異をとなえん |

覇権国の交替理論

2012.10.16 Tue

21:43:11

前にも一応書いたような気がするのだが、どの記事だったかも忘れてしまった。
そこで覇権国がなぜ交替していくのかについて、もう一度書いてみる。

覇権国の交替というのは、繰り返し起こっていく現象なので、どこが出発点なのか判別しないのだが、まずは全ての国が平等な場合から始める。
全ての国が平等といっても見かけだけで、実際は技術水準などが異なっている。
そうすると技術がもっとも優位な国は新技術、新製品によって経済成長を始めていく。
新しい需要を作り出し、供給することで、一人当たりGDPが成長するといっていい。
そうすると他の国も新製品が欲しくなり、輸入を始める。
その場合貿易収支の均衡が崩れるのだから、他の国は最先進国に対して輸出をする製品を作り出さなければならない。
一応、全ての国に差がない状態では貿易収支は全て均衡していたと仮定しておく。
また、借金して新製品を輸入することも考えられるが、その場合は返す当てが必要だ。
つまり輸出を増やす必要があることには変わりない。

基本的に国際収支に偏りが出れば、それを是正するために為替相場が変動する。
あるいは金本位制みたいな世界で固定為替相場を想定するならば、新製品を輸入する国の賃金が最先進国に対して安くなればいい。
そうすると、新製品を輸入する国、なんか文が長くなるのでこれからは劣位国と略す、では今までの製品の価格競争力が増すので、輸出が増え、国際収支は均衡することになる。
最先進国での技術進歩が続き、劣位国では開発が止まったままだと、劣位国は相対的に貧乏になってゆく。
この状況は劣位国にとってまずい。
劣位国も技術革新を行い、新製品を輸出することで、豊かになろうと考える。
しかし技術革新は簡単にはできない。
それに新技術を一から開発するより、すでにあるものを導入した方がずっと安上がりだ。
最先進国から技術を導入する。
そして新製品を作るための設備の導入には資金が必要だ。
劣位国は貧しいので、その資金を最先進国から借金した方がいい。
この場合新製品を作ることによって輸入を代替できるので、貿易収支は黒字化する。
だから借金が返済できるので、最先進国は金を貸してくれるわけだ。
最先進国が金を貸す場合、自分たちの国の通貨での返済を要求する。
最先進国の損得は自国の通貨で判断するのだから当然だろう。
劣位国は従うしかない。
最先進国の通貨は基軸通貨として世界に広まっていく。
ここで最先進国は基軸通貨国となったわけだ。

世界経済を一つの経済として考えると、新技術が普及してゆくときは、みんなが新製品を買いたくて仕方がないので、高い利息で借金しても買う。
同時に新技術での製品を作り出す企業も儲かって仕方がないので、借金してでも設備投資を行う。
みんなが借金をするのだから、金貸しは儲かって仕方がない。
基軸通貨国では信用創造できるので金融業が発達し、世界の他の国にたいして金を貸してゆく。
金融業は儲かって仕方がないのだから、基軸通貨国はおおいに繁栄する。
同時に金を貸すということは、借金を踏み倒される危険性ができることだ。
踏み倒されてたら金を貸さないやり方もあるが、軍事的に優っているならば強引に取り立てる方法が使える。
基軸通貨国は技術的にもっとも進んだ国なのだから軍事的にも優位だ。
そこで基軸通貨国は覇権国となり、自分たちの投資を守るために、世界の秩序を安定させる。

覇権国の技術進歩が続いていけば世界は安定するがそうはいかない。
技術進歩自体に波があることも問題だが、一定の速度で技術進化を続けていても、金融資産が増加していれば設備投資も購入資金も簡単に手に入るようなので、新技術の飽和する期間がどんどん短くなるのだ。
そうすると、設備投資資金も購入資金も足りていて、借金する人がいない時期がくる。
金利は低下していく。
金融機関は収益を求め、より筋の悪い貸し手に対して貸す金を増やしていく。
返せる当てのない人にも、みんなが金を貸せば一時的には大丈夫なように見える。
高い金利で貸しているのだがら儲かって仕方がない。
バブルの発生だ。
しかし返せる当てがない人たちがいつまでも利息を返し続けることはできない。
なんらかの条件変化によって一斉にこげつくことになる。
バブルが発生しているときの成長は未来への楽観から来る消費の増加だ。
バブルが崩壊し、未来への楽観がなくなれば消費は減少し、それに合せて経済が縮小する。

バブル崩壊による不況では、各国はケインズ政策に走りたくなる。
今金のある人が将来に期待して、貧しい人に金を貸してくれるわけだ。
けれどもそれは国単位での話となる。
理想的には金持ちの老人が貧乏人の若者に金を貸すけれど、景気が良くなったら貧乏人の若者が金持ちになって借金を返済すればいい。
でも国をまたぐとそうはいかない。
ケインズ政策を実行して国債を発行しても、その代わりに輸入が増えるならば、増やそうとした雇用は輸出国に流出してしまう。
実に問題だ。
そこでケインズ政策を発動した国々は保護貿易主義に走る。

世界の秩序が安定していたのは、覇権国に対して他の国々が輸出をすることで、輸出国が成長し繁栄していたからだ。
覇権国が保護貿易主義に走れば、輸出国は成長のエンジンを失う。
成長できない不満が輸出国を世界秩序に挑戦させる国に変貌させる。

この項続く。

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