異をとなえん |

アメリカのケインズ政策は永久には続けられない

2012.07.09 Mon

21:09:33

アメリカの景気は思っているよりもいい。
前にも書いたように、巨額な財政赤字の需要拡大効果が大きい。
しかし、なぜアメリカは無限とも思えるような赤字を続けることができるのだろうか。
経常収支黒字国がその黒字の範囲内で財政赤字を出すならば、資金をまかなうことはできる。
けれどもアメリカは経常収支赤字国だから、単純に考えるならば資金の返済を不安視して、外国から金は入ってこなくなるはずだ。
普通の答えはドルが基軸通貨だからだが、基軸通貨だとなぜ金が入ってくるのだ。
需要が少なくなれば、基軸通貨であろうがなかろうが、価格は下がる。
実際ドルの価値はずっと下がり続けている。
そして、資金の流入のみがドルの価値を支え続けているのであれば、一時的に流入が止まればドル価格は下落し、それはさらなる流入の現象を生んで、下落スパイラルに入っていく。
だがドルは無限に下落はしていない。

ドル価値が無限に下落していないのは、基軸通貨国としての貨幣需要だ。
一番単純な需要は世界各国の貿易がドル建てになっていることの輸出金融需要だ。
貿易する場合、輸出する企業は荷物を船積みした時点で銀行から代金を受け取る。
銀行はその荷を輸入する企業が受領した時点でその金を取り戻す。
当然のことながら、その二つの代金には差があり、それが銀行の儲けとなる。
その金額はドル建てである以上、銀行はその金額分ドル資金を保有していなければならない。
つまり、アメリカに対して銀行はその分貸しをしていることになる。
貿易が拡大し続けるならば、金額も増大し続ける。
アメリカが経常収支の赤字を続けることができるのは、まさにその分の金額だ。
他の需要として、各国政府の外貨準備とか、ドルの闇資金とかもあるけれど、それらも含めて世界全体が成長することによって生じる需要がドルの需要になっている。
金融危機前までは、それでうまく回っていた。

金融危機後、アメリカは財政赤字を大量に出しながら、アメリカ経済を成長軌道に戻している。
世界経済全体が需要不足に陥りつつあるので、資金は余っているから、アメリカ国債は金利が下がり、幾らでも政府支出を拡大できる。
その金が回りまわって輸入を増やしている。
しかし、本当にこれでうまくいくのだろうか。
ケインズ政策が成功するのは、それによって得た成長を、国が享受できることだ。
世界経済全体をアメリカの財政支出が支えたとしても、その負担をアメリカだけがかぶるなら最終的に破綻するだろう。
世界全体の成長をアメリカが利益として取れなければ、システムは維持できない。

日本の場合のケインズ政策は日本が最終的に成長したとしたら、巨額の財政赤字をそれによって埋めることができる。
でもアメリカの場合、巨額の財政赤字が全て輸入に回るとしたら、GDPは成長しない。
世界全体では成長したとしても、それがアメリカ以外の成長に回るとしたら、最終的な財政赤字の負担は耐え難いものとなるだろう。

ユーロ圏と似た感じもある。
ユーロ圏では巨額の財政赤字を作って、需要を増大させたとしても、その財政赤字を返済できるかはっきりしない。
だから、財政政策を発動できなくなっている。
ケインズ政策を発動したとしても、最終的な負担先が確定していないといえる。

アメリカの場合はドルという通貨の発行権をアメリカが握っている以上、ケインズ政策の発動自体には問題がない。
けれども不況から抜け出し、通常の成長軌道に戻ったとき、極端な低金利の資金は調達できなくなる。
当然のことながら、上昇した金利分も含めて返済しなければいけないが、その負担はアメリカ国民にかかる。
アメリカという国がケインズ政策によって成長しているならば問題はないが、成長分が新興国に移転しているならばアメリカは国債の返済が負担になるだろう。

生産力が上昇していないのに、借金の返済を求められるならば、生活費を削るしかない。
今のギリシャと同じだ。
アメリカはギリシャと同じように、国債でGDPの10%近い金額を外国から呼び込み、その資金で輸入する物資を買って生活している。
借金が巨額である以上返済は塗炭の苦しみだろう。
石油危機後のアメリカ経済はこの状況に近かった。
金融引き締め政策によって

アメリカのもう一つの道はインフレによる返済だ。
今回はこちらになる可能性も十分ある。
ただ、インフレがあからさまになれば諸外国はアメリカに資金を投入しなくなる。
ドルの基軸通貨の地位も危なくなるだろう。

世界全体の成長がドル需要を生み出していた。
逆に言うと世界経済が成長しなければ、ドル需要は増えない。
減少する危険性だってある。
ドル需要が減少するというのは、アメリカに資金が入らなくなることだ。
それは経済に変調をもたらす。

今世界経済は少しおかしくなっている。
ユーロ圏と中国が成長軌道からはずれつつある。
アメリカの成長が世界経済の成長に連動しているならば、いずれその影響は出てくるだろう。

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