異をとなえん |

ユーロ共同債もECBの国債買取も解決方法にならない - ギリシャ危機の本質(その5)

2012.06.30 Sat

20:57:03

ドイツのリーダーシップに対する批判は強い。
ドイツが緊縮財政一本やりで、経済成長を軽視しているから、EUは危機に瀕しているというわけだ。
ユーロ共同債を認めるか、ECBが国債を積極的に購入しろと主張している。

実際単にドイツが積極的な財政政策に転換するだけでは十分ではなくなっている。
国債の金利が急騰し、資金繰りに余裕がなくなっているスペインやイタリアに即効性のある対策が求められている。

けれども、ユーロ共同債やECBが国債を積極的に購入することが認められるだろうか。
それらはどの国でも好き勝手に財政赤字を出していい権利になってしまう。

ECBが国債を買い続ければ、最終的にはインフレにいたる。
インフレはユーロを持っている全ての国が分担することだ。
特定の国の好き勝手な消費の後始末を、他の国が認めるわけがない。

ユーロ共同債も同じことだ。
ユーロはECBが管理するならばインフレにはならないかもしれない。
でも各国が好き勝手にユーロ共同債を発行し続ければ、ある意味無限に増え続けてしまうだろう。
実際ユーロ成立時、金利が大幅に低下しドイツと同じようになった各国は国債を大量に発行するようになった。
今回もユーロ共同債ができれば、金利は下がるわけだから、なんの制約もなければ同じように、支出は膨張していくことになるだろう。

結局なんらかの制約がなければ、ただ乗りしようとする誘惑を防ぐのは難しい。
そうすると必要なのは財政同盟という話になる。
各国の支出を監督して、制限を加えるわけだ。
ドイツはそう主張している。
南欧諸国も賛成してよかろうと思うのだが、あまり進んでいない。
銀行同盟を主張するにしても、財政同盟と同時進行でいいはずである。
それを拒否するのは、ドイツから見ると南欧諸国は財政支出を制限する気がないと同じだ。

そもそも危機に陥った国は、EUに支援要請をすれば助けにきてくれる。
ギリシャを除けば債務も保証された。
IMFからの支援もあるのだから、これで何が問題かという気もする。

なんか、まとまらなくなってしまった。
この続きは次回に。
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「恋愛勇者」を応援したい

2012.06.29 Fri

20:43:04

cilliaさんの歌を毎日のように聞いている。
最近のお気に入りはこれだ。


【波音リツキレ音源】 恋愛勇者 「MV」 【UTAUカバー】


歌詞のノリがよくて、ほれっぽい女性(男性?)の恋愛を応援している。
でもcilliaさんの他の歌に比べて再生数があまり高くない。
今7091だ。
最近の波音リツキレ音源を使っている歌が軒並み1万以上いっているのに比べると少ない。
オリジナルがヒットしている分だけ注目が集まらないという理由なんだろうか。
どうも理解できない。
理由はよくわからないけど、応援をこめてリンクしてみた。

歌の中で「フラグ作って端から折って」という部分がある。
端をはなと読んでいるのだが、cilliaさんが外国人だから読み間違っているのだと思っていた。
けれどもオリジナルを聞いてみると、オリジナルでもはなと読んでいる。
なまってるのかなと思った。
しかし、端とはなで検索してみると、ちゃんとそういう読みがある。
自分の無知を恥じてしまった。

歌詞の最後は、「世間に負けるな、恋愛勇者」でしめてある。
まったく世間に負けてはいけない。
当人が必死ならば、少なくとも回りにはギャグになるのだ。
年を取って無知であることは恥ずかしいことだが、だからといって表現しなければ賢くなるわけではない。
少しずつでも前進しなければ、なにごともなしえないだろう。
そんな応援歌だと思って聞いている。
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続:消費税増税の経済的影響について

2012.06.28 Thu

20:55:19

前回、消費税増税もタイミングとしてそれほど悪くないかもしれない、という話をした。
もちろん予測なので今後の状況しだいではインフレどころかデフレに逆戻りしている可能性もある。
ユーロ危機に端を発する世界恐慌の可能性はなくなってはいない。
本当に世界恐慌が発生するならば消費税増税は凍結するだろう。
経済条項が入っているので、特別に法案を成立する必要はない。
総理大臣の意思だけで決定できる。
だから、消費税を上げるとき、物価の上昇率は0近辺だろう。
大きなマイナスならば、今述べたように政府が拒否する。
もっとも大きなプラスもない。
国債の金利が極端に低いのは、すぐに物価が上昇しないことを織り込んでいるからだ。
実際まだ急激に需要、つまり国民の消費が増えていく状況にはない。
消費自体は増えているけれど、未来に確信を持てていないからだ。

ケインズ政策というのは、需給ギャップを政府が財政支出で埋めることによって、経済の規模を一定に保つ政策だ。
通常は国債の発行によって支出をまかなうけれど、税金でもいい。
その場合税金による消費の減退でさらに支出を増やす必要があるかも知れないが。
景気が振れることを考慮に入れるならば、景気が良くなっても支出しなくてはいけない予算は税金で、景気が良くなったら支出を止める予算は国債でまかなうのが正しい。
日本の財政支出の公共投資は大幅に減ってきている。
減らし過ぎだという声もある。
防災を重視しなくてはいけない国土の条件を考えれば、ある規模の予算は景気に関係なく支出する必要がある。
そして、最近の歳出の増大の主たる要因は社会保障費の拡大だ。
デフレなのに、その分を引いていない年金などはどうかと思うが、景気の動向と関係なく削減できていない歳出が増加しているのも事実だ。
だとしたら、その分については少なくとも収支の均衡を計っておいた方がいい。

コメントに、物価上昇率には1%近い上方バイアスがあるので、0近辺だったら実際はデフレではないかという意見があった。
これについては上で述べたように、景気と関係なく支出する部分については税金でまかなうのが正しいと思うし、0近辺ならば増税によって景気が大幅に悪化することはないと思う。

もちろん、消費税増税について民主党のやり方には納得がいかない。
リーマンショック以後財政支出は90兆円以上に膨張した。
リーマンショックでGNP10%以上の需要が消失したのだから、カンフル剤的な支出は良しとしよう。
しかし、それから3年以上もたっているのに、財政規模は90兆円を越している。
東日本大震災の復興費用はあるけれども、それは補正予算で支出したのだから、まだ本予算が90兆円以上である理屈にはならない。
実際エコカー補助金など、まだやっている意味があるとは思えない。
今の需要がエコカー補助金による先取り需要なのか、本格的な景気回復による需要なのか区別できない点でも有害だ。
とは言っても、一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移を見るかぎり、今年はかなり落としてはいるんだな。
この膨張した財政支出に対して、何の切込みも入れずに税金でまかなおうとするのは、ムダな支出を固定化するものだ。

もう一つの問題は道義的問題だ。
民主党は消費税の増税をしないと訴えてきた。
少なくとも野田総理はそういってきた。
それを平気でひるがえすというのは人間としてどうかと思う。
経済政策として正しいとかどうかという問題ではないだろう。
本当に消費税増税が必要としても、野田総理は代表に立候補せずに他の人を推すことで政策を実現するチャンスがあったはずだ。
民主党にはそんな人がいないというならば、選挙で政策の変更を行えばいい。

民主党のやり方には納得いかないが、増税のタイミングとしてはそれほど悪くない、というのが私の意見だ。
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消費税増税の経済的影響について

2012.06.27 Wed

20:53:07

消費税増税の経済的影響について書いてなかった気がするので、少し書いておく。

一般的には景気に悪影響を及ぼす、という意見が多いように見える。
価格が上がった分だけ消費を冷やす、というわけだ。

インフレが発生しているけれど削減できる政府支出がない。
その場合には投資とかも多くて、国債の金利も上昇傾向にある。
赤字を垂れ流し続けるとインフレがさらに悪化するので、税収を増加させ、国債の発行を減らすことは正しいだろう。
消費税を増税すると商品の価格が上がるので、消費を減らす効果がある。
インフレ抑止にはその点でも役立つ。

デフレの場合は違う。
投資できない資金が余っているので金利は低い。
政府がいきなり増税しなくてはいけない必然性はない。
支出が変わらない中で、消費税増税によって価格が上がれば、やはり消費を減らす効果があるはずだ。
けれどもデフレ状況というのは、総供給が総需要を上回っている状況なのだから、総需要を減らそうというのは基本的におかしい。

ここらへんが一般的な消費税増税に対する意見だと思う。
私の意見は基本的には一致するのだが、ただ増税のタイミングの難しさを考えると、今もそれほど悪くないのかもしれない。
まずデフレ状況というのが、かなり緩和している。

消費者物価指数の動きの食料及びエネルギーを除く総合を見ると、2007年9月ぐらいの時点にすでに来ている。
プラス圏に浮上する直前にも見える。
2007年9月の場合、食料及びエネルギーを除く総合は0近辺のままだった。
総合は上がっているのだが、最大の理由はエネルギー価格の値上がりだろう。
輸入品の価格が上昇することで日本の景気が冷やされ、コアの物価は上昇しなかった。
私はそう解釈する。
だから、輸入品の価格が上昇しなかったならば、コアの物価はもっと高くなったはずだ。

今原油価格は下落している。
それは景気にいい影響を及ぼすだろうから、コアの物価の上昇をサポートする可能性が強い。
つまりコアの物価は上昇しているが、総合は変わらないという理想的な状況の可能性もある。

消費税増税は2014年なのだから、実はちょうどいい時期になる可能性もある。
なんか前に言っていることと違うという意見もあるだろうけど、その点も含めてもう少し書くつもりだったが、時間がないので次に延ばす。
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消費税増税法案の衆議院可決

2012.06.26 Tue

21:09:45

自民党は消費税増税法案を衆議院で反対すると予想していたが、大きく外れた。
消費税増税法案は民主・自民・公明の3党の賛成で可決された。

なぜ外れたのか考察しておく。
まず私の予想の最終的な結論は野田総理が消費税増税法案を断念するというものだった。
民主党が割れないようにと考えて、執行部は衆議院可決をしない。
野田総理は辞任するかもしれないが、解散もなく民主党政権は続いていく。
自民党からすると、これはまずい。
なんとか解散総選挙に持ち込んで政権奪回を図りたい。
それが本音のはずだ。

解散総選挙をして、自民党が勝つかどうかという問題はある。
けれども小選挙区制で与党の人気がなければ、対抗政党が勝つのはほぼ確実である。
したがって、自民党の勝利もほぼ見えている。
私はその前提で書いている。

自民党が反対したままだと、衆議院可決が怪しいので、野田総理は引いてしまう。
つりのえさを食べない魚みたいなものだ。
だから、とにかく採決させて民主党の亀裂を大きくすることを優先したわけだ。
それによって、一応民主党内の亀裂は大きくなって、過半数を維持できない勢力が離反している。
民主党が分裂状態に陥り、過半数を維持できないならば、内閣不信任案がいつ通っても不思議ではない。
この状況に持ち込むことを自民党は最優先したわけだ。

今後の状況はどうなるだろう。
まず自民党の谷垣総裁と野田総理との間に、消費税増税法案が可決した後に衆議院を解散する密約があるかどうかである。
密約というか暗黙の了解かもしれない。

消費税増税法案が成立したとしても、特例公債法案がある。
自民党が徹底的に反対すれば、参議院で特例公債法案は通らないだろう。
それでは政権が立ち行かなくなる。
去年は菅総理の辞任ということで落ち合った。
震災復興という問題があったので、徹底的に戦えなかった。
今回は総理の辞任だけではすまず、、解散を明言しなければ、拒否し続ける方法が使える。
だから、消費税増税法案が成立したとしても結局は解散だと考えて、このまま消費税増税法案が成立することもある。
消費税増税法案は基本的に自民党も賛成しているので拒否する理由がない。

ただこのやり方は基本的に民主党政権が約束を守ることを前提にしている。
解散を明言しても、法案が通った後、平気で約束をひるがえせば、解散にはならない。
「だまされた方が悪い」というわけだ。
私は民主党のイメージとしてそう思っている。

谷垣総裁としては、食い逃げされる危険性も高い。
全部だまされると、9月の総裁選で責任が問われるだろう。

それでは、確実に解散をするにはどうしたらいいのか。
いま内閣不信任案を出すのがベストではないかと思う。
三党合意があるのに内閣不信任案を出していいのかという話はある。
けれども、野田総理が辞任して、次が谷垣総裁になって、消費税増税法案を通すならば、合意は違反していないはずだ。
野田総理は信用できないからを理由にして、内閣不信任案を出す根拠はある。

小沢グループは今不信任案を出されたら賛成せざるを得ないだろう。
除名覚悟で反対した以上、成立しない可能性に賭けるしかない。
それならば不信任案は通る。

野田総理はどうするか。
消費税増税法案の成立を最優先するならば、自民党に政権を譲って、法案を成立させるだろう。
総理を辞任しても、民主党代表であるのだから、自民党政権との連立はできると思う。

それ以外の可能性はどうだろう。
解散すれば勝つ見込みは少ない。
そうなったら消費税増税法案の政治生命をかけるといったことが役に立たなくなる。

野田氏が総理を辞任したら、民主党内の押さえがきかなくなって、クーデター的に他の人を代表にした民主党政権ができる可能性もある。
しかし、この可能性は少ない。
いかに、民主党議員にとって政権にできるだけしがみつくことが大事といっても、野田総理の党内勢力はあるのだから、党内規約をひっくり返すことはできないはずだ。
野田総理の党内勢力も選挙のことを考えたら自派で執行部を抑えておいたほうがいい。

そうすると、内閣不信任案が出れば野田総理が辞任して、自民党に政権を譲る可能性が一番大きいと思う。
もっともこんな大胆なことをしなくても、谷垣総裁は解散になると考える可能性が一番強そうだ。
こんなところが私の今後の政局予想だ。
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国債バブルという表現はおかしい

2012.06.25 Mon

20:40:08

国債がバブルと化している、という意見がある。
この意見には違和感を感じて仕方がない。
一番変だと感じるのは、国債には上限があるのにバブルとすることだ。
国債は債券だから、受け取る利息と償還金を合わせた合計金額より高い値がつくことはありえない。

たとえば、年ごとの利息が5円で償還時に100円が戻ってくる10年国債を考えよう。
そうすると利息の合計は5x10で50円、償還金と合計して、150円が上限だ。
150円以上で買うのは、戻ってくる金額が少なくなって損になってしまう。
現金で持っていた方がいいという話だ。
もっとも現金は危険だから、安全に保管するための保管料としてマイナス金利を許容して投資することもある。
実際ドイツ国債はマイナス金利になっていて、少し異常だ。
そういう変な場合も少しはあるかもしれないけど、受け取る金額を越える価格で売買されることは普通ありえない。

そうすると、国債がバブル化しているといっても、上昇余地はほとんどない。
10年国債は今143円だけど、それだったら最高に上がったって7円だ。
上昇を期待しての買いは非常に少ない。
儲かっても5%という投資がバブルと言えるのだろう。
今の状況では投資した金額が減らないならば、それで満足だという投資がほとんどだろう。
ユーロの国債危機で米日英独の国債が買われているわけだが、とにかく安全なところへの避難としての目的がほとんどだと思う。
どんどん上がっていかなければ、バブルとはいえないのではないだろうか。

ただ、バブルの本質はこれと似ている感じもする。
そもそもバブルの発端は、儲かる投資がなくなって元本の安全だけを求めた投資の開始だ、と考えている。
バブルの対象が土地になるのは、何よりも下がることがないだろうという安心感だ。
投資するところがなくなった資金が、安全第一を目指して購入したのが、土地であり、みんながそう考えることで土地の価格は上昇していく。
土地の価格にははっきりした上限がないから、みんなが買えばいくらでも上昇できて、バブルになっていく。
リーマンショック後の金や原油などの購入も同じ印象だ。
ただ、最近では金や原油の価格が下落に転じているように、どんなに安定資産であっても上昇すれば下落する危険性は出てくる。
原油はそもそも消費される商品である以上、経済の活動の変化を反映せざるを得ない。
金は商品とはあまりいえず、むしろ元祖通貨だ。
経済活動はあまり重視されないかもしれないが、上限はない。
だから上がりすぎれば下がる危険性が出てくる。

国債が上がりすぎることはない。
だから暴落する危険性はほとんどないと言える。
経済活動を反映したゆっくりした下落はあるかもしれない。
でも暴落の危険性は少ない。
Varショックによる下落だって金利差で1%ぐらいだ。
バブルの崩壊と次元が違う。

安全を求めた投資と価格が幾らでも上昇するという夢を抱いた投資とは、やはり違う。
バブル特有の高揚感が全然ないのに、国債投資をバブルというのは、どうも違和感を感じて仕方がない。
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飛車先の歩の交換をなぜ簡単に許すのか? - GPS将棋をプロ棋士が分析する(その3)

2012.06.23 Sat

21:01:16

質問があり、前の記事の意味が不明瞭なので、自分の考えをもう一度書き直しておく。

まず、自分の言いたいことは次のようなものだ。
飛車先の歩の交換の得は短手数でわかるものではなく、長手数先に実現するものだから、今のコンピュータソフトの読みの深さでは飛車先の歩の交換の得を理解できない。
そのため簡単に飛車先の歩の交換を許す。

もう少し具体的に書く。
評価関数は局面の状況を静的に判断する。
プロの棋譜を分析・学習することで、プロの手に一番近い手を指すように局面から計算する関数だ。
これは1手しか読まないソフト同士が対決すると、学習したプロの棋譜を全て再現できるようなイメージで、私は理解している。
序盤は同じだからどこで分離するかとか、致命的な悪手を指した場合はどう関数を作ってもその手は指さないような問題はあると思うが、それは適当に調整してあるわけだ。
だから、飛車先の歩を伸ばして次に交換するぞと迫ったとき、角や銀を上げて交換を拒否する手の評価値は高いはずだ。
その手を指さないのは、評価値の計算は1手先ではなくて、ずっと先まで読んで計算しているからだ。
単純に拒否する手よりも、飛車先の交換を許して別のところで得をする形の方が評価値が高くなってくるから、ソフトは飛車先の交換を許す。

評価関数は全ての局面に適用される。
玉と飛車が接近したような形は評価値が低くなり、玉の周りに金銀が集まっているような形は評価値が高くなる。
ボンクラーズ対米長戦では、米長氏が二手目に62玉と定跡外れの手を指した。
玉飛接近で、しかもそれを簡単に解消するような手はない。
それで評価値は非常に低く、ボンクラーズは自分の方が優勢と判断した。
ボンクラーズの作者のブログの記事のグラフを見るとそれがよくわかる。
ただこれはボンクラーズの読みの範囲内の判定なので、その後局面が進み、駒がぶつかるような局面になるとほとんど互角になっていた。
つまり、米長氏は駒がぶつかるころの局面を想定してこの手が成立すると思っているけれども、ボンクラーズはそんな先の局面は読めないので、途中まで読んでそれならば有利だと判定しているわけだ。
その結果、駒がぶつかるような局面まで近づくと評価値が互角に近づいていく。

ボンクラーズの序盤の形勢判断が正しいということがあるだろうか。
それはありえない。
もしその形勢判断が正しいならば、局面の進展と共に評価値が互角に近づいていくことが説明できない。
単純に読み不足なだけだ。
時間が十分にあったボンクラーズ米長戦でも、序盤で正しい判断ができるほど読みは深くない。
それは今回のコンピュータ将棋選手権でも序盤の読みがあてにならないことを示している。

現在のソフトの読みの深さは序盤から正しい判断をできるレベルに達していない。
人間なら経験や感覚からわかる判断ができない。
もっとも飛車先の歩の交換の得は、人間にも江戸時代末期まで把握できなかった。
つまり人間は膨大な対局の経験から、飛車先の歩の交換は得だという事実を理解できたのだ。

飛車先の歩の交換を許すソフトの判断の方が人間より正しい可能性はあるだろうか。
私はそれはないと思う。
今まで述べたように、ソフトの序盤を判断する読みはまだまだ浅い。
そして、人間が膨大な対局から経験的に理解した感覚が間違っているとは思えない。

角替わり同型の将棋は最近先手有利とほぼ結論が出たように思う。
これは数え切れないほど大量の対局によって、ほぼ全ての変化をしらみつぶしに読みつくしたからだ。
全ての変化を読みつくしたならば、途中の局面の形勢判断は関係ない。
プロの間で山ほど対局があったのは、形勢不明に見えたので指す価値があると思ったからだ。
ボンクラーズが角替わり同型を後手番で指して何局も負けている。
コンピュータがいかに深く読めるといっても、人間が何十年も対局した経験による読みは上回れないのだ。

飛車先の歩の交換の得も同じようなものだろう。

ソフトが飛車先の歩の交換の得を理解するにはどうしたらいいだろうか。
序盤だけの評価関数を作るような方法はある。
しかし、この方法は序盤と中盤をどこで切り替えるかの判断が難しい。
序盤ある程度進展して、すでに感覚より読みを重視しなければならない局面かどうかの判断は、たぶん飛車先の歩の交換の得の判断より難しい。
下手にそこらへんをいじるよりも、コンピュータの能力の向上でソフトの読みが深くなって、自然に問題が解消した方がいい。
読みが深くなれば飛車先の歩の交換の得を自然と理解できるはずだ。

また対人間戦においては、飛車先の歩の交換を許しても損かどうかは微妙かもしれない。
人間は飛車先の歩の交換の得を感覚的には理解できても、それを現実の得にするのは難しいはずだ。
コンピュータの読みはすでに相当深くなっている。
歩を交換しているということは、すでに単純な序盤ではない。
そのような状況で、コンピュータの読みの範囲内では実現していない得を実現させるにはかなりの力量を要する。

それにコンピュータにとって、角替わり交換同型のような、変化が狭くなって逃げ切れない局面を選んでしまう危険性よりも、飛車先の歩を交換させて、相手の実力をそのまま発揮させた方が有利かもしれない。
なんと言っても、飛車先の歩の交換を許す定跡はほとんどないはずだ。
定跡のない局面に導いた方がコンピュータにとって有利になっている時代がきている。
コンピュータが定跡なしに指したときに一番心配なのは、駒が交換せずに入玉含みで指されるような将棋だ。
実際ボンクラーズ米長戦のあの将棋はコンピュータにとって一番嫌な指し方だったと思う。
実力が出しにくくなる。

その点飛車先の歩の交換をするような将棋は、相掛かり調で入玉模様にはなりにくいし、圧迫されることもない。
定跡形を外れているのに、実力は発揮しやすく、損しているかどうかは微妙だ。
対人間戦では理想的な気もする。
同時に力の差があるならば、コンピュータ同士の戦いでも歩の交換を許してかまわないのかもしれない。
結局は読みの深さが勝負を決めるという点では同じだ。

一応このような理由でコンピュータは飛車先の歩の交換を簡単に許していると思う。
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