異をとなえん |

ドルから円への基軸通貨の交替

2010.06.12 Sat

03:31:00

今まで基軸通貨の交替はドルが暴落することによって起こると考えていた。
しかし、これは逆のような気がしてきた。
ドルは価格が上昇することによって、基軸通貨の地位を失うのではないだろうか。

問題の根本に戻って考えると、基軸通貨とは何だろうか。
「基軸通貨とは」で検索してみると、軍事力の優越性とかが出てくるけど、どうも信用できない。
結果として、基軸通貨国が軍事力を持つのであって本質とは違うように思える。
それでは、基軸通貨の本質とは何か。
まず、単純に二ヵ国で考えてみよう。

A国とB国で貿易関係があるとする。
他の国はないとして、その時に使う通貨は何だろうか。
単純に輸出輸入するだけだったら、通貨はあまり関係がない。
昔の帆船時代だったら、貿易する物品を船に満載して輸出し、その代金をそのまま輸入する品に変換しただろうから、ほとんどどの通貨など関係なかった。
関係してくるのは、貸借関係ができてからだ。
A国の方が豊かで資産を持っているとすれば、B国ではA国から金を借りて、つまりA国から設備投資のための資材を輸入して、A国に商品を輸出する。
そうすると、この時に輸出入の通貨建ては当然A国の通貨を使用するようになる。
A国はB国に金を貸す時、当然金を貸す単位は自国通貨の物を使い、B国は輸出する時、当然その通貨で受け取ろうとする。
ドルで金を借りれば、輸出する時はドルで受け取りたい。
円で受け取っても、最終的にドルに変換しなければならないのだったら二度手間になる。
手間だけだったらいいけど、変換した時にレートが変わって返せなくなったら大事だ。
だから、どうしても借りた金に合わせて輸出しようとする。

この理屈は本質的に多国籍間においても同じだと思われる。
第二次世界大戦後、世界各国に対して資金を提供した国がアメリカだった。
だから、世界各国はアメリカの通貨単位であるドルで輸出入を行なった。
ドルを直接借りていない企業でも、銀行を通して決済する必要がある。
銀行はアメリカから金を借りている以上、アメリカの銀行に口座を持つ。
だからアメリカの銀行で決済するのが望ましく、企業にもドル建てで輸出入してもらうのが望ましくなる。

アメリカは戦後圧倒的な力を持っていた。
ほとんどの国は資産を失っていたのだから当然だ。
だからアメリカから資金を借りて、復興を目指した。
復興が終わっても、世界で一番進んでいる国はアメリカで、だから、その後もアメリカから借金をしては経済成長を図っていった。
結果として基軸通貨はドルであり続けた。

そうするとアメリカが基軸通貨国の地位を失う条件は、アメリカが金を貸せなくなる、あるいは他の国が借りたくなくなることだ。
アメリカから他の国に資金が流れなければ、他の国は別の金を貸してくれる国、つまり新しい基軸通貨国を探さざるを得なくなる。
アメリカから金が流れない条件は何だろうか。
ドルの価格が下落すると金は貸せないだろうか。
ドルの価格が下落することは、金を借りている国にとってはむしろ望ましい。
返却する時の負担がどんどん減っていく。
問題になるのは逆だ。
ドルの価格が上昇していくと、借金をしている国はどんどん苦しくなる。
負担が重くなるからだ。
つまりドルの実質金利が高ければ、他の安い実質金利の国を探そうという話になる。

今現在アメリカには資産デフレの脅威が迫っている。
住宅価格の下落が続き、需給ギャップが拡大し、今にも物価指数はマイナスに転じそうだ。
日本のバブル崩壊と同じような形で、アメリカが資産デフレ状態に突入すれば、需要が減っているから輸入が増えなくなる。
新興国がアメリカからドルを借りて投資したくても、アメリカに製品が順調に輸出できなければ借金を返すことができなくなる。
将来返すことができなければ、アメリカはドルを貸せなくなるし、他の国もドルを借りられなくなる。

しかし、アメリカの金利はとても安いのだから、アメリカでドルを借りて高金利の国で運用すれば儲かると思う人がいるかもしれない。
けれども、それはうまくいかない。
ドルで金を借りて、それを高金利国で運用して、ドルに戻すのでは、本質的に単なる行って来いに過ぎない。
金利が同じになるように為替が調節してしまうのだ。
為替レートが変化しないためには、その分商品を輸入する必要がある。
それができないから問題になっている。
これは結局、名目金利は下がっても、デフレ状態にあるから実質金利は下がっていないことと同じだ。
実質金利が高ければ世界はアメリカから資金を借りることができない。

リーマンショック後ドルのレートは上昇した。
世界が不況に陥いると投資ができないということで、アメリカに資金が戻るからだ。
アメリカの財政政策、金融政策によって、景気が持ち直すとアメリカから投資資金が外国に流出していき、ドル安に振れる。
実際、現在の新興国の景気の良さはアメリカから資金が流れ込んでいることにある。
アメリカが中国やブラジルなどの新興国に投資をして、景気が良くなると同時に資産の価格が上昇している。
しかし、この景気の良さが本当に実態を表わしているかは疑わしい。
バブルの懸念が十分ある。
アメリカの一部で資金繰りが苦しくなっても、あるいは新興国内部のバブルが自然に破裂しても、ドル資金は急激にアメリカに引き戻される。
資金が急激に戻ればドル高となり、投資した資金の多くの儲けは、紙の上のものとなり消えてしまう。
つまり、アメリカは外国への投資ができなくなっていることを証明するものだ。

アメリカが資金を世界に供給できなければ、基軸通貨国としての役割を果たせない。
基軸通貨国としての役割を果たす国は資金を供給すると同時に、貸した金を返すことができるように、その国から商品サービスを買ってあげる必要がある。
アメリカのデフレ状態が続いている時に、アメリカに替わって新たな商品サービスの需要を生み出す国に基軸通貨国は移動する可能性が高い。
後、純債権国も必須のような気もする。
金を持っていなければ貸すこともできないからだ。
候補国としては、EU、中国、日本だろうか。
他の国では経済規模で基軸通貨国の役割を果たせない。

EUは全体としてみれば世界に金を持っていないのではという問題もあるが、そんなこととは別に景気が悪すぎる。
世界の他の国から輸入できるだけの新規の需要が生まれそうにない。
アメリカ以上に問題がありそうだからだ。

中国はどうだろうか。
中国は世界一の外貨準備国だ。
アメリカ国債を大量に持っている。
このドルを裏付けにして、外国に金を貸せばいい。
しかし、これはおかしい。
基軸通貨国の発端は金持ちの国が貧乏人の国に対して金を貸すことだった。
中国の所得なら、他の国から金を借りて投資をし、それを返済していった方がいいに決まっている。
もっと豊かにならなければ、基軸通貨国は難しいということだ。

貧乏国が金持ち国になるとしたら、過程は次の通りだろう。
貧乏国は金持ち国から金を借りて、投資をする。
その投資で作った商品・サービスを金持ち国に輸出して借金を返済していく。
貧乏国の国際収支は最初は投資を受け入れるのだから、資本収支は黒字、貿易収支は赤字となる。
投資が実って返済ができるようになると、所得収支は赤字、貿易収支は黒字となり、段々と経常収支は0に近づいていく。
貧乏国の所得水準が金持ち国に近づけば投資するネタがなくなっていく。
そうすると、貧乏国の経常収支は黒字に転換し、資本の元本を返済、あるいは逆に他の国に投資するようになる。
そうすれば貧乏国ではなくなり、金持ち国だ。
基軸通貨国は、そのような金持ち国の中でさらに新需要を生み出していく国だ。
その新需要が世界に普及する中で、その設備を手に入れるために、その国から金を借りねばならず、資金の循環が始まっていく。

中国はどうみても所得が低すぎる。
貧乏国から金持ち国に変換する過程では経常収支が0になるのがやっとのはずだ。
それが現在のように大量の黒字を出しているのは、何かがおかしい。
中国国内での移動の自由の制限、農村の戸籍が都市の戸籍に変換できないようなことや、資本取引の規制などがその要因になっているのだろう。
基軸通貨国になるには、いろいろな問題がありすぎる。

中国が基軸通貨国になれない理由を一応書いてみたが、あまり簡単な形にはならなかった。
もっと明解に説明できないかと思うのだが、難しい。
その本質的な理由は、規制によって見かけだけは日本と同じように外貨準備をたくさん持ち、経常収支の黒字がたくさん出るようにしているからだ。
逆にいうと、規制をかけ続ければ基軸通貨国になれるのかもしれない。
でも、それは矛盾がありすぎてうまくいくわけがないと思う。

そうすると唯一の候補国は日本となる。
日本がデフレを脱却して需要が増加し、輸入が輸出を上回れば、基軸通貨国の地位が移動する可能性が出てくるのではないだろうか。
ただ、それは最終的に新規の需要を日本が生み出せるかにかかっている。
日本は一番早くバブル崩壊に直面した。
だから、そこから抜け出すのは日本が一番最初のはずだ。
日本が最初に抜け出せば、円が基軸通貨となり、日本が世界をリードすることになるだろう。

日本が次の覇権国になるという予想を私も大体持っているのだが、具体的にどうなるかというイメージがなかった。
それがドルは暴落ではなく上昇によって基軸通貨としての地位が追われるという理解で、日本が基軸通貨国になるイメージが見えた。
政治、軍事の覇権国にはならなくとも、日本は基軸通貨国として世界の経済をリードしていくだろう。
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