異をとなえん |

続:アベノミクスは成功するか?

2013.01.10 Thu

21:54:09

アベノミクスには、前回批評した財政政策以外にも、リフレ政策と言った側面がある。
日銀に対して2%のインフレターゲットを押し付けて、なんとしても日本国内にインフレを実現させたい構えだ。
これについても考えてみたい。

まず、私は何度か書いているがリフレ政策には反対である。
効果がないから意味がない。
しかし害があるかと言えば、ほとんどないと思う。
そうすると効果があると思う人たちに対して働きかける力を考えれば、実行しても損がないのかもしれない。
つまり、資産価格が本来ふさわしいと思われる価格より安くなっているならば、なんらかのショックによってその価格に戻ろうとするだろう。
リフレ政策はそのショックになりうる。
そして、資産価格が上昇すれば、その分豊かになったことで消費が促進される。
景気好転が期待できることになる。

リフレ政策には効果がない理由については何回か書いているので、害がない方の話をする。
リフレ政策と言うと、ハイパーインフレになるという批判がすぐ出てくる。
しかしハイパーインフレは歴史上でも、そんなにたくさん起こったわけではない。
第一次世界大戦後のドイツが有名だが、基本的には巨額な賠償金を支払うためにとにかく金を集める必要があったから起こっている。
本来なら税金でかき集めるのが正しい方法なのだろうが、金額が大きすぎて到底できない。
そもそも資産の確定をするだけでも困難だ。
だから紙幣を大量に刷って、国民から強奪したわけだ。

第二次世界大戦後の日本では空襲によって生産能力が崩壊してしまった。
だから政府は税金による収入がなくなってしまった。
けれども経済活動を回すための政府の支出は必要だ。
しかたがないので、紙幣を増刷して支払いにあてた。

最近ではジンバブエの例がある。
これは白人の資産を強奪して、黒人に分配しようとする政策から始まった。
白人が逃げ出すことによって、経済活動自体が崩壊していくのだが、それでも政府は今までどおり消費を続けることを目指した。
金が入ってくるあてがないのに消費するのだから、その分なんとかしなくてはならない。
そこで紙幣の発行に頼ることになり、ハイパーインフレが発生した。

これら3例から考えると、ハイパーインフレは政府が国民の資産を強奪することによって起こることがわかる。
現在の日本では、少なくとも政府が国民の資産を奪う必要があると思われない。
大量の国債や将来の年金の問題はあるけれど、基本的には循環すればいい問題である。
明らかに富がどこか別の所に流出するとか、なくなることさえなければ、ハイパーインフレなどにはならない。

ハイパーインフレにはならなくとも、石油ショック後に発生した20%以上のインフレが起こることはないのだろうか。
これも起こらない。
全財産賭けられる位、自信がある。
しかし、起こったとしても、それほど問題だろうか。
石油ショック後のインフレは金利を上げる等の政策を実行することで収まった。
つまり引き締め政策に変更すれば問題を解決できることは実証済みだ。
今の日本経済でその後の緩やかな成長が実現できるならば、文句を言う人はいないだろう。
だから、リフレ政策によってインフレ率2%を目指す政策が失敗し、2%以上になったとしてもそれほど問題はないはずだ。

そして、本当に重要なのはインフレが起こらない理由だ。
インフレになるには、需要が供給を上回る必要がある。
20%ものインフレが発生するには、直感的には20%以上需要が供給を上回らなくてはならないだろう。
もちろん、これは嘘で、需要の価格弾力性の違いによって幾らでも変わってくる。
でも大事なのは、高いインフレが起こるには需要が供給を大きく上回らねばならないことだ。
今の日本で需要が爆発的に増える可能性はあるのだろうか。
去年より今年、消費金額を20%以上増やすなんてありえない。
だから高いインフレは起こらないのだ。

しかし、海外で石油価格が急上昇した場合などはどうなるだろうか。
これはデフレ要因なのだけれども、それでもインフレが起こった場合の話だ。
海外で起こった問題なのだから、基本的に国内の金融政策とは関係ない。
だから、リフレ政策を実行してはいけない理由にはならないわけだ。

さてようやく、インフレ率2%が達成した場合を考察すべき所になった。
実のところ、この達成だって怪しい。
なぜならば、リフレ政策というのは成功した場合、インフレ率よりも、資産価格の上昇に働く力が大きいからだ。

リフレ政策は金利を極限まで低下することによって、投資を拡大させる政策と言える。
一番簡単な投資は底値をつけた資産を買うことだ。
実際金融危機前の日本では、地価が上昇していた。
最初は借金して土地を買っても、地代の利回りがそれを上回っているからと購入した。
そして、地価が上がっているからと、それを目当てに購入が始まった。
プチバブル状態と言える。
実際都心の地価はバブル時のころと同じくらいに回復した。
日本の銀行はバブルの経験が怖くて、不動産融資にはあまり手を出していなかったみたいだが、外資系金融機関が積極的に融資に動いていた。
それが金融危機によってはしごを外され、不動産会社が破綻した。
地価も再度低下していった。

リフレ政策は勝っている人間が多ければ効果がある。
不動産価格は下がらないと信じている人が多ければ、金利が安いと購入する人が多くなる。
そうなれば当然価格は上昇する。
みんながそう思えば実現する、自己実現的な予測だ。
問題は、資産価格が上がっても維持できるかだ。
金融危機後の日本のように土地価格が下がれば多くの人が損をする。
二度失敗すると、三度失敗する人は少ない。
金利と関係なく本当に資産が上昇するか予測することになる。
この時点でリフレ政策は効果が発揮できなくなる。

しかし、現在の日本では資産価格は大幅に低下し底値をつけている。
だから自然に反発が期待できるわけだ。
そう思えば、金利が安くなるのは最後の一押しになる。
アベノミクス成功の巻だ。

自然な反発が期待できるのに、金利をさらに下げるのは、あまりいいことではない。
だからリフレ政策には反対だが、金利はすでに下がりきっているともいえる。
だとしたら、アベノミクスは実行しても、たいして問題はないだろう。

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURLはこちら

540 インフレ目標を掲げて国債を買えば資産価格は上がるか?

日銀が2%のインフレ目標を掲げる政策をスタートした。 インフレにはなるという意見が多いのだが本当だろうか。 私は疑問を感じる派だ。 下記の記事では、資産価格は上がると無条件に仮定しているみたいだが、本当にそうだろうか。 マネーとインフレ・デフレの本当の関係 引用開始 今、民間が100兆円の現金、100兆円の株式、100兆円の国債、100兆円の不動産を持っているとしよう。中銀が国債を10