異をとなえん |

中国は激しい権力闘争の時代にまた突入するのか - 「チャイナ・ナイン」感想

2012.03.23 Fri

21:00:53

「チャイナ・ナイン」という本に目を通す。

日経ビジネスオンラインで連載を持っている遠藤誉さんの中国本だ。
中国共産党中央政治局常務委員の9名をそう呼ぶらしい。
正式名称はともかく、中国語での通称は何なのだろう。
中国九老とかだろうか。
なんか全然違いそうだ。

昔なつかしの共産圏の権力闘争物語である。
読んでいると、それなりに中国の奥深くで続いている権力闘争の内幕がわかってくるような気がする。
長い中国経験のなせる技なのだろうか。
チャイナ・ナインの一人一人の経歴を解き明かすことで、彼らの戦略などが如実に示される。
江沢民が薄一波の手を借りて、権力闘争に勝つとか、だから薄煕来は江沢民派などというのが説得力を持って語られる。
本当かどうかはわからないが、少くともこういうレベルで中国国民は権力闘争を理解しているのだろう。

中国の権力闘争は実に激しかった。
最高首脳が殺され、逮捕されるのが普通の時代だったのが、少なくともだいぶ柔らいできている。
江沢民が総書記になって以降は、政治局常務委員の失脚はなくなった。

この理由の一つには、定年制がある。
70歳定年で、権力の座から降りたとしても、命の危険があるという状況にはならない。
命がけで権力闘争をしなくて済むようになったわけだ。
中国の政治の進歩だろう。

もう一つの理由は政策の対立軸が弱まっていることだ。
とう小兵による改革開放政策によって、中国は高度成長が始まった。
中国国民の誰もが利益を得ることで、権力闘争を起こすエネルギーは蓄積されず、現在の政策をそのまま続ければ良い形ができていた。
日本の高度成長時みたいなものだ。
池田隼人と佐藤栄作の両総理大臣が高度成長の立役者だろうが、政策が決まっていたことで、それを引っくり返そうとうする勢力は現われず、長期政権が続いていった。

それでは、中国の今後はどうだろうか。
最大の問題はやはり政策だ。
政策の変更を求める勢力が強くなれば、それに呼応しようとする勢力が生まれる。
その対立軸こそが政治闘争のエネルギーになっていく。
中国の現在の対立軸は何か。
民主化自体はどうでもいい話だろう。
権力争いの結果、自派の有利を図るために民主化を叫ぶ勢力はあるかもしれないが、直接の原因にはならない。
少数民族なども、たかが知れている。
重要なのは、やはり経済問題だ。

ただ、どういう形で亀裂が生まれるかは難しい。
そもそもまだ高度成長が続いて、亀裂など生まれない可能性だってある。
当然激しい権力闘争もない。

それでも高度成長は終わった感が強い。
賃金の伸びは顕著だ。
だから、外国資本の進出も止まりつつあるのではないだろうか。
そもそも、外国資本の中国進出の最大の理由は低賃金だった。
それがなくなれば、外国資本は進出する理由がなくなってしまう。
外国資本はベトナムとか、ミャンマーとかに進出するだろう。
外国資本の進出がなくなれば、中国の高度成長を生みだした最大のエンジンが止まってしまう。
中所得国の罠といったところだろうか。

もし、高度成長が止まったらどうなるか。
中国国民はいったい何を要求するか。
中国は極端に富の配分に格差があるので、この是正を求めるのが一番ありそうに思える。
戸籍制度を改正して、農村住民が都市住民になることができるようにする要求も強そうだ。

これらの声を代弁しようとする政治家は誰か。
そしてその声に反対しようとする政治家によって権力闘争が生まれるというのが、私の予想になる。

団派とか太子党とかの派閥は、その政策を代表していない。
それらの派閥は、気分による派閥であって実体がたいしてあるとは思えない。
本当に確固とした派閥があると反対派を完全に叩き潰そうとするから、あくまでも場外の下馬評というだけだ。
だから、本当の対立軸が生まれれば、それに合わせて派が再編成される。
そして、勝者が敗者をたたき出すだろう。

それほど激しい対立軸は生まれているのか。
薄煕来の毛沢東への回帰の運動は、格差の縮小を要求する勢力に対して、薄煕来が答えようとした、ともとれる。
ただ、それで薄煕来が失脚して、党中央が団結を誇示できるならば、たいした対立軸でもなかった話になる。
現在の日本の対立軸は新自由主義勢力と既存利益集団との争いだろう。
自分の国の場合はなんとなく予想がつく。
ただ、外国の場合はよくわからない。
中国の場合は特にそうかもしれない。
肝心要については、なにもわからないけれど、本を読んでそんなことを考えた。
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