異をとなえん |

続:年末アメリカの株式相場は下げているのに、なぜ日本の株式相場は高値をつけたのか?

2013.01.03 Thu

21:50:25

前回の続きで、日本で円安株高が続いている理由を考えている。

新年があけて、ようやくアメリカで財政の崖が回避された。
結果ニューヨークダウが急上昇し、ドル円相場も87円台と年末よりさらに上げてきた。
年末アメリカの株式相場は下げ、日本の株式相場は上げていたことから、アメリカの景気回復に追随する日本経済という流れが変わりつつあるというのが私の推測だった。
しかし、後知恵で考えると財政の崖が回避されるのは予測できたから、アメリカと日本の株式相場に少しずれがあっただけで、本質はアメリカの景気回復に連動して日本経済も回復しているのは変わってないのかもしれない。
ふには落ちないが、こういう解釈もできる。

けれども、私は別の仮説を支持したい。
ドル円相場が日米間の金利差に関係なく円安に振れつつあり、円安が株式相場を上昇させている可能性だ。

まず、変動制為替相場のレートを決めるもっとも決定的な要因は、両国間の金利差であることは間違いない。
一番重要なのは一番早く動くことだ。
その他の要因、貿易収支や経常収支の変動には時間がかかる。
だからどうしても短期的な変動では、金利差が重要な要因になる。
しかし、金利差で為替レートが決まるには、軸になるレートが必要だ。
軸になるレートは購買力平価だと考えて書いたのが、「為替レートはどう決まるのか?」から始まる一連のシリーズだ。
ただ現在は購買力平価というよりも、金利差0のときに定まるレートその物が軸になるレートだと思っている。
その場合需給に均衡が取れていないと、そのレートは維持できない。
経常収支や資本収支においてどちらかに黒字が溜まっているならば、黒字がある国の通貨高になる方向に自然と為替相場は変動していく。
その揺れ動く軸に合わせて、金利差で為替は動くと考えるわけだ。

揺れ動く軸は金利差の変動ほど早くはないが、それでもゆっくりと変動していく。
たとえば、円高が続くならば日本企業は輸出の採算が悪くなるので、輸出を控えるようになり輸入を増やそうとする。
当然、黒字は減っていく。

日本経済においても、リーマンショック後の急激な円高で基礎的な収支に変動が生じたのではないだろうか。
その中で参考になるのが次の記事だ。
「円高構造が大転換 プロの着目点に学ぶ」
この中で述べられている基礎収支の概念は、経常収支と直接投資の合計だが、要は金利差によって移動する資金を取り除いた収支という意味だ。
つまり、私の目指した軸になるレートを決定する基本的な部分だ。
これを見てみると、日本は2011年以降赤字基調になっている。

引用開始

「基礎収支」を見てみると、最近は赤字傾向が鮮明だ(グラフB)。輸出低迷や福島第1原子力発電所事故後の液化天然ガス(LNG)の輸入拡大で経常黒字が急減。これに対し、長引く円高で日本企業の海外直接投資が急増したからだ。
引用終了

まとめると、ドル円相場は、リーマンショック後の世界景気の後退によって、アメリカの金利が低下し、日本に資金が巻き戻されていったので、円高を続けていた。
2011年以降、基礎収支は赤字になっても、日米の金利差が収縮する局面が続いていたので、円高要因と円安要因が打ち消しあって為替相場は1ドル80円近辺で動かなかった。
しかし、2012年アメリカの金利が下がり続けることで、金利差は収縮し、もはや為替相場を動かす要因にならなくなったので、基礎収支のみが重要視される局面となった。
アメリカが財政の崖によって不況に突入しても、基礎収支が赤字ならば為替相場は円安に振れる。
円安ならば輸出企業は利益が増えるということで、株高が続いたというのが、年末の円安株高の解釈だ。

今後の状況についても、財政の崖が回避されてアメリカの景気の持ち直しが続けば、アメリカの金利は上昇する。
そうすれば金利差によるアメリカへの資金の流出も復活するので、さらに円安に振れることになるだろう。
アメリカの景気の急激な後退がなければ、円安は続き株式の上昇も当分続くのではないだろうか。
 

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535 続々:年末アメリカの株式相場は下げているのに、なぜ日本の株式相場は高値をつけたのか?

前回は、基礎収支の赤字化が円安の原因だと位置づけた。 それでは、なぜ基礎収支は赤字になったのだろうか。 経常収支はまだ黒字を保ったままだ。 貿易収支は赤字になったが、所得収支の黒字を打ち消せるほどではない。 それなのに基礎収支が赤字になったのは、海外への直接投資が増えて経常収支の黒字を上回ってきたからだ。