異をとなえん |

「十字軍物語1」・「十字軍物語2」感想

2011.10.12 Wed

21:36:23

塩野七生さんの「十字軍物語1」と「十字軍物語2」を読む。


若干読みごたえが足りない気がする。
特に2の方は作者も文章をぶつ切りにしていて、のりが弱い。
1の方はキリスト教側が優勢で作者がヨーロッパ勢力を応援しているということもあって、気分よく書けている。

1は第一次十字軍の話で、キリスト教側が成功してイエルサレムを占領し、十字軍王国を築くまでである。
2はイスラム教側の反撃が始まり、最終的にほぼ全ての領土が奪還されるまでを描いている。
第二次十字軍はその中の一挿話という扱いだ。

全体的になんというか、十字軍という宗教的軍事行動に対して理解が弱いというが、普通人には狂信者のことをわからないが作者もわかっていない。
中世の宗教心の篤い人たちの考えは現代人の私には全然理解できないけれど、作者がばさっと断定している人物像はどうもなんか違う気がしてならない。
だから、登場人物が何を考えているか、全然伝わってこない。
臨場感がないのだ。
キリスト教の信者で、十字軍についてある程度知っている人が、別方向の見方に感心するとかはあっても、十字軍自体の知識がない人には、こういう歴史もあったよというだけに見える。

「ローマ亡き後の地中海世界」には新鮮な驚きがあった。


キリスト教側とイスラム教側が互いに海賊行為を繰り返していること。
侵略されたり、侵略したりが、当然のように行なわれている。
そして、イタリアにある多くの町が海賊行為から身を守るために山の高い所に作られていること。
日本人には理解しがたい、戦闘行為が日常の社会の厳しさを感じさせた。
十字軍はその中のキリスト教とイスラム教の接触の話の部分であり、話が大きすぎるから別分けにしたと感じ、続編として期待していた。
ただ、それは違ったのかもしれない。
海賊行為はある意味日常的な経済活動だ。
現代人も食べるためには仕方がなく実行する行為に見える。
それに対して十字軍は違う。
宗教心の弱い人間には狂気の沙汰にしか見えない。
つまり話を別にする理由は大きくあったのだ。
そんなわけで酷評であるが失敗作に見える。
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