそんな行動を取れば、まず北朝鮮からの大量の難民が中国領へと脱出することとなる。中国はそんな事態は望まない。

 また金正恩政権が揺らいで崩壊した結果、南北統一へつながるという恐れもある。米国と同盟関係を保つ韓国が主導して南北統一がなされることは、中国がなんとしても防ぎたい事態である
引用終了

しかし、制裁措置をかけて内部が不安定になっても、本当に深刻な事態になれば北朝鮮が謝ってくると考える方が自然ではないだろうか。
金正日にしても、金正恩にしても、中国との貿易が遮断されれば経済が完全に麻痺する。
そうすると体制が崩壊し、彼らは死の恐怖すら感じるだろう。
中国も北朝鮮の体制が崩壊すればいろいろと問題は発生するだろうけれども、自分たちの命に関わるような状態ではない。
石油の供給等を止めて脅しをかけ、北朝鮮の対応に応じて今後の政策を決める。
それが一番普通の政策に見える。
でもそうなってはいない。
つまり、北朝鮮の政策を支持するグループが中国内部にいるのだ。
現在の世界秩序を否定したい人たちは対立をあおることが、軍事費の拡大を促し、自分たちの勢力の拡張につながると思っている。

実際中国は北朝鮮との外交関係を外務省に任せるのではなくて、党の対外連絡部に担当させていると思われる。
対外連絡部は欧米との交渉を担当していないので、欧米からの圧力を感じることがない。
だから平気で対立をあおっていく。

一方六カ国協議の担当は中国外交部だ。
韓日米との交渉と通じて、緊張が激化していくことの不利を意識している。
何よりも六カ国協議の議長国として、世界に中国のリーダーシップを見せる絶好のチャンスなのに、そうできない。
むしろ、中国の優柔不断な態度を世界に知らしめている。
習近平が中国の言うことを聞かない北朝鮮に怒っても不思議ではない。
しかし習近平にも中国最高指導部の意思を決定させることができないのだ。
あいまいな立場はそこから生じている。

今回の記事を書こうとして、ネットの参考記事を見ていると、ちょうどタイムリーな記事を見つけた。
尖閣・北核問題をにらんで…中国、党・軍・政統合外交司令部を設置へ

国務院の外交部と党の対外連絡部を統一して、一元的な外交機関を作ろうというものだ。
今までは、外交の個別の問題は党中央でそれに対応するプロジェクトチームを作成して対応してきた。
尖閣諸島の問題については習近平をトップとする組織が作られて、外交部や軍のメンバーが集められている。
普通に考えればそれで問題がないような気もする。
それなのに一つの外交機関を作ろうというのは、分割しておくと、外交部と党対外連絡部が勝手に行動してしまうからだ。
内部対立が強すぎて、一番上で意思を統一したころには、状況が先に進みすぎている。
だから外交機関だけでも意思を統一させておきたい。
少なくとも北朝鮮との間でどんな話をしているかだけでも情報共有したいのだろう。
私には、今回の記事は内部対立をなんとか糊塗しようとする努力の現われと受け取った。

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