異をとなえん |

電王戦でのコンピュータソフトの貸し出しについて

2012.12.18 Tue

21:57:28

第二回電王戦で開発者側が棋士に対してソフトを貸し出すかどうかが議論されている。
貸さないのは卑怯だとか、貸してくれと頼むのは卑屈だとか、ネットではそういう批判が飛び交っている。
私は貸す必要はないと思うのだが、別にソフトに勝って欲しいから言うのではない。
できるだけ見て面白い将棋を見たいから、そう思うのだ。

我々は強い人がソフトに対して普通に戦ったところを見ていない。
現在最強のソフトが強い人に対して普通に戦った場合どうなるか、まずそれを知りたい。

清水女流プロとソフトあからとの対戦は見たし、それはそれで面白かった。
しかし、双方の力が弱すぎて、たぶん最善にはほど遠い。
ヘボ同士が戦って、たまたま最後に上だった方が勝ちにも見える。
肝心要の部分で戦わず、あさっての部分で戦っている将棋は興をそがれる。

米長氏とソフトボンクラーズの対戦では、二手目6二玉という奇襲戦法に出てしまった。
ボンクラーズ向けに練り上げられた作戦なのだけれど、なんというかがっかり感がある。
相手が誰であってもいいように、盤上最善を目指しているかというと疑問だ。
自分の現在の力のことを考えて、入玉模様の将棋を目指したのだろうけれども、人間相手に指さないだろう将棋を指すのはソフトに特化しすぎている。

私はおいしい部分がたくさん見られる将棋が見たい。
おいしい部分というのは、中終盤アマには見えない、目が覚めるような手が飛び出すことだ。
劣勢の側がそれを繰り出して逆転するのが、観戦する者としては一番面白い。
そういう意味では、渡辺竜王とボナンザの対戦が一番面白かったと思う。
渡辺竜王がボナンザの力を最大限に引き出し、終盤逆転した。
どちらにも見せ場があって、面白かった。

早指しではボンクラーズやponanzaの対局が将棋倶楽部24でたくさん行われた。
それらの対局では、序盤ソフトの側が少し悪く中終盤に多くの場合逆転していた。
早指しではソフトの力が人間を上回っているのは確実と思われる。
しかし長時間の場合はどうだろうか。
序盤ソフトは劣勢に陥る。
それをなんとかひっくり返そうと、ソフトは難解な手を繰り出してくる。
人間が逆転を許すか、許さないか、そこらへんが見所ではないかと勝手に思っている。
実の所、米長ボンクラーズ戦もそれに近かった。
米長氏が勝負所で全然ダメな手を指さなければ、手に汗握る展開もありえた。
しかし人間はぽきっと折れてしまい、終わった。

今回の対局では、やはりまず盤上最善の一手を目指して指す将棋が見たい。
相手がどういう将棋を指すが全然わからないで指すような将棋だ。
そういう将棋こそ一番力量がわかると思う。

ソフトをプロ側に貸し出しても、傾向を分析するぐらいならばいい。
けれども、散々指して普通に指しても勝てそうにないから、バグを探すような手段になってしまったらつまらなくなる。
たとえば、誰が見ても人間の側が敗勢なのに、コンピュータがバグで投了してしまう。
そんな将棋は見たくない。
稲庭将棋みたいな将棋も面白くない。

ソフトと人間が普通に戦う将棋をまず見たい。
逆に言うと、普通に戦って人間が勝てないと思うならば、まずその将棋を公開して欲しい。
米長氏はボンクラーズとたくさん将棋を指した。
その将棋については良くわからないが、本番が終わった後ならば公開できるのではないだろうか。
上で述べた将棋の一番面白い部分が詰まっているような気がする。
米長ボンクラーズの普通の対局を見れば、ソフト用の作戦にも納得できるのだろうけれど、そうでないと結末だけ知らされる勝負でつまらない。

結論としては、練習用の対局を本番後に公開する条件をつけて貸し出すのがいいと思う。

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コメント

304

米長会長が最後のインタビューでおっしゃってましたが、
コンピューターはやはり人間とは違うのです
そしてコンピューターのことをプロはよく知らない

対人間用に戦法では、放っておいてもマシンの性能向上とともに年々自動的に強くなるコンピューターに、すぐ勝てなくなることは明らかなのです

そんな中普通にやってたまたま勝って、
「まだプロが強いか」みたいな対局の方がつまらないですよ

米長会長が気づかれていたことですが
コンピューターには穴があります
ロジックに組み込みにくい部分、コンピューターが評価しにくい部分があるということです

ここをプロが研究すれば、もう数十年はプロが戦えるのではないでしょうか?
米長会長はそれほど将棋は『深い』と考えていたのです
将棋はただ単なる伝統的な力比べゲームではなく、ただ形を大事にするだけがプロではなく、
将棋は深く、プロはもっともっと研究し、21世紀の今からでも新しい将棋は作れると思われていたのではないかと思います

6二玉はただ単にその場でコンピューターに勝つための姑息な策略でも奇襲でもないということです
これからはなるべく長い間コンピューターとプロが対等な立場でお互い研究し合えるように、
プロはコンピュータを研究していかないといけないのです

プロがそれを怠り、素直に負け続け、将棋はもう人の手による発展の余地がないただの伝統的なゲームだと皆が思うようになれば、将棋に未来はありません

それが会長という立場から抜群に見えていた米長会長の意図をプロが汲み取理、新しい将棋を切り開いてくれることを願っています

305 Re:米長会長が最後のインタビュー

名無しさん、コメントありがとうございます。
回答が長くなりましたので返答は記事として投稿しました。
それでは。

306

プロ棋士が奇策で負けて普通の対局を見れないまま今後ソフトとプロ棋士の対局見れなくなるのが怖い。
公でソフトとの対局を禁止した結果、将棋ファンはプロ棋士とソフトの普通の対局を見ていない。
ソフトの貸出は一方的に相手と対戦できるので公平性の面でダメな気がします。
まともに対局するのが見たいですが、来年も5局あるなら稲庭のような奇策もいいかな。(ソフト側が対策するから)

プロ棋士の危うい立場が議論をヒートアップさせているのかもしれない。
競技者がお金を稼ぐには
1 観戦料(観戦が面白い)
2 広告料(注目度が高い)
3 公営ギャンブル
将棋は時間がかかるので1と3は無理。
オリンピック種目のようにナショナリズムを使えない。
最高峰の頭脳戦と銘打って注目を集めてきた。
ソフトに負けるとそれができなくなって困る。

307 Re: プロ棋士が奇策で負け

コメントありがとうございます。

> プロ棋士が奇策で負けて普通の対局を見れないまま今後ソフトとプロ棋士の対局見れなくなるのが怖い。

同感です。
プロ棋士とコンピュータソフトの対局は見たいです。
floodgateでのコンピュータソフト同士の対局は、なんか凄そうだけど素人にはよくわからないです。
プロ棋士の解説がつくことで始めて、その凄さがわかるような気がします。

それでは。

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537 「電王戦でのコンピュータソフトの貸し出しについて」のコメントへの回答

「電王戦でのコンピュータソフトの貸し出しについて」にコメントがありました。 回答が長くなりましたので記事として投稿します。 名無しさん、コメントありがとうございます。 私が書いた記事のテーマは、コンピュータソフトの貸し出しをすべきか、否かでしたので、それについては直接関係がないコメントだと理解しました。 コメントの主題というか、私が何を回答すべきかもよくわからなかったの