異をとなえん |

ドイツは南欧諸国を助けられない - ギリシャ危機の本質(その6)

2012.07.02 Mon

20:48:00

前回の話の続きをする。
ドイツが南欧諸国を援助するのは認めたとしても、それだけでは解決にならない理由だ。

ドイツが南欧諸国を援助すれば問題は解決するという主張がある。
ドイツはユーロ圏が成立したことによって得をしている。
ユーロが成立していなかったならば、マルク高で輸出不振に陥り、経済は苦境に陥るだろう。
だから南欧諸国を援助するのは当然だという主張だ。
この考え方を認めたとしても、幾らなんでも無条件に請求書を回されて支払うわけにはいかない。
少なくとも幾らまで援助するかは決めておく必要がある。

夕張市の地方債は国が返済を保証している。
その替わりに、夕張市は地方債の発行額に対して国から制約を課されているし、返済するのが難しくなった場合には予算自体も国から監視される。
ドイツと南欧諸国の関係も同じでなくては、おかしいはずだ。
援助はイコール、監視と制約を意味する。

そしてドイツは無条件に南欧諸国を援助するゆとりがあるだろうか。
ユーロ圏ではどの国も通貨の発行権を持っていない。
通貨の発行権を持っているECBは、通貨価値の維持のみを目的として通貨を供給している。
そうするとドイツも限度を越えて南欧諸国に資金を援助すれば、当然財政危機が発生する。
ドイツは経常収支の黒字国なので、黒字分の金額が銀行にほとんどたまっている。
銀行は自国の国債を好む傾向があるから、経常収支の黒字額までドイツも国債発行ができるかもしれない。
しかし、これは危険な道だ。
経常黒字による資金余剰はドイツ政府の所有物ではなく、ドイツ国全体の所有物だ。
それを最終的にドイツ政府が税金として、取り立てることができるかははっきりしない。
インフレによって自動的に取り立てるシステムがない以上、もっと少ない金額が上限となるだろう。

ユーロ圏は通貨の発行に制約があるので金本位制に近いシステムとなっている。
そのため無制限に流動性を供給できない。
つまり流動性の危機、銀行や政府が借金を払えない状態になった場合に完全にそれを防ぐ方法がないのだ。
銀行の流動性の危機の場合はECBが無条件に流動性を供給するみたいではあるが、国家の場合は違うことになっている。

そうすると無条件に資金を援助するためには、少なくとも通貨の発行権を支配できなければならない。
ドイツが握るか、EU全体のシステムで握るかだ。
ドイツが握るというのはある意味正しい選択に思える。
その場合ECBは実質的にドイツ中央銀行となり、ドイツ政府がユーロ圏の中央政府になる。
ただこれは他のユーロ圏の国々が認めないだろう。
ドイツの特権が大きすぎるわけだ。
自分たちの国は自由に借金できないのに、ドイツだけは制限なく借金できるのを認めることができないのは当然だろう。
また、ドイツ自身も嫌がる。
ナチスのようなヨーロッパ征服の再来と見られることは、避けたいわけだ。

選択すべき解はユーロ圏全体が通貨の発行権を持つことだ。
ECBが暗黙の保証をユーロ共同債に持つという意味だ。
そうすればケインズ政策を自由に発動できる。
財政危機のために予算を拡大できない国も、それを解消できる。
そのためには、ユーロ圏全体で財政支出する方法を議論して決定しなければならない。
幾らなんでも、国ごとに好き勝手にやるわけにはいかない。
それはつまり財政統合になる。
結局ドイツの主張通り、ユーロ共同債の発行には財政同盟が必要だというのは明らかに正しいのではないだろうか。

しかし「財政同盟には即効性がない。何年もかかるのでは現在の危機に対応できない。」という批判がある。
イギリスの「Economist」や「Financial Times」はそう声高に主張している。
ドイツが負担をさぼっているからいけないというわけだ。
でもドイツが資金援助をするのに、「黙って金を貸せ」というだけで借金できるのはおかしい。
南欧諸国は担保を提出するか、それができなければ返済計画を立て、それに従って実行する必要がある。
実際ギリシャ、アイルランド、ポルトガルなどは、EUに支援を要求し、財政再建計画をたてて援助をもらっている。
スペインやイタリアもEUに正式に資金要請をして、返済計画を立てることでドイツに資金援助をしてもらえばいい。
それで基本的には問題解決だ。

ただし、前述べたようにドイツの負担能力にも限界がある。
IMFからの援助も期待できるが、それ以上の資金が必要ならばどうするか。
金がない以上デフォルトすればいい。
全額払わないではなくて、返済条件を後ずらしにすればなんとかなるのではないか。

英米のジャーナリズムが批判するのはデフォルトすれば、世界恐慌の危険性があることだろう。
確かにその危険性はあるかもしれない。
でもその危険性は世界全体で負担すべきことだ。
デフォルトをどうしても避けたいならば、ドイツの資金に制約がある以上、世界全体で負担するしかない。

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