異をとなえん |

国債が暴落すると自国通貨高になる

2012.11.10 Sat

21:46:30

「国債暴落説について考える - 為替レートはどう決まるのか?(その7)」で次のようなコメントをいただいた。

引用開始

国債暴落で円安になる理由は、通貨の信任が無くなるから
国債が暴落して、自国通貨高になった国など、古今東西何処にもない
引用終了

ちょっと納得しがたいので反論してみた。

まず、国債の暴落が起こった場合の為替相場の例を見てみよう。
「過去の日本の債券相場の暴落事例 その2」を見てみると、運用部ショックとVARショックの二つの例が挙げられている。
小沢ショックは実際には国債価格は変動しいないみたいなので外した。
前の記事にあるもっと古い例は為替チャートを見つけるのが面倒だったのでこちらも外している。

運用部ショックでは、1998年「9月に0.7%を割り込んでいた長期金利は12月30日には2%台に乗せてきたのである」とあるように、1%以上金利が上昇した(国債価格は下落した)。
それに対して、1998年のドル円レートの為替チャートを見ると、円は9月144円ぐらいだったのが年末には115円まで円高になっている。

VARショックでは6月に国債は高値をつけた後、暴落した。
引用開始

6月までは債券相場は1日あたりの値幅も限られながらも、じりじりと高値を更新し続け11日に30年債が0.960%、20年債0.745%、そして10年債0.430%とそれぞれ過去最低利回りを記録した。
引用終了
長期金利は6月に0.4%だったのが8月に1.4%まで上昇している。
それに対して、2003年のドル円レートの為替チャートを見ると、円は6月119円ぐらいだったのが年末107円まで円高になっている。

上記の例を見るとわかるように、1%以上金利が上昇した場合為替相場は円高に向かっている。
これは円とドルの金利差が小さくなると、日本からアメリカに資金が移動しづらくなるので円高に向かうという理屈に合っている。

もちろん国債の暴落と言ったら金利の1%ぐらいの上昇ではなくて、金利の5%ぐらいの上昇という主張なのかもしれない。
ただそれほどの上昇は簡単には起こらない。
1%ぐらいの上昇でも、自国通貨高に向かう力は働くし、自国通貨高に働く力は同時に国債を購入する力だ。
資金が日本に流入すれば、あるいは外国に資金が流出する力が抑えられれば、その資金を運用するために国債を買おうとする。
国債を買おうとすれば当然国債は上昇方向に動く。
国債暴落が国債価格上昇の力を生み出したわけだ。
ゴムを引っ張れば戻る力が働く。
それをさらに引っ張っればゴムは切れて戻らなくなるけれど、そのためには継続的に強く力を加えなくてはならない。
国債暴落の力は自国通貨高という反発する力を生む。
それが通貨の信任を失う方向に動くには、国債の暴落と関係ない力が働かなければならない。
それほどの力が現在の日本に働く理由が見つからない。

戦後の日本では、国債の暴落と自国通貨安が同時に発生した。
これは当然相反する現象だけれど、同時に起こったのは急激なインフレが起こったからだ。
そして、急激なインフレが起こったのは戦災によって膨大な資産と生産能力を失ったからだ。
需要に比べて供給が全然足りなくなったので、インフレが発生し日本人は貧しくなったわけだ。

現在の世界でも自国通貨建てでなく、外国通貨建てで国債を発行していると、そもそもデフォルトリスクが発生する。
この国は金を返せないと判断すれば国債は暴落し、同時に自国通貨を大量に外国通貨に変換しようとする力が働くから、為替相場も下落する。
そういうケースと自国通貨建てで国債を発行しているケースは違うということだ。
そもそも外国通貨建てで国債を発行しなくていけないのは、自国の資本市場で資金を賄うことができないから外国に頼るからだ。
国が成熟して資金がたまれば外国の資金に頼らずに済む。
そういう自国通貨建てで国債を発行している国では、国債の価格が下がって自国通貨安になることが起こらない。
つまり国債暴落と認識されること事態が発生しないのだ。

だから、「(自国通貨建て)国債が暴落して、自国通貨安になった国など、古今東西何処にもない」とは言えないけれど、めったにない。

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