異をとなえん |

経済情勢雑感(2010/05/21)

2010.05.21 Fri

17:04:46

「おはぎゃー」の声で始まりそうな一日の朝だ。
ダウが400ドル近く下落して、1万68ドル、1万ドル割れ寸前だ。
日経も1万円から大幅に割れて始まっている。
この下げ自体は、昨日の為替市場で大幅なユーロ安が起こっていた以上、当然のことに思える。
ギリシャに始まった危機が世界に拡大してきたというところか。
今後どうなるか、ちょっと考えてみたい。

まず、第一に思うのは、やはり今回の危機の始まりはギリシャではなく、FRBの不動産担保証券の買い上げの停止ではないだろうか、ということだ。
3月末に打ち切られた影響が表面化してきたように見える。
FRBによる資金の供給が止まり、どういう経路かはわからないが、末端に行くほど金の流れが滞って、もっとも信用が低かったギリシャで表面化した。
ただでさえ、資金の流れが細くなっている所に、信用リスクが表面化したので一斉に資金の流れが止まり、世界に危機が再現したことになる。
危機が表面化した以上、とりあえずリスク資産は売り、投資家は収まるまで待つのが常道だろう。
当分株式市場は下げそうだ。

さて次に考えるのは、この危機がどこまで広がるか、あるいは深くなるかだ。
まず、リーマンショックほどひどくなることは流石にないような気がする。
金融機関の倒産は各国政府が阻止するだろう。
もちろん、金融機関の倒産を防ぐために各国政府が支援する能力があるかという問題はある。
ギリシャみたいに、国自体の信用がなくなれば、金融機関の支援などできない。
けれども、EUが曲がりなりにも、まとまって支援策を実施したように、一応協調はできた。
EUが一丸となって行動すれば、当分は持つだろう。

もちろん、そのための代償はある。
国家自体の信用性が問われる以上、財政政策を通じて景気の維持は図れない。
ギリシャが支援によって、大幅な財政赤字縮小の政策に回ることで、ギリシャの不況は拡大していく。
ポルトガルが空港建設などの公共事業の建設延長を決めたように、PIIGS諸国でも尻に火がついている以上、引き締め政策を強めざるを得ない。
EU全体としては、ある程度余力がありそうだけれど、リスクを取って財政政策を取れる国がない。
ドイツが筆頭となって財政政策を実行して、景気維持に努めるのが理想だが、そういうわけにはいかない。
日本やアメリカのように、最終的に国債を自国の中央銀行に買わせる能力を持っていれば、後先考えずに財政政策を発動できる。
デフォルトする危険はないからだ。
中央銀行が通貨を発行することでインフレになる危険性はあるが、デフレの危機が迫っている状況では、政府はそんなことを考えているゆとりがない。
しかし、ドイツの場合は難しい。
最終的な通貨の発行権がECBという、誰が最終的に責任を持つのかよくわからない機関にある以上、あまりにも財政赤字を拡大すれば自国自体が危機に陥ることもある。
さらに、財政赤字各国に対して、自らが範を示すためにも、ドイツが財政赤字を膨らますことはできない。
インフレを嫌う国民感情も大きい。
誰も責任を取れない以上、金融機関や危機に陥った国を助けるための支援はできても、それ以上はできない。
つまり、EU自体は全体として不況に沈みそうである。

そして、イギリスが次の焦点になる。
イギリスが日本・アメリカ型になるのか、それともアイスランド型になるかである。
日本・アメリカ型というのは危機になって自国通貨が上昇している以上、いざとなると財政政策による需要の拡大が可能の国である。
アメリカは経常収支赤字でも、とにかく危機にあってドル高になっているのだから、たぶんどこかで採算は取れているのだ。
イギリスがどちらになるのかよくわからない。
イギリスのポンドはリーマンショック後大幅に下落した。
これ以上財政赤字を増やすと更に下落する危険性がある。
ポンド建ての債券がきちんと返ってきたとしても、価値が大幅に下落していては意味がない。
ポンド建ての債務がある企業、銀行など以外、購入するリスクを取れなくなる。
でも、イギリス内部ではデフレなのかインフレなのかわからないような状況が続いている。
財政赤字を拡大する余地がまだあるかもしれない。
しかし、財政赤字を心配する声がそこらで上がっている。
選挙に勝った保守自民連立政権も財政赤字縮小に動いている。
債券市場から強制されるかどうかは別として、財政赤字縮小に動くことは需要が減るということだ。

ユーロ諸国、イギリスが需要縮小の方向に動くというのは、世界景気にとってマイナスだ。
アメリカ、日本も財政赤字縮小の方向に動いている以上、世界景気はどうなるだろうか。
それでも、底だけは抜けないと思う。
日本の企業の財務基盤はかなりしっかりしている。
アメリカの企業も、企業だけはそれほど借金が多くない。
2000年のIT危機の時にかなり債務を返却している。
リーマンショックによる消費者の打撃は大きいが、企業の債務が大きくなければ信用危機は発生しない。
アメリカの景気先行指数は悪化したが、リーマンショック後の梃入れが終わったところだろう。
落っこちて、上がって、又下がり始めるわけだ。
アメリカはバブル後の日本と同じく当分こんな状況が続くのではないかと思っている。

そこで日本の景気だ。
日本は1-3月期の年率換算の成長率が4.9%となった。
2009年10-12月期の成長も3.8%だったのだから、成長が加速している。
もちろん、当てにならない面はたくさんある。
そもそも日本のGDP速報は信用できない。
輸出の回復頼みによる成長ではないかという疑問もある。
消費は伸びているけれど、政府の補助金制度による助けもあって、どこまで本当の力なのか、よくわからない。
補助金等が止まれば、消費の伸びも止まってしまうかもしれない。
私はマンション市況が下げ止まったことや、物価の低下もあって、バブル後始めての本当の消費の回復なのではと期待している。
今までもそう予測して外してきているので当てにはならないが、それでも、マンション市況が下げ止まったことは資産価格の低下が止まったことだろうし、物価の低落が続いたことによる商品のお得感は強まっている。
経済成長率が4半期続けて3%を越えてきたことも、本当に久しぶりではないだろうか。

心配なのは輸出の回復だ。
現状維持で行けば、日本経済の自律回復である程度は行けそうな気もする。
ただ、現状維持で行けるかどうか、中国のバブルっぽさも含めて予想がつかない。
心配事はつきないわけだ。
日本経済が不調を続けて20年、あまりいい経験がないのだから懐疑的になるのも無理はない。

一つだけ、問題がなさそうなのは円高だ。
ユーロ安、ドル安で輸出企業の採算が心配だが、円高は長くは続かない。
円高をはね返すだけ投資が日本からは期待できる。
アマテラス製薬によるTOBの成功に見えるように、日本企業の財務状態は悪くない。
欧米企業の資金繰りが苦しくなっている以上、買収チャンスは多い。
円キャリートレードも期待できる。
日本国内にリスクを取れる資金がある以上、円高が一段落した時点で資金が出ていく。
バブル崩壊直後の政策金利は安くなっても、リスクを取れる資金、本当の金、富がない状態とは異っている。
欧州はそんなに判然とはしないが、アメリカにはそれなりに資金が流れていく。
円高が長く続かなければ輸出面での制約はそれほど大きくはない。

そんなわけで、いつのものように私は楽観的だ。
丁半バクチでどちらかに賭け続けていれがいつかは勝てるように、一方向だけの予測を言い続けていてもいつかは当たる。
丁半バクチではその予測には意味がないのだけれど、経済成長の場合は違う。
経済成長では、人類の歴史以来人間の生活はずっと向上してきた。
つまり、経済成長の予測では上がるに賭けていれば、基本的に100%勝てるのだ。
その考えがバブルを生み、そして、その崩壊も生む。
でも、バブル崩壊後20年そろそろ正しい目が出て欲しい。

アメリカは第二次世界大戦後軍事支出が急減したことで景気が悪くなるのを心配した。
戦後の反動と思えた消費の伸びは、経済専門家の予測を裏切り、続いていった。
大恐慌後の本当の成長が始まったのだ。
相変らす、日本についての専門家の経済成長の予測は厳しい。
この20年間裏切られ続けたことで、消費の継続的な伸びが信じられないのだ。
だから、消費の伸びが止まり、成長は止まると予測している。
けれども、いつか消費は伸び始める。
それが今回であっても不思議ではないと思っている。
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