異をとなえん |

続:交易条件の悪化は基本的に良いニュースである

2012.07.19 Thu

20:50:37

前回、交易条件の悪化は良いと決め付けたが、厳密に考えていくと難しい部分もある。
たとえば、原油価格が値上がりすれば産油国の交易条件はよくなってゆく。
原油がより高く売れるわけだから、国民所得は増えてゆくだろう。
これは基本的にその国にとっていい話だ。
ただ生産性の上昇とかは関係ない。
資源自体が希少性によって価値が高くなったことを示している。
だから、人類全体にとっては原油価格の上昇によって、生活水準は落ちることになる。
原油価格がとてつもなく上昇して、私用での車の運転ができなくなるような状況になれば明らかなことだろう。
原油価格の上昇は産油国にはうれしいことであっても、世界全体の人間にはうれしいことではなくなる。

逆のケースとして、原材料の生産が過剰になって価格が下落する場合もある。
その場合は交易条件が悪化することになる。
世界経済全体として見れば、より安く原材料が入手できるわけだから、人類全体の効用は増加していることになる。

原油以外の原材料を考えて見よう。
同じように単品の原材料を輸出している国家があるとする。
原油みたいに資源制約から価格が上昇しているケースは珍しくて、どちらかというと代替品が開発されて価格が下落しているケースが多い。
その場合、生産性が上昇せずに価格が下がるならば、賃金が下落しているのと同じだ。
国民所得自体が減少していく。
アフリカでは一人当たり国民総生産が減少している国が少なくない。
そういう国は基本的に生産性が上昇していないのに交易条件が悪化しているからだ。
ただ、代替品によって価格が下がっているということは、その資源を人類としてはより安く手に入れられるようになったことを示している。
つまり人類全体での効用は増加しているわけだ。

交易条件の悪化はそういうわけで、世界経済全体にとっては良いことだ。
もっとも交易条件が悪化している国があれば、良くなっている国もあるはずだ。
けれども交易条件が主体的に良くなることはありえない。
自然条件を除けば、生産性は基本的に上昇するだけだ。
だから、生産性の上昇している国の交易条件が悪化することによって、世界全体の所得が増加しているわけだ。
交易条件の悪化が良いこととはそういう意味だ。

日本は生産性が上昇していることで人類の富を増加させ、交易条件が悪化していることで、世界にその富を分け与えている。
実質賃金があまり上昇していないことに釈然としないものは感じるが、人類全体の所得の向上には貢献している。
いつかきっとその努力が報われることもある。

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