異をとなえん |

交易条件の悪化は基本的に良いニュースである

2012.07.18 Wed

21:05:38

日本の交易条件の悪化が続いている。
交易条件というのは、輸出物価指数を輸入物価指数で割ったもので、下がっていくと悪化していることになる。
つまり、牛1頭100万円で輸入し、車1台100万円で輸出していれば、100/100=1で交易条件は1になる。
それが、牛1頭100万円で輸入し、車1台50万円で輸出するようになると、50/100=0.5で交易条件が下がり悪化したことになる。
もちろん実際の輸出入は単品ではないから、複数の品目を取り上げて平均を取って算出するわけだ。

日本ではこれが恒常的に悪化し続けている。
原油価格高騰に円高が有効・・・でしょう。交易条件について再考も。の記事のグラフを見ると、1994年に140だったものが、今や70ぐらいになっている。
上で述べたように、これは前と同じものを輸出していたとすると、2倍の量を輸出してようやく輸入量は同じになるということだ。
なんというか、非常に厳しい話だ。

アイヌの話を思い出す。
アイヌと日本人が取引をするのだが、アイヌは数を数えられない。
そこで持っていった魚の数を日本人がごまかしてしまうという話だ。
10匹で1両を支払っていたのが、11匹で1両しか支払わなくなってしまう。
アイヌが数を数えられないのは信じられないので本当かどうかわからない話だけど、日本人のあくどさが強調されて妙に印象に残っている。
交易条件の悪化も同じような話にうつる。
日本のアイヌと同じなら世界から搾取されているわけだ。

実際交易条件が顕著に悪化しているのは日本と韓国で、輸出が増えているドイツなどは、輸入価格の上昇に合わせて、輸出価格を上昇しているので交易条件は悪化していない。

日本の交易条件の悪化の理由の一つは原油を始めとした原材料価格の上昇で、円高が一部緩和しているのは事実なのだけれども、おぎないきれない。
そして、輸出している製品の価格が継続的に下落している。
韓国と同じように交易条件が悪化しているのは、韓国の輸出との競合が激しくて、その競争に勝つためにどうしても価格を下げざるを得ないからだ。
造船、半導体、テレビ、自動車を考えあわせると、韓国と日本がともに交易条件が悪化しているのは当然と思える。

それでは交易条件の悪化がなぜ基本的にはいい話なのだろうか。
それは交易条件が悪化しているのは、生産性が上昇しているからだ。
牛1頭100万円で輸入し、車1台100万円で輸出している例を使うならば、生産性が同じで賃金が同じならば、交易条件が変わることはない。
交易条件が変わるのは生産性か賃金が変化したからだ。
車1台10人で作っていたのを5人で作れるようになれば、牛1頭100万円で輸入し、車1台50万円で輸出しても採算が合っていることになる。
日本の交易条件が悪化し続けているのは、明らかに輸出産業の生産性がここ十数年他の国に比べて顕著に上昇しているからだ。
2000年代の製造業の生産性上昇率が他の国より高いという結果は、ここからも見える。
ただ、名目賃金は下がっている。
実質賃金は少しだけど上昇しているので、他の国から搾取されているとまでは言えないけど、厳しい生活が続いているのは事実だ。

生産性が上昇しても賃金が上がらなければ、良いニュースとはいえない話もあると思う。
交易条件が悪化し続けているのは、生産性が上がっても賃金が上昇していないので、製品価格が下がり続けているからだ。

それらを含めた分析はよくできていないけど、とにかく生産性が上がっていくのは、よりよい生活には絶対に必要だ。
そういう意味で交易条件の悪化は良いニュースだと解釈したい。

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477 円高と日本の国力は関係ないのか? - 交易条件の悪化は基本的に良いニュースである(その3)

「弱い日本の強い円」の結論は、円高は日本が強いからではなく購買力平価が上昇したからに過ぎないだった。 つまり日本がデフレで恒常的に物価が下がっているから、円高になっているという主張だ。 その理屈は納得できるのだが、国力とは関係ないという主張が納得できなかった。 その理由がこの前の