異をとなえん |

中国に生じている世界秩序を肯定する力と否定する力

2013.02.18 Mon

21:44:49

日本、中国、韓国、北朝鮮のそれぞれの「思い」という記事を読んで、ちょっと考えたことがあった。
個々の国の思いについてではなく、中国は二つに分けて記述する必要があるのではないかという感想だ。

他の国はともかくとして、中国はその内部が大きく二つに分かれている感じを持っている。
タカ派とハト派、強硬派と穏健派、国内派と国際派のような感じで二つに大きく分かれている。
それに対して、他の国はそれほど二つに分裂している感じを持っていない。
もちろん細かく見ていけば、他の国の内部にも異論はあるのだろうけれど、表面には出ていない。
その理由を考えた所、国の内部を二つに大きく分けている力は現在の世界秩序に対する賛成と反対の力であり、その力が国によってほとんど片方しかないからだ。
北朝鮮は現在の世界秩序から完全に外れている。
だから反対する意味で一つにまとまっている。
それに対して、日本と韓国はだいたい現在の世界秩序から利益を受けている。
その秩序を壊したくない力が主流で反対派はほとんどいない。
韓国については、また微妙な感じを持っているのだが、それはまた別な話だ。
だから一つの思いとして表現できる。

中国だけが異なっている。
中国は現在の世界秩序を維持したい人々と壊したい人々の間の勢力が拮抗している。
だから二つに分けて、思いを表現したい。
そして二つのグループの相克によって国家の決定がなされているので、他の国から見ると極めて矛盾に満ちた行動を取っているのではないだろうか。

現在の世界秩序を肯定する力とは、グローバリゼーションを推進することで利益を受けている力のことだ。
中国は世界から資本と技術を取り入れて、高度経済成長を実現した。
しかし、賃金が上昇するにつれて、そう単純に成長を続けることができなくなっている。
だから低賃金のみを理由して進出した外資は、別の国に移動しようと考えている。
日本で話題になっている、中国プラス1というような話だ。
リーマン危機に端を発した金融危機によって、先進諸国の市場の伸びは止まりつつあり、まだはっきりとはしていないが保護貿易主義的な流れも生まれつつあるようだ。
TPPは中国から見れば明らかに日米が中国に対して国を閉ざそうとしているように見えるだろう。
つまり、中国はグローバリゼーション推進で最大の努力をしてきたのに、その努力を否定されようとすることに不満を抱きやすくなっている。

一方、中国はグローバリゼーションの恩恵を世界でもっとも受けたことは疑いないが、同時にグローバリゼーションの害をもっとも受けているともいえる。
公害の発生がその典型的な例だろう。
中国は二酸化炭素の排出量が世界一になったが、中国の経済成長が理由というだけではなく、汚れ仕事をみんな中国に持っていったからでもある。
低賃金による労働の提供自体は、開発途上国の発展として仕方がないと言える。
しかし、環境汚染の拡大は本質的な意味での先進国からの搾取だろう。
もちろん、中国の自業自得でもあるのだが、今まで精一杯尽くしてきたのに、世界から否定されつつあると思ってもおかしくない。

だから、中国は二つに大きく分かれている。
グローバリゼーションによって恩恵を受けた人々は現在の世界秩序を肯定し、できればそれを守りたいと思っている。
外資と手を組むことで莫大な利益を得ている企業家や官僚が中心になる。
外務省の官僚もその典型だろう。
それに対して、グローバリゼーションによってあまり恩恵を得ることができず、損だけが残ると思った人々は激しく世界秩序を改変したく思い始める。
日本に対して激しく反発する勢力がそれだ。
現在の世界秩序の最下層で努力してきたのに、その努力を否定された思いが世界秩序を破壊したい衝動に変わるのではないだろうか。
彼らの不満を押さえることは難しい。
世界市場が飽和することで、グローバリゼーションを推進する力が弱まっているからだ。

「なぜ中国は戦前の日本と似ているのか?」で投稿したように、現在の中国には戦前の日本と同じように世界秩序を否定したいエネルギーが生まれている。
世界秩序を肯定する力と否定する力の二つの相克によって中国は引き裂かれているのだ。
世界は二つのグループが存在することを前提として中国と付き合わなければならない。

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