異をとなえん |

なぜデフレは悪いのか?への反論

2010.11.19 Fri

23:22:11

昔、まだブログを書き始めたころは、あまり経済政策も真面目に考えたことがなく、リフレ政策に対しても中立的だった。
経済についても勉強をし、いろいろ考えるようになると、どうもリフレ理論が気に入らない。
正しいと思えない。
そうするとデフレに対しても印象が変わってくる。
不況だからデフレになるという考えは簡単に理解できるけれども、デフレだから景気が回復しないという意見には納得できなくなる。

デフレ、それ自体は問題なのだろうか。

** クルーグマンの主張

デフレの問題点として、ノーベル賞経済学者のクルーグマンは次の3点を挙げている。

参照:なぜデフレは悪いのか? 道草

引用開始

デフレについて心配するべき異なる理由は、実は三つある。二つは需要側について、もう一つは供給側についてのものだ。
引用終了

需要側の二つの理由は次のようなものだ。
一つは、デフレによって物の価格が下がっていくのであれば、購入を後に伸ばした方が消費者にとってより安く買える、というものだ。
もう一つは、デフレによって借金の価値が段々と重くなるので、名目の利子率は低くとも実質の利子率は高くなり、投資しづらくなるという問題だ。

最初に読んだときは誤読していたみたいで、上の二つに理由をまとめてクルーグマンの最初の理由だ。
クルーグマンの2番目の理由は今してある借金の実質の価値が上昇するので、借り手が支出を抑えるというものだ。

最後の一点の供給側の理由は、賃金の下方硬直性によるものだ。
賃金はデフレであっても、なかなか下がらないという特徴がある。
デフレの状況で賃金が下がらないと企業の利益が圧迫されて投資できなくなる。
それでデフレは成長に悪影響を与える。

以上の理由について反論してみたい。

** 反論

デフレによって物の価格が下がると言っても、今現在の日本だと年に1%ぐらいなものだ。
1年に1%ならほとんど誤差でしかない。
普通の人は認識できない。
本1冊が1000円だとして、1年後に990円になると知ったから、1年買うのを待つ人がいるだろうか。
1年後に990円の本を買う人は、今1000円でも買うだろうし、逆に今1000円で買わなければ、1年後990円になっても買わないだろう。
もちろん、現在日本の1%の下落というのは、全体を平均化した数字に過ぎない。
1年に10%、20%下落するならば、また状況が変わる。
しかし、電気製品のように恒常的に年10%とかの価格の下落する商品であっても、別に売行きは変わっていないように見える。
恒常的に下がるということは、別にいつ買っても損をするのだから、購入時期は関係なくなるからだ。

大恐慌のような、20%近いデフレなら購入を我慢することがあるかもしれない。
けれども、今の日本のような年1%のデフレで、買いしぶりが発生するかというと絶対にない。

***

次は借金の実質利子率が高くなる問題だ。
いろいろ難しく考えるとわからなくなってしまうが、そもそも借金をする人は実質利子率など考えるのだろうか。
名目利子率が何%を考えて、その資金を運転費用などに回し、商品を回転させて、その利益が利息を上回れば、それでいいのではないだろうか。
デフレが問題になるのは商品を売りさばこうとした時点になる。
デフレで予想した金額で商品が売れなかったら、確かに問題だ。
けれども、予想した金額で商品が売れないというのは、商品それ自体に問題があるとか、不景気だからであって、デフレが問題なのではない。
逆に、デフレであっても、計画した通りに商品がさばけたとしたら、利益はより大きくなる。
名目の利益がデフレによって、実質的に高くなるからだ。

つまり、デフレだと実質利子率が高くなるので投資が増えない、と難しく言いつくろってみても、実際は不景気だから投資が増えないというのと同じことではないだろうか。

***

今してある実質の借金の価値が高くなる問題というのは、クルーグマン自体が指摘しているようにゼロサムだろう。
貸し手はそのことによって支出が増加する効果はあるはずだ。
実際に支出が増加しないのはデフレという不況の効果だ。
理論としては、打ち消しあって無視していいように思える。

***

最後に賃金の下方硬直性の話だ。
理論はともかくとして、現在の日本にはあてはまらない。
リーマンショック後の不況で賃金は無茶苦茶下がっていたはずだ。
5%ぐらいだったろうか。
物価は1.5%ぐらいのマイナスなのだから、それ以上に下がっている。
日本の企業の利益は急回復しているが、これが一つの理由だ。
実例が一つであったとしても、デフレと賃金の下方硬直性は独立した話なのだから、デフレ固有の問題とするのはおかしい。

10年もデフレが続いているから、労働者が軟化して賃金の切り下げを受け入れているという可能性はある。
しかし、賃金が下落するからデフレがスパイラルに進行するわけで、賃金が下落しないならデフレの進行も抑えられるはずだ。
デフレは悪い、それを止めようとしている主張の人間が、デフレの進行を止める現象に文句を言うのは間違っている。

** 結論

私の結論は次の通りになる。
デフレは不況の結果だから良くないにしても、デフレそれ自体にさらに景気を悪化させる要因はない。

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