異をとなえん |

続:なぜ中国は戦前の日本と似ているのか?

2012.10.25 Thu

21:35:34

「政権移行期の中国を読む」を読んで、中国の権力が段々と分権化されつつあり、戦前の日本にさらに近づいている印象を受けた。
その理由について少し考えて見た。

まず、中国共産党の動脈硬化が進行しつつあることに注目する。

引用開始

* 25人の党中央政治局は不定期の会議を開くのに対し、常務委員会は7日か10日ごとに開催されている。

* 胡錦濤と温家宝が対外政策決定の中核である。他の政治局常務委員も、とかく議論の多い問題、日本、北朝鮮、ミャンマー、米国などと関係する問題で、異なる意見を述べることがある。北朝鮮問題が最も意見が割れる問題と言われている。

* 重大な対外政策決定のほとんどは党外事指導小組で行われ、政治局常務委員会はそれを正式に承認するだけである。常務委員は対外政策問題の詳細には不慣れであり、指導小組の対外政策専門家の経験に依存している。

* ここ10年来、外交部の力は衰退した。国賓の外国訪問などで、楊部長の儀典上の順位は5番目か6番目になる。2009年コペンハーゲンで行われたCOP15では、温家宝首相が外交部の立場(他国との妥協)を支持したとき、国家発展委員会の上級委員たちが反対した。それが西側で「コペンハーゲンの失敗」と考えられる結果になった。

* 中国の政策決定には「合意形成」(満場一致)を必要とする。合意の形成に失敗すると、しばしば決定を延期することで合意する。官僚は将来の妥協を容易にするために曖昧な言葉を使う。胡錦濤すら十分に調和のとれた「合意」を追求せねばならない。

* 個人的関係は重要であり、公職を去った後にも継続される。江沢民にはいまも政治局のすべての文書が届けられ、ときには文書にコメントを記すことがある。
引用終了

中国の最高意思決定機関である常務委員会が7日か10日ごとに開催されていることは、対外関係の緊急事態には間に合わないことを意味する。
党外事指導小組が基本的に状況対応するのだろうけれど、最終承認が取れなければどうしても断固たる行動は取りづらい。
あいまいな先送りに走りがちだろう。
それは、「合意の形成に失敗すると、しばしば決定を延期することで合意する。」という待ちの姿勢をあらゆる方面で助長することになる。
最高意志決定機関の決断が遅くても、必要な決定はある。
たぶん、常務委員が自分の担当分野については、好き勝手に決定できる形で動いていく。
そうすると、中央の調整が動きにくければ、個々の領域については他の常務委員もなかなか介入できない。

たとえば、現在の常務委員で周永康は中国共産党中央政法委員会書記として、検察、警察、裁判所を束ねていて絶大な権力を振るっていると見られる。
全体主義国家においては物凄く強力な権力に見えるが、現在のシステムだとそれを止めにくい。
常務委員の選出が5年ごとの党大会で他の長老も含めて決定される以上、よほどのことがなければ、解任はされない。
担当分野自体も動かせないのだと思う。
勝手に動かせば、その選出をした長老たちの権力争いの否定だからだ。
動かすためには再度党大会による争いをえなければいけない。
もっとも政法委員会書記の権限はあまりにも強大すぎて個人に固定されるのは問題ありなのだろう。
次からは常務委員から外して、必要ならば解任できる地位に格下げされるらしい。

また、江沢民が総書記に任命されたときの党大会では、胡錦濤も次期総書記を前提として常務委員に抜擢された。
これは最高実力者であったトウ小平の力に誰も逆らえなかったからだ。
しかし、胡錦濤が総書記に任命された党大会では、常務委員の中に次期総書記はいない。
権力が分散されつつあるから、10年も先の人事を決められないのだ。
5年前の党大会では習近平と李克強を次期最高指導者含みに抜擢しているけれど、二人いること自体が権力が分散しつつあることを物語っている。
そして、次期党大会の常務委員では、下馬評に上がっていて最有力と思われた李源潮と汪洋が外れつつあるみたいだ。
汪洋はゴシップ記事の中では確実に外れるみたいだし、李源潮も微妙らしい。
なぜ二人が外れるのか。
共青団系列で胡錦濤の力が衰えているからという理由もあるだろうけれど、他の常務委員に比べて年が若いというのが最大の理由に思える。
意志決定が遅く、権力争いが盛んなので、昇進にとって年功の重要性が増しているのだ。
長老たちの年寄りに一度やらせてやれという意見に逆らえなくなっている。

つまり、中国共産党は着実に動脈硬化を起こしつつあるのだ。
ソ連共産党の末期のように、権力が分化され最高幹部が老化していく。
ソ連共産党は最高幹部の定年制がなかったので、猛烈に老化が進んだ。
中国共産党常務委員は定年によって、老化が一応制限されているが、長老たちが情報をもらい、人事に介入しているようではそれもたかが知れている。
実質的な最高指導部の年齢は上がっている。
権力の分散、老化は、全体的な判断を持って行動することをますます難しくさせるだろう。
外交関係が最大の犠牲となる。
他の共産党個々の組織が自分たちの利益を強く主張し、外務部がそれを抑えきれない。
中国が隣国のほとんどにけんかを売っているように見えるのはそれが理由だ。

中国で権力の分化が進んでいるのは、戦前の日本に似た感じに見える。
しかし、前に主張した覇権交替論では特に権力分化が進む理由はなかった。
それなのに権力分化が同じように進むのは、なんらかの意味があるのではないか。
それが本記事の基本的な疑問だったが、そこまでたどりつかなかった。

この項続く。
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