異をとなえん |

イギリス国債の金利が低くなる理由 - ギリシャのユーロ圏離脱は不可能だ(その11)

2012.05.26 Sat

20:33:18

前回はドイツ国債の金利を低くなっている理由を述べたが、その続きでイギリス国債の金利が低くなっている理由についても考えておきたい。
イギリス国債の金利が低くなっているのは考えてみると不思議である。
イギリスのインフレ率は2011年4.45%で、他の国に比べると高い。
インフレターゲットは2%で本来ならとっくに金融引き締め政策を取っていなければならないはずだ。
しかし、イギリス中央銀行は景気が悪いので、それを無視してゼロ金利政策を取っている。
中央銀行の信頼が問われる自体が発生していると思うのだが、まあそれは別の話だ。
問題なのは、インフレ率が4.45%なのに、十年物の国債の金利は今1.757%で2%をわっていることだ。
これはつまり毎年2%ずつ実質価値が減っていくことになるはずだ。
もちろん、インフレ率が今後低下すると投資家は予想しているのかも知れない。
2010年、2011年と3%以上のインフレ率なのにそう推測できる根拠が不明だけど。
でもイギリスの実質金利がマイナスならば、イギリスから資金が海外に逃避してもおかしくないはずだ。
しかしイギリスポンドのレートは落ち着いている。
そんなわけで、イギリス国債の金利が低くなっているのが不思議に思える。

その理由だが、まずポンドのレートが落ち着いている理由から説明する。
イギリスの経常収支は近年ずっと赤字を続けていて、GDP比で2%ぐらいの赤字のままだ。
資本収支が黒字、つまり資金がイギリスに流れ込むことで、経常赤字を解消しているわけだ。
金融危機前イギリスは好調で景気が良かった。
だから資金が流れ込んでも全然不思議でなかったが、今はマイナス成長率で景気は悪い。
国債の実質金利はマイナスだ。
つまり普通に考えれば資金が流れるのはおかしい。
それなのに資金が流れるのはなぜか。
理由はイギリスが外国に持っている資産を還流させているからだ。
イギリス国内でポンドを借りて、外国通貨に変換して投資した資金を戻している。
イギリスの対外純資産は統計の上ではマイナスだけれども、対外債務も対外債権も大きいので誤差に近い。
イギリスの持つ対外資産は直接投資が多そうで、諸外国がイギリスに持つ資産は債券が多そうだということを考えると、むしろ対外純資産はプラスに思える。
実際所得収支はプラスだ。
だからイギリスは対外資産を処分することで、需給が均衡しレートは落ち着いている。
資金を戻す必要はないとも思えるが、イギリスで借りたポンドを返すために嫌でも変換しなければならない。
そういう金が多いのだろう。

しかしイギリスの実質金利がマイナスならば、外国に投資することで資金が出て行くことはないのだろうか。
銀行ならばイギリスの安い金利で金を借りて、実質金利が高い所に投資すれば、それだけで大儲けのはずだ。
そうならないのは、実質金利が高いところがないからだ。
世界全体が低金利になっているので、投資する国がない。
スペインやギリシャの国債は帰ってくる可能性がないので投資するわけがない。
アメリカや日本などの信用できる国は、金利差が小さい。
金利差が2%ぐらいないと、為替リスクはカバーできない。
それでイギリス国内から投資としての資金移動は起こらない。

イギリスから資金が流出せず、還流するだけなのだから、投資が増えなければ金利は下がるしかない。
投資はこの不景気で増えるわけがない。
国債を持っていてもインフレ分ある意味損をするのだが、現金で持つよりも雀の涙でも利子がつく分得だ。
それでポンドの所有者は国債投資に走っている。
だから、イギリス国債の金利は下がり続けているのだ。
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