異をとなえん |

円高と日本の国力は関係ないのか? - 交易条件の悪化は基本的に良いニュースである(その3)

2012.07.25 Wed

20:54:31

「弱い日本の強い円」の結論は、円高は日本が強いからではなく購買力平価が上昇したからに過ぎないだった。

つまり日本がデフレで恒常的に物価が下がっているから、円高になっているという主張だ。
その理屈は納得できるのだが、国力とは関係ないという主張が納得できなかった。
その理由がこの前の「交易条件の悪化は良いニュースである」でわかった気がした。

結論から言うと、円高は日本が強いからではないという主張は間違いだと思う。
円高はやはり日本が強くなったからだ。
この場合の強いというのは、日本のGDPが他の国より上昇したとかではない。
日本の生産性が他の国より上昇したという意味だ。
そして国力というのは最終的にその国の生産性に帰着するものだ。

ある国がデフレで、その貿易相手国のインフレ率が0%以上ならば、交易条件はデフレの国で悪化することになる。
牛1頭を100万円で輸入し、自動車1台を100万円で輸出していたとき、デフレで自動車の価格が10%引きになれば、自動車1台は90万円で輸出することになるからだ。
つまり、デフレの国は交易条件が常に悪化していくわけだから、実質賃金が維持されている限り、生産性の進歩は貿易相手国より常に高くなっているはずだ。

それでは、なぜデフレだと日本の生産性は上昇しているといえるのだろうか。
デフレが単なる通貨現象であって、賃金が10%安くなったら物価も10%安くなる、というのだったら、確かに生産性は変わらないだろう。
その場合、為替相場もその割合に応じて変化すれば、交易条件も変わらない。
しかし、人間は賃金が下がることを嫌うから、なかなか物価に合わせて賃金が下がることを認めない。
実際日本では賃金も下がり始めているが、物価の低下には追いついていない。
だから実質賃金は上昇している。

デフレ状況であっても、耐久消費財のような生産性が上がりやすい物は価格が下がりやすく、サービス業のような生産要素は賃金がほとんどの場合のサービスの価格はあまり下がらない。
維持される家計の実質的な購買力の2ページ目の図表3を見ると、耐久消費財の価格が名目で半減していることがよくわかる。
つまり、デフレは耐久消費財の価格の下落という形で現れているのだ。
耐久消費財の価格の下落は他の条件が変わらなければ、生産性が上昇したからに他ならない。
一人の労働者が作る財が増えたのだ。
よって、デフレ=生産性の上昇となるわけだ。
そして、耐久消費財は貿易財の主たるものであり、その価格の下落は交易条件を悪化させることになる。
デフレ=生産性の上昇=交易条件の悪化だ。

もっとも、この結論が正しいとしてもいろいろ疑問が出てくる。
なぜ日本の生産性は向上しているのに、生活はそれほど良くならないのかとか。
あるいは、交易条件が悪化しているという点では韓国も一緒なのに、韓国がインフレなのはなぜだろうかだ。
さらに本質的に生産性が高くなることは、国力が強くなったと考えていいかという問題もある。
それらの点については次の記事で述べたい。

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478 生産性が向上しているのになぜ生活は良くならないのか? - 交易条件の悪化は基本的に良いニュースである(その4)

昨日の記事では疑問点として、日本の生産性は向上しているのに生活がそれほど良くなっていないことを挙げた。 この理由は何だろう。 まず、交易条件が悪化していることだ。 いきなり、今まで述べてきたことを否定しているようだが、交易条件が悪化していることが生産性の伸びをあらわしていることは正しいけれども、生産性が伸びたことによる利益をどう分配しているかを示してはいない。 日本の交易条