異をとなえん |

続:ケインズ政策の何が間違っているのか?

2012.08.27 Mon

21:17:13

前回の記事では、ケインズ政策がGDPを成長させ失業率を減少させることが問題だと書いた。
けれども、普通の経済学者は基本的にGDPが成長することを歓迎している。
それではアメリカなどでケインズ政策に反対する経済学者の理由は何だろうか。

ケインズ政策の本質は金持ちから失業者への援助である。
「ロビンソンとフライデーの話」で書いたように、公共事業等で金を回せばとにかくGDPは上昇する。
しかし、本質的に重要なのは国民総効用だ。
政府支出の効用は計算できない。
税金という金を支払って、政府サービスを購入していると解釈もできるが、大きなくくりなので個々の効用は計算できない。
10の支出をすればGDPは10上昇するが、効用は10以上も1もあるだろう。
だから、10の支出をして効用が1ならば、9の部分は実質的に国家から誰かへの援助なのだ。
国家の負担が最終的に誰がなるかわからないのが、ケインズ政策のみそなわけで、多くの人間が得ではないかと錯覚できるところが支持されるゆえんだ。
最終的な負担は未来の金持ちに回すことができる。
今は貧乏人でも未来金持ちになれるならば、一部を負担することはやぶさかでなくなるはずだ。

しかし、格差が固定化するならば、負担する人間が誰かわからないという利点はなくなってしまう。
その本質が如実に現れているのがユーロ圏である。
ギリシャが赤字財政を取りヨーロッパ中央銀行(ECB)がギリシャ国債を購入するというのは、政府が赤字財政を取って需要を拡大し中央銀行が国債を購入してサポートするケインズ政策に他ならない。
しかしその政策はうまくいかない。
ECBによるギリシャ国債の購入に対して、ドイツ政府が強硬に反対しているからである。
ギリシャ国債は永遠に借り換え続ければいいとギリシャ国民が思っていても、それは返せないのと同じことだ。
ギリシャ国債をギリシャ国民が返せないならば、それは結局はギリシャに対する他のユーロ諸国からの援助に他ならなくなってしまう。
ケインズ政策は国家から貧乏人への援助だったが、その国が均質で貧乏人も時が経てば金持ちになることがありうるとみんなが思っているならば、ケインズ政策は家族の中での一時的な援助と受け取れる。
一時的に失業した人に対して家族が援助するのは別に不思議なことではない。
けれども援助する人間をたいして知りもせず、いつか時が経てば金を返してくれるほどの能力もないと思えば、ケインズ政策は完全に金持ちから貧乏人への援助になってしまう。
ユーロ圏の場合はドイツからギリシャへの援助だ。
ドイツが納得できる限界がケインズ政策で発動できる支出の限界になってしまう。

アメリカで財政赤字に対する批判が激しくなっているのも同じことだ。
累積の借金のGDP比がどうこうよりも、アメリカでは所得格差が激しくなり人種的な格差も広がっているから、ケインズ政策を有効に働かせる国内のまとまりが弱くなっているのだ。
国内のまとまりが弱くなれば、ケインズ政策は貧乏人が票の力を利用して金持ちから金をせびり取るようなものになってしまう。
共和党が財政支出の削減に熱心なのは支持層である金持ちから金を取られないようにするためであり、民主党が財政支出の削減に反対なのは支持層である貧乏人に金が回るようにするためだ。
共和党系の経済学者はそれを理論的に補強するために、ケインズ経済学に反対しているのだろう。

日本は累積債務を1000兆円GDP比約200%まで積み上げてきた。
これだけ積み上げられたのは、なんだかんだといいながら日本がやはり同質な国であり、借金の返済を国民全体が負うことで、誰が損をかぶるかと言うこともないからだろう。
公共投資も1990年代は地方中心に投資されたことで都市から不満は高まったけれども、2000年代は小泉改革と共に地方への投資も抑えられ、財政支出は高齢者に対する社会保障が中心となり、誰が得で誰が損ということもあまりなくなった。
日本の貯蓄が高齢者に集中していることを考えれば、高齢者の中だけで金が回っているともいえる。
国債の最終的に負担する人が誰になるかはわからないが、インフレによって支払われるならば今金融資産を大量に持っている人とその子孫になる。
消費税という形で負担するとしても、使うためには資産を持っていなくてはいけないから、やはり今の高齢者が負担するのと同じだ。
高齢者の中だけで回っているからこそ、ここまで国債を積み上げられてきたのだと思う。

まとめると、アメリカの経済学者がケインズ政策に反対する最大の理由は金持ちが貧乏人に対する援助を嫌がっているからだ。
テーパーティー運動がアメリカで強力に広まっているのも、白人裕福層が黒人やヒスパニックに対して支援したくないからだ。
アメリカの国としての分裂がケインズ政策の限界になりつつある。

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