異をとなえん |

軍はなぜ暴走するのか? - 平和型国家論(その7)

2012.09.24 Mon

21:03:42

指導者の能力について書くつもりと前回述べたが、また変えてしまった。
戦争型国家では権力が集中することは述べたが、平和型国家ではなぜ権力が分散するかについてはあまり述べていなかった。
その部分について先に書いておく。

戦争型、平和型という区別より、まず戦争の危機が目前に迫り、自国の安全保障が危険にさらされれば、どうしても権力は1個人に集中し、国家は統一された活動を取ることを迫られる。
しかし、安全保障上の危険性が弱ければ、国家の各部分は各部分なりの利害を持ち、各部分勝手に行動していこうとする。
上からの都合で自分たちの利益が制約されることを嫌うわけだ。
前回述べた中国の意思決定システムの不統一は、そういう性質が多分に出ている。
この性質は大日本帝国の意思決定システムに似ている。

一番似ているのは、軍の暴走だ。
軍隊は戦争が仕事だ。
だから組織の維持拡大を最大の目的とするならば、戦争の危険性を訴え、そのために必要な軍事力の整備を強く要求する。
帝国海軍はアメリカとの戦いに備えてアメリカ海軍の7割の規模を持った艦船の建造を要求し、帝国陸軍はソ連との戦争に備え機甲部隊の整備や航空兵力を要求する。
現在の中国であるならば、中国人民解放軍は日本との戦争に備え尖閣諸島での戦闘で勝てるだけの艦隊の整備を要求するわけだ。

それらの要求を貫徹するためには、平和な状態があっては望ましくない。
仮想敵国との関係が悪く、一触即発な状況が生まれるように、外交関係での強硬姿勢を取るよう望む。
もちろん多くの場合戦争は、自国の国益にとって害が大きい。
だから、国家の指導部の意思が統一されているならば、少なくとも外交上は柔軟に行動しようとするのだが、権力が分散されていると強硬派と宥和派の対立が表面化してしまう。
戦前の日本では日中戦争の時、軍は戦線の拡大を望み、外務省は世界から孤立化することを恐れて戦争を止めたがった。
けれども実際に戦いが始まってしまうと、将兵の犠牲を減らすためと言えば国家はどうしても軍を支援しがちだ。
権力が分散し、戦時体制でない国家ほど好戦的になるという変な逆転状態が生まれる。

現在の中国でも、軍を中心とした勢力は尖閣諸島に対して強硬姿勢を取りたがっている。
日本に勝つための軍事力ということで予算が落ちるからだ。
日本の尖閣諸島国有化は石原都知事による購入を阻止するために仕方がないものだ。
阻止しなければ、都が購入して尖閣諸島に上陸し、なんらかの設備を作るだろうからだ。
それぐらいならば国が購入した方が、中国との紛争を回避できる。
都への売却を阻止するのは、私有財産の自由な売買が保証されている日本では非常に難しい。
この理屈は中国の外務省では理解できていると思う。
けれども、中国の軍部は理解できない。
いや理解しても、理解できないふりをして、強硬姿勢を取ったほうが自分たちの利益だと考えている。
だから、日本の総理大臣が国有化は日中和平のためだと主張をすれば、中国国民は理解してデモをやめるなどという考えは信じられない。
尖閣諸島の国有化をある意味を認めざるを得ないならば、デモを防ぐために政府は積極的に広報しただろう。
尖閣諸島の国有化を認めない勢力が指導部の中にいて、それが宥和派を押さえ込んでいるから、デモが起きるのだ。

そして、軍は要求した軍事力を整備すれば、それを国民に対して保証しなければならなくなる。
尖閣諸島を日本から守ることを理由として軍事力を整備したならば、日本が尖閣諸島で中国から勝手に行動すれば、中国軍は軍事力を用いてもそれを止めざるを得ない。
旧日本も海軍はアメリカに対抗するために艦隊を整備した。
アメリカが日本の拡大を阻止しようと、石油禁輸等で圧力をかけてきたとき、海軍はそれを阻止するために軍事力を整備してきたので反対が非常に困難になる。
結果太平洋戦争だ。

なんかどこの国でも、権力が分散されている主張になったかも知れないが、中国はもう戦争をずいぶんしていないことを考慮に入れるべきだ。
中国はたぶん米中国交正常化後は安全保障上の脅威がほとんどなくなった。
戦闘行動も1979年の中越戦争を最後にして行っていない。
それが権力の分散を促しているのだろう。
他の国の例としては、イスラエルも中東諸国との戦争が日常だった状態からすると、権力自体の分散は起こっていなくとも、国論は分裂気味になっている。

もっともこの理屈ならば、戦前の日本も満州事変以降はずっと戦争続きだったのだから、権力の集中が行われてもおかしくはなかった。
そうならなかったのは、日本が根本的に平和型国家であって権力の集中をとてつもなく嫌ったからだろう。
主張があいまいになってしまったが、私の言いたいことは安全保障上の危機が続いた国家ほど権力が集中され、安全保障上の危機が解除され平和な状態が続くほど権力が分散されがちになることだ。

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