異をとなえん |

習近平が消息不明だった理由は?

2012.09.29 Sat

16:47:21

中国の国家副主席習近平は9月1日から約2週間消息不明となっていた。

動静情報消えた中国国家副主席がメディアに登場、2週間ぶり

引用開始

香港(CNN) 中国の次期最高指導者と目される習近平(シーチンピン)国家副主席(59)の動静が過去約2週間、一切伝えられていない問題で、国営メディアは13日までに、同副主席が中国指導者の1人として広西チワン族自治区の地方政府高官の死去に弔意を伝えたと報じた。

(中略)

副主席は9月1日、共産党の中央党校で演説したとされて以来、公の場に現れていない。この演説に伴って中国のニュースサイトは副主席の画像を掲載したが、スーツ姿で体調などには問題がない様子がうかがわれた。
引用終了

病気説とか権力闘争説とか、いろいろ出ていたがはっきりした答えは出ていない。
私は一つの仮説を思いついたので、提示しておく。
当然のことながら根拠のない推測だ。

最近銀行員の回顧記事で、スケジュールを全てキャンセルしたという話を読んだ。
金融危機だか、不良債権処理だか忘れたが、危機が発生して緊急に対処しなければならない状況ができた。
その人は全てのスケジュールをキャンセルして、緊急事態に対応するための措置を取った。
最優先事項ができたので、その問題に全力を注ぐために他の全ての仕事を中止したわけだ。

私が推測するに、習近平の消息不明も同じような話ではないだろうか。
今回の緊急事態というのは当然尖閣諸島問題である。

wikipediaの「尖閣諸島国有化」によると日本の購入の経緯は次のようになっている。

引用開始

これらの東京都による尖閣諸島購入の流れに中国政府は外交部の声明などで強く反発した。このため日本政府(野田内閣)は中国政府の反発を和らげ「平穏かつ安定的な維持管理」をするためとして、島への港湾施設等の建設を計画している東京都の購入計画を阻止して国有化する方針を決め、9月3日に政府高官と埼玉県在住の地権者が協議し国有化に合意し、9月5日にはこれが明るみになった。9月10日には尖閣諸島の国有化に関する関係閣僚会合を開き、それまで賃借であった魚釣島、南小島、北小島の3島を地権者より購入し正式に国有化するという方針を最終決定した。藤村修官房長官は記者会見で第三者が購入することにより平穏かつ安定的な維持管理ができなくなるからであると国有化の必要性を強調した。

翌9月11日、日本政府は魚釣島、北小島、南小島の3島を20億5千万円で購入し、日本国への所有権移転登記を完了した。購入費は平成24年度予算の予備費から支出された。
引用終了

つまり日本政府は8月の終わりごろ国有化の最終方針を固めた。
たぶんほぼ同時に中国に連絡したと見るのが自然だろう。
中国政府は当初容認の姿勢を見せていたので日本政府は国有化を決断したわけだ。

当初容認というのは、国有化の状況が連絡されているのに、9月8日APECで日中外相が話しを交わしていることや、9月9日には野田総理大臣が胡錦濤国家主席と同じように話しをしていることに示されている。
もし国有化を中国が徹底的に拒否すべきものと考えているならば、面子を潰された形になる話は拒否したことだろう。
気にいらないことがあると会見を拒否するのは、中国共産党の常套手段だ。
それなのに話を交わしているのは、大きな問題にするつもりがなかったか、あるいは面子を潰された形にすることで中国の強硬手段を正当化するためだ。

中国共産党の指導部は、日本の尖閣諸島国有化の方針を受け、その対応を習近平に一任した。
習近平は直ちにスケジュールを全てキャンセルして、尖閣諸島国有化に対応するための準備に入ったわけだ。

一任されたと見る理由は何か。
もし尖閣諸島問題を政治局常務委員による会議で対応決定するならば、習近平のみがスケジュールをキャンセルすることは認められないはずだ。
アメリカのクリントン国務長官との会見もあり、党員の義務に縛られる以上好き勝手にスケジュールは変更できない。
それができるのは指導部内でスケジュールのキャンセルが必要なものと認められたからだ。
他の常務委員にはスケジュールのキャンセルなどという話は出ていないから、尖閣諸島問題は習近平が主として対応する問題となる。

また胡錦濤は野田総理と話を交わして、わざわざ面子を潰されている。
スケジュールが確定している事項を本気でない批判で変更するなど、日本の政治システムはしない。
中国政府もそのぐらいはわかっているだろう。
尖閣諸島問題に胡錦濤が深く関わっているならば、話を交わすことなどしなかったはずだ。
日本を説得できなかった点で非難の対象になる危険性がある。
それなのに実行したのは、対日政策を習近平に一任したので、責任はそちらが取ることで合意しているからではないか。

このように書いてくると、習近平は既に最高指導者として行動しているようにも見える。
実際「対日強硬策、習近平氏が主導 韓国大統領の竹島上陸など機に一変」によると下記のように、習近平の下で対日強硬路線に転換したそうだ。
習近平が消息不明になってから党中央弁公庁主任が変わっているのは、それを裏付けている。

引用開始

日本政府による沖縄県・尖閣諸島の国有化を受け、中国で一連の強硬な対抗策を主導しているのは、胡錦濤国家主席ではなく、中国共産党の次期総書記に内定している習近平国家副主席であることが分かった。胡政権による対日協調路線が中国の国益を損なったとして、実質上否定された形。中国政府の今後の対日政策は、習氏主導の下で、強硬路線に全面転換しそうだ。

(中略)

 9月初めには、胡主席を支えてきた腹心の令計画氏が、政権の大番頭役である党中央弁公庁主任のポストを外され、習氏の青年期の親友、栗戦書氏が就任。政策の策定・調整の主導権が習氏グループ側に移った。
引用終了

ある意味先行して指導者が交代したと解釈できる。

ただ必ずしもそうではない。
ある特定の政策に深くコミットすることは失敗した場合責任を取らされる。
次期最高指導者として内定しているならば、ある意味危険な行為だ。
逆にだからこそ反対派は承認しているのだろう。

そもそもの発端は日本の尖閣諸島国有化だろうが、中国外務省はそれをスルーして黙認しようとした。
それに対して反対派が怒り、日本に譲歩を迫るよう主張した。
けれども日本は譲歩しようがないと外務省側が言い張るので、自分たちに外交交渉をやらせろと対日政策を牛耳ったのが習近平だろう。
問題なのは、この交渉の勝利条件が何かということだ。
現状は中国にとって勝利なのだろうか。
日本から目立った譲歩がない中、経済的に圧迫を加えただけしかない。
軍部は喜ぶかも知れないが、共産党全体ではどうなのか。
中国は経済的に成長路線からずれ始めた。
中所得国の罠という不安材料もある。

景気低迷は国民に不満を持たせ、政策論争を生み、必然的に権力闘争が激しくなる。
権力交替のルールがない社会ではより激しい。
11月8日に中国共産党中央大会が開催されるが、事前予測通りになるかは微妙かもしれない。
本格的動乱の幕開けも予想できる。

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502 続:習近平が消息不明だった理由は?

習近平が消息不明だった理由について全然別の説を見たので、反論してみる。 もちろん前回書いた私の意見は推測なので、事実が本当にこうだというなら反論に意味はないのだが、それでも納得できないことを書きつらねてみる。 まず、習近平が消息不明なのは胡錦濤に自己批判を迫られ活動禁

503 続:胡錦濤の面子が潰れたから反日デモが起こったというのは、中国の宣伝工作だ

前回の記事では、中国側が日本の外交を誤解したというリンクを三つ挙げたが、他にも二つ見つけた。 ・民主党政府が理解していない「中国が怒る三つの理由」 ・

505 続々:習近平が消息不明だった理由は?

文藝春秋の最新号(2012年11月号)に"習近平が消えた2週間「深刻な病状」"という富坂聰氏の記事が載った。 前に書いた記事(習近平が消息不明だった理由は?)で習近平の消息不明だった理由は病気ではない説を唱えているので、興味津々で読んでみた。 しかし、病気という説は述べられているが信憑性がどのくらいあるのかよくわからない。 次期最高指導者が病気であり、それを中国が秘匿しているなら

524 中国に関する記事の、間違いの修正と追加情報

間違いを書いていたので修正。 「続:胡錦濤の面子が潰れたから反日デモが起こったというのは、中国の宣伝工作だ」の中で、次のように書いていた。 引用開始 党弁公庁主任は党人事の要だろう。 引用終了 中央弁公庁主任は人事の仕事ではなくて、日本でいう秘書みたいな仕事だった。 党最高指導部のスケジュール管理、機密文書管理、私生活のサポート、護衛任務などを担当している。