異をとなえん |

山形氏によるケインズの一般理論の翻訳

2011.09.26 Mon

21:35:03

山形浩生氏がケインズの「一般理論」を翻訳してくれた。

ケインズ「一般理論」山形浩生訳 全訳完成 - 山形浩生 の「経済のトリセツ」

最初をぱらっと見たが全然わからん。
まだ、下の方がましだと思う。

IS-LMの発端:ヒックス「ケインズ氏と『古典派』たち」

よくわからないので、ちょっと検索してみたところ、山形氏はクルーグマンの一般理論の解説も翻訳していた。
そっちもリンクしておく。

ジョン・メイナード・ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』解説

経済学に文句をつけるなど、素人経済評論家には無理と絶望的な気持ちにさせられるが、ただ現実を考えるとそうでもない。
経済学の現実の経済の予想は全然あっていない。
なにかがおかしいと考えるしかない。
そういう気持ちで挑戦していく。
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続:重商主義は「トンでも論」か?

2011.09.24 Sat

22:15:10

前回の記事に菅原さんからコメントをいただきました。
反論が長くなりそうなので記事にしています。

>が頭につく行は菅原さんからのコメントです。
>>が頭につく行は菅原さんが引用した私の記事です。

> 早速取り上げてもらってありがとうございます。

こちらこそ、ありがとうございます。
トラックバックで反論などを書いても、あまり意見をもらえないので、真面目な反論をいただけるとうれしいです。

>>重商主義は「トンでも論」というより、ほとんどの場合正しい。

> 本文中で解説したように、重商主義=海外資産積み上げ至上主義のことです。どんんなに海外資産を積み上げても、国内には回りません。

私の主張している重商主義というのは、アジア金融危機のときの韓国のような事態をさけるために、基本的に債務国は借金返済=経常収支黒字を目指すべきだという意見です。
ですから、海外資産積み上げ至上主義という意見が、純債権国が経常収支黒字を目指すことを意味しているのでしたら、私の意見の対象外です。

菅原さんの意見は、どんな状況でも経常収支黒字、または貿易収支黒字を目指す政策は間違いだという意見なのでしょうか?
今のギリシャみたいな国は、とりあえず経常収支黒字を目指す政策が必要だと思うのですが。

> スペイン・イタリア・ポルトガルが大変になりつつあるのは、「資本」問題です。要するに、カネを海外から借りようが、国内でまかなおうが、「資本=信用のこと」ですから、信用がなくなれば、カネは逃げます。

金貸しが借りた人間を信用するかしないかは、利子をきちんと返すかどうかによるのではないでしょうか。
金を借りているのが国の場合、経常収支黒字=貿易収支黒字によって、債務を着実に返済するのが信用を保つことだと思います。
つまり、信用を守る=経常収支黒字を目指す=重商主義だと思うのですが、違いますでしょうか。

> ギリシャも含め、これらの国が問題を抱えつつあるのは、固定相場制(ユーロ)だからです。

これは固定相場制の場合、経常収支黒字を目指す=重商主義は正しいという意見に見えてしまうのですが、そう解釈してよろしいですか?

> 例のトリレンマ論です。この3つは同時に達成できません。

> ^拌悒譟璽箸琉堕(固定相場)
> ⊆由な資本移動
> 6睛酸策の独立

> ユーロ圏は、を放棄し、.罅璽躙把蠅鉢∋駛椣榮阿亮由化を選択しました。

> 本来であれば、危機なら、,鮗里(固定相場をあきらめる)、を回復し、金融緩和をすれば、その国のレートは減価し(例えばギリシャのドラクマが1/10になる=債務も1/10になる)で、解決です。
> 減価するので、輸出力は回復してきます。

本来とあればといっても、すでにギリシャやユーロ加入国にとって固定相場制は当然の前提で、今さらのような話が。

>> 典型的なケースが1997年ごろのアジアの経済危機だ。
>> タイ、インドネシア、韓国のように経常収支を赤字にして、経済成長のために全速で走っていた国は投機資本による攻撃に弱かった。
>> 資本が急に逃げ出すと短期の資金繰りがつかなくなり、結局IMFによる救済に持ち込まれた。

> 「固定相場制」だから、そうならざるを得ないというだけのことです。変動相場制なら、上記のようにはなりません。

> 「デフォルト 債務不履行 アジア金融危機」は、「固定相場」だから、起きるのです。

韓国の為替相場はこの当時、「第 1 章韓国外為市場の概要 1. 韓国の為替制度の変遷韓国の外為制度」を見ると、実質的な「ドル・ペッグ制」と評されています。
ただ、1日の変動幅は2.25%と大きいですし、上限下限も決まっていないのだから、それほど変動相場制と違っているか疑問です。
今の韓国の為替相場は変動相場制ですが、実質的にある程度のレートにおさめようと気をつかっていることを考えると、それほど変わっていないです。

固定であろうと変動であろうと、民間企業が為替レートの範囲を安易に仮定して外貨建てで借金している場合、投機によって大きくレートが変動したら、やはり危機におちいるのではないでしょうか。
民間企業がバカだから自己責任などと言っても、それで国民経済が大きく混乱すればその責任を政府が持つしかないでしょう。
韓国はIMF管理によって危機を脱しましたが、その時点で大幅な損失を出しました。
これ事態を避けるのが国の責任ではなかったかと思います。
具体的には、国際収支が赤字に近づいた時点で引き締め政策に転換すべきだったでしょう。

現在、多くの国が実質的なドルペッグ制をしいています。
為替変動の負担を民間企業に負わすのが大変だからでしょう。
だから、アジア通貨危機以後、アジアの政府が責任を持って経常収支黒字=外貨準備増=重商主義政策を実施しているのは正しい政策ではないでしょうか?
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重商主義は「トンでも論」か?

2011.09.22 Thu

22:07:37

重商主義は「トンでも論」という意見の記事を読んで反論してみた。

<日本経済新聞の暴走その3>

引用開始

我々の豊かさは「貿易黒字」にはありません。「GDP(GNI)」にある
引用終了

この考えには基本的に賛成だが、経常収支が赤字であることはGDPに大きな影響を及ぼす可能性がある。
それを考慮すると、重商主義は「トンでも論」というより、ほとんどの場合正しい。
ここでの重商主義は、経常収支の赤字があまり続きすぎるのは良くないという考え方である。

記事の中に欧米の経常収支赤字国、イギリス、イタリア、オーストラリア、フランス、ポルトガル、スペインと並べて、「これらの国は、大変なことになっているのでしょうか。」と聞いている部分がある。
少なくともポルトガルは大変なことになっているし、イタリア、スペインも大変になりつつある。
フランスもかなり怪しい。

これらの国は国債の返済が可能かで危機が叫ばれている。
経常収支赤字国なのでその金を国内から調達できないからだ。
国債がデフォルトするかどうかは別にしても、国債の金利は上昇し、緊縮財政政策を余儀なくされようとしている。
他の国に比べて金利が上昇するというのは、その国民にとっては支払いが増えるということだ。
緊縮財政政策も、いつやろうが同じということはない。
前の経常収支が赤字のときに緊縮していれば、少くとも世界の景気が好況のときに実行できた。
そうすれば、ずっと楽に実行できたはずだ。
そういう意味で経常収支赤字を放置していたことは、国民にとっての実害になっている。

もう少し厳密に考えてみる。
発展段階の違う国が世界にいろいろあるとする。
そうすると、発展の遅れた国は進んだ国に追いつこうと努力する。
そういう場合、教育やインフラや企業に投資をする必要がある。
遅れているということは金がないことだから、普通進んだ国から金を借りてこなくてはならない。
その場合、資本収支は赤字になるが、貿易収支を黒字にして借金を返していくわけだ。
でも地味に借金を返していくより、借金を増やしてもいいから、その分投資して稼ぎを多くして返済した方がいいと考える国も多いわけだ。
実際借金を返すというのは、自国の消費や投資を減らす行為だからGDPの成長には悪影響を及ぼす。
けれども、これは経済がうまくいっている場合だ。
往々にして危機が到来し、借金の返済を急に迫られることがありうるのだ。
その場合、債務国は困ってしまう。
ものすごく悪い条件で債務の繰延べを頼むしかなくなってしまう。
本来なら到底承知できないような不利な条件での借金を飲まされてしまうのが、経常収支が赤字であり、債務国である、最大の危険だ。

典型的なケースが1997年ごろのアジアの経済危機だ。
タイ、インドネシア、韓国のように経常収支を赤字にして、経済成長のために全速で走っていた国は投機資本による攻撃に弱かった。
資本が急に逃げ出すと短期の資金繰りがつかなくなり、結局IMFによる救済に持ち込まれた。
その時はGDP自身も急減したし、借金の返済のために自国の株式を安い価格で売らざるをえなかった。
経常収支赤字国であり、債務国であることが、非常に不利な状況におちいった例である。

もちろん例外的な国もある。
たとえばオーストラリアは独立以来一度も経常黒字になったことがないらしい。
正確かどうか知らないが、さもありなんと思う。
オーストラリアには膨大な資源があるので、借金がその資源に見合っているならば問題はない。
外国のオーストラリアに貸している金が、鉱物会社の株に化けているならば、急に返却しろなどと迫られることもなく、まったく問題はなくなる。
問題は資源みたいに確実なものがなくて、借金を繰り越さなくてはいけない国の場合だ。
そういう場合は、危機のことを考えて、事前に経済成長を犠牲にしても、経常収支が黒字になるように調整する必要がある。
日本の高度成長のときがいい例だ。
経常収支が赤字になれば、引き締めを行なって、景気を冷やしたわけだ。
つまり、経常収支が赤字にならないように、経済を運営していく重商主義だ。

世界全体で考えると、経常収支の黒字国がいれば、経常収支の赤字国がいなくてはならない。
その場合、危機のときの危険性を考えると、経常収支の赤字国は少くとも純債権国であった方がいい。
債権国であれば、借金の返済を急激に求められることもないだろう。
アダム・スミスが自由貿易主義をとなえたときは、イギリスの勃興期であった。
確認していないけど、純債権国のときだろう。
この場合経常収支の赤字にとらわれず、世界全体の経済を発展させるために、経済成長優先の政策をとった方がいい。
でも、他の国は借金返済を重視しなくてはいけないから、重商主義的な政策をとることもいたしかたがない。

実際、当時はデフォルトすればそれでいいわけではなかった。
デフォルトすれば国自体が飲み込まれる危険性がたぶんにあった。
重商主義に傾くのも当然だろう。

さらに昔の場合はもう一つ違ってくる。
国民全体の効用の総和が国にとっての効用になるか違ってくるのだ。
つまり為替レートを固定にして、それで経常収支が赤字にならないようにすればいいわけではない。
どういうことかというと、車を購入しようとしたとき、輸入車の方が性能もいいし価格も安いので、国産車より輸入車を購入した方が国民全体の効用が増す。
けれども、これは戦争を意識していない。
戦争の指揮官として考えたとき、輸入車より国産車の方が良かったというケースはある。
国民一人一人が戦争を意識できないので、ある程度規制をする必要がある。

以上を考えると、純債権国か資源のように確実に換金可能な資産を持っている国でなければ、重商主義はあっている。
だから、貿易収支赤字、経常収支赤字を忌避するのは日本にとって当然だった。
ただ、日本はいまや世界一の金持ち国となった。
日本が貿易収支赤字を出さなければ、世界経済は回っていかない状況になりつつある。
日本が重商主義にこだわり続けるのはよくないが、しかし「トンでも論」というのは言い過ぎだ。
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リフレ政策はやはり無効のように感じる

2011.09.22 Thu

01:24:09

アメリカの状況を考えるとリフレ政策はやはり無効のように感じる。
日本でもとにかく日銀が国債を大量に購入すれば、通貨の量が増えて、それでインフレになるという意見をよく見かけるのだが、どうも信じられない。
なぜうまくいかないのか、何回も書いている気がするが、またまとめてみたい。

まずリフレ政策というのは、国債を中央銀行が無制限に購入し続ける政策としておく。
国債を持っていた民間は有利な状況で換金できたのだから、それを投資に回すはずだ。
たとえば、通貨の供給量が増えたのだから自国通貨の価値は減少することになり、外国為替市場では自国通貨を売れば儲かることになると主張する。
この考え方自体がどうも疑問だ。
デフレのときとインフレのときとでは、通貨の量の持つ意味が全然違ってくるのではないだろうか。

インフレのときというのは、労働とその交換で手に入る効用との間で効用の価値が大きい状況だ。
たとえば、1日働いて1万円の賃金とし、1万円で旅行ができるとする。
普通の人はこれは非常に有利な取引だと判断して、どんどん働いて、どんどん旅行する。
もちろん、これは個々の価値判断だから、そう判断しない人もいるだろう。
しかし、総体として考えれば全労働量と全効用とでは効用の価値が上回り、労働をできるだけ増やして消費しようという状況がありうる。
これがインフレのときの状況だ。
人は労働によって賃金を手に入れ、それを商品サービスの効用に積極的に交換しようとする。
だから、通貨量が増加すれば、人々はさらに積極的になる。
商品サービスの供給より需要の方が大きいので、インフレが発生していく。

それでは、デフレの状況はどうだろうか。
このときは、インフレのときと逆に、労働とその交換で手に入る効用とでは、労働の価値の方が大きい場合だ。
たとえば、1日働いて1万円の賃金とし、その1万円で手に入る商品サービスでそれに見合うものがほとんどない。
もちろん、人は生きていくために必要な物があるので、そういうものはどんなものでも買う。
でも、総体として考えたとき、全労働量と全効用とでは労働の価値が上回り、商品サービスの購入をできるだけ減らそうという状況が起こりうる。
貨幣の存在がなくて、直接労働と商品サービスを交換しようとすれば、人は労働時間を減らすしかない状況のようなものだ。
現実には貨幣は存在するので、労働を貨幣で貯めておくことができる。
人々は貨幣のまま貯めていき、商品サービスと交換しようとしない。
供給より需要が少ないので、価格は常に下落しようとする。
デフレの発生だ。

デフレ状況の場合では、通貨の供給量が増えたとしても、インフレにならない。
というより、1万円の労働と1万円の商品サービスを比較したとき、1万円の労働の方が価値があると判断しているのだから、商品サービスの価格が下がらない限り、絶対に交換は成立しないのだ。
貨幣をどういじくろうとも、総体としての全労働量と全効用との間で不均衡が存在している以上、経済は停滞するしかない。

当然のことながら、全労働量の方が全効用より価値が大きい状況は普通の場合起こり得ない。
資産の価格の極端な下落があった場合だけだ。
資産を考慮して考えると、通常の場合は、全労働量と労働に見当って作られた商品サービスの効用+資産から得られる効用の価値が均衡している。
自国に油田があると考えるならば、原油を売ってその金で輸入する商品サービスはただで手に入ると考えるようなものだ。
資産に大きな変動がなければ、生産性の改善によって、労働から手に入る効用は増えていく。
そうすれば自然と経済は成長していく。
しかし、資産の価値が急に減少すれば、全労働量の方が全効用より価値が大きくなる状況が発生し、デフレの状況が発生することになる。

話を元に戻して、リフレ政策がデフレ状況のときに効果をあげられない理由は、通貨をどういじくっても実際の労働と効用の変換比を変更できないということで結論は出ているのだが、もう少し詳しくのべる。
たとえば、QE2によって、株価は上昇し、ドル安に転換した効果があったように見える。
けれども、この効果は実際のQE2の政策の効果より、QE2によってドルの価値が減少するだろうという期待にもとづいたものに見える。
もちろんQE2が直接的に効こうが、期待として効こうが、効果があるならば問題はない。
ただ、期待としての変化の最終的な効果はまた変わってくるのだ。
QE2によってドル安に変化したとしても、ドル安は商品サービス価格を上昇させる。
ただでさえ、需要が不活発なのだから、価格が上昇すればさらに需要は減少してしまう。
それは回り回って、輸入を減らし、ドル安を止める。

QE2の世界的な効果を考えても同じことだ。
ドルは基軸通貨だからアメリカがデフレ状況だとしても、世界全体を考えるとインフレ状況はありえる。
実際原油は高止まりしてるし、商品価格は高いままだ。
アメリカ以外の国はドルが低金利で供給されることによる成長効果を享受できるかもしれない。
しかし、アメリカでは原油や商品の価格が上昇すれば、需要が減るだけだ。
ドル安による輸出増大の効果は輸入価格の上昇による輸入の減少によって、打ち消されてしまう。
アメリカでは輸入の方が輸出より大きいことを考えれば、かえって景気に悪影響を与える。
リフレ政策はうまくいかなくなる。
結局止めざるをえない。
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なぜ中国のバブル崩壊は今なのか?

2011.09.20 Tue

21:29:11

中国のバブル崩壊論は無数に出ている。
狼少年のごとく繰り返されているので、今度こそバブル崩壊と言っても信用するのは難しい。
今度が本物のバブル崩壊だという証拠はなんだろうか。

中国の高度成長は主として低賃金に誘われた外資系輸出企業によって担われた。
そして、どうもそれ以外の要素は重要でなかったようだ。

増田悦佐氏の「中国、インドなしでもびくともしない日本経済」

P137によると、中国国有企業の雇っている労働者の数は1979年から1999まで、70%台後半で全然変わっていない。
それなのに、工業生産額に占める国有企業の割合は1979年の80%から1999年の23〜4%と激減している。
つまり外資系輸出企業の生産性の高さに全然追いつけていない。
また、P140によると、2010年の生産者物価指数と消費者物価指数の上昇率では、生産者物価指数の上昇率の方が高い。
日本の物価指数では企業物価指数の方が消費者物価指数の伸びより常に低いことと対照的である。
日本では、生産性が常に向上しているので他の条件が変わらなければ、企業物価指数は下がっていく。
人件費の上昇が激しければ、物価指数は上がるけれども、生産性が伸びにくい小売の消費者物価指数より高いことはない。
それに対して、中国ではたった一年だけど、国内工業の生産性が全然上昇していないので、原料費や人件費をそのまま価格に反映させていることを示している。
消費者物価指数が低いのは、工場労働者の方の賃金上昇率が高いのだろう。

結論として、中国の高度成長の源泉は極めて低い生産性だった労働者が外資系輸出企業に移動することによって、高い生産性を持った労働者に変身したことにあった。
そして、ほとんどそれだけなのだ。
もちろん、それだけと断定していいか微妙な部分はある。
都市への集積による生産性の上昇効果は中国の企業にも発生していなくてはおかしい。
それでも、今までの流れを考えると生産性の伸び率は0と仮定しても全然間違っていないように思える。

中国の高度成長の源泉が外資系輸出企業の生産性の高さだけによったならば、一人労働者が移動することによって中国の全体としての所得はその分上昇した。
上昇した所得は主として、外資系企業と経営者に分配された。
土地インフラをサポートしている政府にも、いろいろな形で金は流れただろう。
労働市場は今まで逼迫していなかったので、賃金を通した還元はそれほど大きくはない。
経営者、合弁相手である国有企業、政府に分配された所得は再度投資され、中国の巨大な貯蓄金額を現出させた。

中国のバブルは消費できずに貯まっている資金の、不動産への巨大な投資が原因になった。
中国沿岸部に進出している外資系企業によって、労働者は沿岸都市に集中してきている。
その住まいを供給するために不動産は上がり続けている。
だから、沿岸部の都市に住民が集まり続ければ、不動産価格は上昇し続け、バブルが崩壊することはない。

しかし、転換点がやってきた。
ついに労働者の供給が逼迫してきて、賃金が上昇を開始した。
外資系輸出企業は単純な賃金の安さを理由とした、中国への進出をとめはじめている。
繊維産業がより安い労働者を求めて中国を撤退し、ヴェトナムやカンボジアに進出しているのはその例だ。

外資系輸出企業による中国への進出が止まれば成長の源泉はないし、都市部の不動産価格の上昇もありえなくなってしまう。
つまりはバブルの崩壊だ。

自動車産業や日本の内需産業の中国への進出は、外資系輸出企業とは別のくくりの進出だ。
これらの産業が付加価値の向上を生みだすならば、外資系輸出企業を源泉とした成長から別のくくりの成長に変化し、バブル自体が停止しないことも考えられる。
ただし、これは難しい。
全力疾走をしている馬車から、速度を維持したまま馬を取り換えるようなものだ。
一度停止する必要がどうしても出てくる。

けれどもバブルは止まり続けることはできない。
停止すれば自然に崩壊してしまう。
中国の成長するための需要の大部分が不動産投資である以上、バブルが崩壊すれば不動産投資を続けることができず、成長は停止してしまう。
調整はかなり時間がかかる。
それが本当だろう。

冒頭のなぜいまバブルが崩壊するかと言う質問の答えは、成長の源泉だった外資系輸出企業の進出が労働者の賃金が上がることによって止ったからになる。
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中国の奇妙さ

2011.09.19 Mon

20:06:38

なぜ中国は世界一の外貨準備国なのだろうか。
とても不思議である。
国民が金持ちで、お金が余るから世界に資産を持っているのならわかる。
でも、中国はまだまだ貧乏な国のはずだ。
一人当り国民所得は4000ドルで、日本の約10分の1だ。
買いたい製品がたくさんあってもおかしくない。
自動車、住宅の需要が伸びているみたいだけど、もっともっとあっていいはずなのだ。
そういう需要が多いならば、当然輸入は増え、貿易黒字は減っていく。

それなのに、統計を見ると消費性向はかなり低い。
全体のGDPの30%半ばで、1980年ごろから、ずっと減り続けている。
その代わりに、貯蓄が拡大して50%を越えてきている。
投資も当然高いわけだが、貯蓄を使いきれず、その分世界に対して資本が出ていっている。
なんで、こんな変な経済なのだろうか。

中国国民の貯蓄が多いのは、年金や保険などの社会保障制度が充実していないので、将来に備えるために貯蓄しているという意見をよく目にする。
なんか納得がいかない。
第一中国のインフレ率は預金の利子率を上回っている。
銀行にお金を預けたままにしておくと名目で増えた分よりも実質で減った分が上回るわけだから、普通避けるはずだ。
実際、小金を持っている中国人は預金するよりも、不動産投資をしている方が多いと感じる。

つまり、中国を擬人化すると、成長による所得の増大分を消費と不動産投資に分けて使い、将来の不安から消費よりも不動産投資の成長率が高ければ、中国の消費性向の低さは説明がつく。
それでは、経常収支の黒字に相当する貯蓄はどこから来るのか。
ISバランス論から言えば、貯蓄-投資=経常収支の黒字である。
ISバランス論は恒等式なのだから、経常収支の黒字がある以上、どこかで貯蓄が発生しているはずだ。
それが中国政府による為替介入か?

ドル元相場を一定の範囲に留めるために、中国政府は恒常的に相場に介入している。
ドルを買って元を売っているから、元が市場にあふれでる。
それではインフレの素なので、不胎化ということで介入分だけ資金を市場から回収している。
介入分を銀行から政府に強制的に集めさせるといっていい。
通貨システムが健全に活動するためには、一定の資金が銀行などの間を流れ続けなければいけない。
そこに資金を足して引いているわけだから、一応貯蓄の源泉は中国銀行そのものになるのか?
なんか無から有をつくりだしているみたいで、すごく気持ち悪い。
もう少し考えてみよう。

まあ、こんな風に考えてみたとき、中国経済は何が奇妙なのだろうか。
やはり消費性向が低すぎるのが奇妙となる。
日本や韓国の高度成長のときは固定為替相場のもとで、消費は順調にのびた。
中国はなにが違うのか。

中国人は消費財の多くが自分の労働に見当った価値がないと考えているからではないだろう。
賃金が上昇しなければ、消費が増えることはない。
いや賃金が上昇したとしても、それに見当って価格が上昇すれば消費はやはり変わらない。
中国国内で消費があまり増えていないのは、生産性が向上していないので、商品の価格が下がらずお得感が小さいからだ。

生産性の上昇は外資系を中心とした輸出産業中心に起こっているだけで、それ以外の伸びは小さい。
輸出産業に貯まった剰余は労働力が枯渇していないので、労働者に分配されることはなく、資本の利益となっている。
彼らはその利益を不動産投資に回している。

沿岸部では労働者の賃金が上がり始めた。
ようやく中国の労働力も枯渇しはじめたわけだ。
賃金の上昇は当然商品の価格に反映されて、インフレを招く。
けれども、生産性の向上が輸出産業だけにとどまっているならば、インフレはすぐに消費の減退をまねくだろう。
中国の大部分の人間の生産性が向上していないとしたら、恒常的な成長はできないわけだ。

結局中国の成長は中国の低賃金に魅かれて集まった外資系企業によるところが大きい。
低賃金の労働者がいるかぎり成長できた。
けれども、低賃金の労働者がいなくなれば外資系企業は投資をする理由がなくなってしまう。
輸出産業は成長できなくなる。

中国の不動産投資が盛んだったのは成長への期待だ。
輸出産業の成長がそれを支えた。
成長できなくなれば逆回転を起こして、資産価格が下落を起こすのは、バブルの常だ。

そうするとどうなるか。
消費はそう変わらない気がする。
もちろんバブルの影響による消費の増大はあったと思うのだが、それは不動産投資に向けられていた。
だから、不動産投資自体が大幅に減少する。
消費が変わらず、投資が大幅に減少すれば、輸出ドライブがかかることになる。
投資の減少によって、労働者が放出されるので、輸出産業のための労働力は確保できる。
ただし、賃金の下方硬直性によって、賃金自体は下がらない。
世界経済自体が順調に伸びていれば、輸出が増える余地もあるだろうけど、今はそうもいかない。
そうすると、答えは失業者の増加となる。
単純な失業者の増加は中国政府的には非常にまずい。
治安への影響も大きいだろう。
公共投資を増やして対応するしかない。
結局、成長が止り、政府の赤字が増大していく日本化ということになる。
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世の中にはバカが多い

2011.09.17 Sat

21:12:08

世の中にはバカが多い。
自分の意見と違うからではなくて、はしにもぼうにもかからない、そんな意見をよく見かける。
誰がどう考えてもおかしい、そんなトンデモ理論なのに、そんな人の本が山のように出ている。
むしろ、トンデモ理論の人ほど、本を量産していると言うべきだろうか。
本をたくさん書けるということはそれなりに売れているからで、買っている人もある程度いることになる。
世の中の読者のレベルに対して疑問を持ってしまう。

そして、極めつけにおかしいのは、そのバカの言うことが正しかったりすることだ。
本当に世の中、間違ってる。



まあ、そんな経験を持つことはまれであり、ある程度体験すると用心深くなるので、どんなにトンデモな理論に見えても簡単には否定しない。
それでも、幾ら考えてもおかしい意見と思えるものもあり、なぜこんな意見が広まるのだろうがと疑問を感じてしまう。

なお、このブログで反対意見を書いている場合は、元々の意見を真っ当だと認めているからだったりする。
本当にトンデモと考えた場合は文章自体を読めなくなってしまうので、反対意見を述べることもできない。

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