異をとなえん |

40歳定年制を強要するのはおかしくないか?

2012.10.20 Sat

21:35:31

高齢化社会が進むにつれて労働者が足りなくなるから、労働市場の流動化を進めなくてはならない。
だから40歳定年制を導入して終身雇用を廃止しよう、という意見がある。

参照:終身雇用、年功賃金がいつまでも続いている理由

引用開始

人口に占める労働力の割合が低下するという人口オーナス時代においては、限られた労働力をできるだけ有効に活用していくことが必要となる。そのためには、産業・企業を超えて労働力の再配置を行っていくことが必要となる。この時障害となるのが、終身雇用的な日本の雇用慣行だ。40歳定年制は、この硬直的な従来型の雇用慣行を打ち破る方策として提案されているのだ。
引用終了

なにかおかしくないだろうか。
この問題を労働市場における長期契約と短期契約の違いとして考えてみよう。
市場において価格は激しく変化することがある。
需給の変動によって、需要と供給の差が激しく変化してマッチングすることが難しい場合だ。
作りすぎて余ってしまうとか、買えなくてみんなが行列を作っているような場合に起こりやすい。
需要が供給を大きく上回れば価格は上昇するし、逆に需要が供給より大きく下回れば価格は下落する。
その変動幅が激しいと市場で商売する人間にとっては先の見通しが難しくなる。
供給を増やすための長期投資も難しいし、価格が安定していれば買おうと思う購入者にとっても手を出しにくい。
だから、市場の一時的変動を無視して長期での契約を目指すメリットが出てくる。

ただし、市場の需給関係が長期に渡って変化すると考えるならば、長期と短期の契約の選択にも変化が出てくる。
市場の需要が供給を長期にわたって上回り続けると考えるならば、価格は上昇傾向を見せるだろうから、売るほうとしては長期契約を嫌い短期での取引を望むし、買う方は長期契約を好むだろう。
逆に市場の需要が供給を長期にわたって下回り続けると考えるならば、価格は下降傾向を見せるだろうから、売るほうとしては長期での契約を望み、買う方は長期の契約を嫌うだろ。

中国では労働者がなかなか定着しないと聞く。
長期的に労働需要が増加していくと、人々が考えているから、長期雇用は魅力がないのだ。
だから、賃金が高いところに直ぐ移動する。

逆に現在の日本では公務員の人気が高まっている。
デフレが続いているので、賃金は上昇していない。
だからできるだけ長期雇用で、働いている所が潰れないことを望む。
公務員は長期雇用だし、解雇される可能性は極めて低い。
もちろん絶対ではないが、他の企業に比べれば安定している。
公務員に求職者が集中するのは当然の話だ。

つまり労働市場でも人々は長期契約と短期契約の損得を勘案して、職業や職場を選んでいる。
それなのに、契約条件を後出しで変更するのが望ましいかという話だ。

労働者は経営者より数が多いので、民主主義社会では政治の力によって定年延長などと長期契約を変更しようとしている。
民主党の政策はそういうものが多い。
これは経営者側を後付けで不利にしているので問題だが、政治力を使って長期契約を打ち切らせようとする、はっきりした契約違反よりはましだ。
定年延長の場合は賃金の引き下げを当然の前提としている。
価格が変更されることを前提とするならば、契約期間を変更しても妥当な水準での契約となりうる。
それに対して、長期契約をいきなり打ち切るのは、長期の安定した取引のために安い価格で売ることに同意した供給者を裏切る行為だ。
認めるべきではない。

終身雇用は慣習によるものだから契約をキャンセルする方法は幾らでもある。
なによりも、企業が倒産危機にあれば賃金は大幅にカットできるし、退職者を募ることもできる。
つまり長期契約といっても絶対的に保障された契約ではないのだから、法律によって無理に解雇しやすくする必要はないように思える。

そして一番違和感を覚えるのは、高齢化によって労働者を流動化する必要があるから、40歳定年制にしようとする理屈だ。
高齢化によって消費は減少し、経済は成長できなくなっていく。
企業には働いていない労働者がありあまってしまい、解雇しなくては潰れてしまう。
だから企業のために40歳定年制にしようという理屈ならわかる。
それをなにか労働者にとって有利なような感じに40歳定年が出てくるのが、気に入らない。

高齢化で労働者が減少すれば、賃金は上昇していくはずだ。
そうなれば終身雇用形態で働いている人たちは人を雇ったばかりの新興企業に比べて相対的に賃金は低くなる。
終身雇用は企業の義務であって労働者は制約されない。
だから新規求人の賃金が長期安定のメリットを上回るほど高くなれば、労働者は移動していくはずだ。
終身雇用という概念での契約は普通ではありえないほどの長期の契約なので、なかなか簡単には引き抜けないかもしれない。
高給で引き抜かれても、雇った会社が直ぐに倒産しては困るのだから、移動が難しいのも道理だ。
けれども労働市場が段々と逼迫していけば、短期契約での賃金市場は高騰し、それは長期契約での賃金にも波及してゆく。
そうすることで自然と労働者は流動化し、再配置されるはずだ。
40歳定年ということで強制的に追い出さずとも、賃金が上昇し続けるならば人々は自然と流動化する。
法律的に強制する必要は全くない。

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