異をとなえん |

アベノミクスは成功するか?

2013.01.09 Wed

20:50:37

アベノミクスを批判する記事が幾つか出ている。

藻谷兄に聞く「リフレ策の正体」
「アベノミクスは陳腐で空虚です」

自民党は、はや利権政党に逆戻り?

公共工事を実行して土建屋の利益を守ろうとする、古い自民党の政策の実行に過ぎないという批判が多い。
批判には同意できるけれど、本当にダメがどうかは別問題だ。
昔ダメだからといって、今もダメかは別の話になってくる。

現在は昔と少し違っている。
小渕内閣のころの公共投資は景気対策のため、拙速でもいいから工事をしてしまった。
だから、後のテレビ番組では無駄な工事の典型として取り上げられるようなものが多かった。
変に装飾過多なゴミ処理工場とかが記憶に残る。

しかし、公共投資は小泉政権のころからずっと縮小傾向にある。
要望が強い公共事業も予算がなくて後回しにされた物が多かっただろう。
だから、だんだんと質の高い公共投資が残ってきているはずだ。
質が高いというのは、要請が多いので使う人が多くて、十分に利用される工事だということだ。
要望が多いプロジェクトでも、準備のために時間がかかるケースがある。
そういうプロジェクトが溜まっているはずだ。

たとえば、東京の三環状道路への投資は、賛同する人も多くて十分意義があるように見える。
また北海道新幹線や北陸新幹線も、私の目には観光需要を促進させる意味もあって十分投資する価値がある。
もっとも長崎新幹線には懐疑的だけれど。
これらの公共投資が本当に投資する価値があるかどうかは、当然のことながらわからない。
関連する人はより正確な予測ができるだろうけれど、最終的な予測は神のみぞ知る話だ。
作家の阿川弘之氏は東海道新幹線を、戦艦大和と万里の長城に匹敵するムダだと批判したらしい。
そして後でその不明を恥じたということだ。
後知恵なら、なんとでも言えるけれど、多くの人が実行して欲しい要望を出すならば、それは意義のある工事の可能性が高い。
また長期間要望が続くならば、それは本当に欲しがっている可能性が高いので、成功しやすくなる。
要するに、選挙で必死にがんばっている圧力団体の推す公共投資がいいということだ。
そんなプロジェクトが多くなっているかもしれない。

さらに地方自治体もかなり変わってきているはずだ。
小渕政権のころ、中央の旗振りの元にムダな公共工事をしてしまった地方自治体は困っている。
上下水道の投資はしたけれど、全然使う人がいないので、完全にムダになっているケースもある。
予算の大部分を中央政府が持ってくれると言っても、自分たちが負担した分の効用さえなければ、住民からの批判は免れない。
そして、借金は返し続けなければならないので、夕張市のように再建団体に指定されれば、安い給料で地方公務員は働かなければならない。
その二の舞はいやだろう。
だから、今回は中央政府がせっついても、かなり慎重に投資する可能性が強い。
とりあえず、新規の投資を行うよりも、今使っている設備に対してメンテナンスをするのではないか。
人口が減少していくなか、自分たちに本当に役に立つものに投資しようと努力するだろう。

それらを考え合わせてみると、アベノミクスは本当に役に立つ公共投資を実行する可能性がかなり高い。

心配なのは、東日本大震災の復興関連ぐらいなものだろう。
被害に合った三陸地方などの地域は本質的に津波などの災害に弱いのが問題に思える。
単なる地震の被害は日本どこでも起こりうる問題に思えるが、津波は明らかに限定されている。
明治以来、明治三陸地震、昭和三陸地震、東日本大震災と三回も大きな津波被害に合っているのは偶然ではない。
東北地方が貧しかった原因の一つでもあるはずだ。
人口が増えている時代ならば三陸地方でなんとかして暮らしていけるように努力すべきかも知れないが、人口が減っている時代ならば積極的に退避を開始すべきだ。
そういう意味で、復興関連の投資は必要最小限のものに絞るべきだ。
現在復興が進まないと言われるのは、ムダな投資になる危険性を考えて人々が投資を実行しないからだ。
それは正しい。

心配な所はあるにしても、アベノミクスの公共投資は効率的なものになりうる。
そして、マクロ経済的に有利な条件が整っているかもしれない。
バブル崩壊以後の公共投資が効かなかった原因は、経済の収縮過程の中で新規の投資を実行しても需要が供給を上回らなかったからだ。
だから全然経済の刺激にならない。
建設業もムダな仕事をしていると思えば、いずれは予算も減っていくだろうからと、関連した設備投資を実行しない。
それでは失業者の救済事業なだけだ。
その状況が変わってきている。

需給ギャップはバブル崩壊以後の調整によってかなり引き締まってきた。
たぶんバブル崩壊後の調整は小泉政権のころに終了して、現在は金融危機によって発生した需給ギャップの調整だ。
それも震災対応などで改善されつつある。

実際、建設関連の労働者は人手不足のため賃金が上がっている。

引用開始

 2011年3月の東日本大震災以降、建設会社が被災地だけでなく全国で技能労働者の確保に苦労している。復興需要の増大に伴い、技能労働者の賃金は上昇傾向にあり、その市場は全国的に「売り手市場」となっている。
引用終了

パートの従業員の給料も上がっている。

ここでさらに公共投資を増やせば、労働者が足りなくなるだろう。
そうすれば当然賃金は上昇するので、成長のサイクルが回り始めることになる。
賃金が上昇すれば消費が増え、その結果成長していく。
十分に薪が乾いたので、火をつければ燃え上がるようなものだ。
アベノミクスはその火のようなものになりうる。

こう書いてくると、いいことづくめのような感じだ。
もちろん、公共投資は結局ムダなプロジェクトが中心かもしれないし、薪に火がついても世界景気の後退で消えてしまうかもしれない。
それでも成功する可能性はある。

私は理念としてケインズ政策に批判的である。
だから、公共投資を実行して不況から離脱するなどうれしくない。
後世に間違った例を伝えるからだ。
小泉政権のように予算を減少させている中で、自然と景気が立ち直っていく方がいい。
しかし、今回のアベノミクスは景気回復の絶好のタイミングを捕らえたかもしれない、と思う。
そうなれば、日本にとって喜ぶべきことだ。

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