異をとなえん |

袋小路に向かうアメリカの経済政策

2010.03.06 Sat

21:10:59

オバマ大統領は金融業界に宣戦を布告し、保護主義に向かって舵を取ろうとしている。
ウォール街を叩くことはアメリカ国民にとって受けのいい政策だからだ。
経済学の一般常識から言えば、金融業界の利益だけを減らすことは難しい。
変な規制は、直接の目標とした効果ではなく、別の部分に影響を及ぼす。
アメリカの銀行税も負担するのは別に人になる可能性が大きい。

参照:米国民が「オバマ大統領の900億ドル銀行税を払うことになる」

それでも、アメリカが規制措置を取らざるを得ないのは、アメリカ一般国民にとって、最早グローバリゼーションは利益になるものではないからかもしれない。
グローバリゼーションによる賃金の平準化は、アメリカ国民の多くの人の所得をむしろ減らそうとしている。
雇用所得自体が伸びていなくとも、アメリカ国民の不満が高くなかったのは住宅資産の高騰によってカバーされていたからだ。
住宅資産が上がらなくなれば、所得が伸びない、あるいは下がっている不満がもろに出てくる。
政府に対して文句を言い始める。
民主主義の国においては、国民の不満を聞かざるを得ない。
グローバリゼーションをさらに進めることに対して、抵抗は強くなっていく。

しかし、グローバリゼーションがアメリカの一般国民にとって利益にならなくとも、それは確実に世界の所得を増やしていた。
最近の世界的な成長への一番の貢献者はアメリカの多国籍企業であった。
そして、それをサポートする投資銀行などの金融機関が世界の新興国の成長を支えてきたのだ。
投資銀行などの利益を抑制するということは、このグローバリゼーションの流れを止めようとするものだ。
それは間違いなく世界全体の成長を阻害するだろう。
つまりは成長の停止だ。

ウォール街叩きはバブル崩壊後の金融業界に対する日本の批判を思いおこさせる。
金融業界の給与が製造業に対して高いということで各種の批判が起こっていた。
バブル崩壊に対する責任を取れということで日本中がわきたっていたのだ。
その国民の意識が高金利政策に結びつき、インフレ期待を完全に消しさってしまった。
リフレ政策も難しくなる。
FRBのバーナンキ議長への再任に対する批判票はそれが原因だと思う。
金融業界に対する援助とも言える緩和策は、ますます難しい。
アメリカにおいて、再び資産価格の上昇を起こすのは極めて困難だろう。

資産価格が上昇しなければ、グローバリゼーションを進めることはできない。
アメリカへの輸出が増えなければ、単純に新興国の輸出も増やすことはできなくなる。
不況であれば労働者は他の職業に移ることはせず、賃金を下げても雇用を守ろうとするからだ。
それはグローバリゼーションによって莫大な利益を手中にしてきたアメリカ多国籍企業の利益を減退させる。

アメリカの輸出の増加政策も同じだ。
確かにアメリカは最近のドル安によって輸出が伸びている。
経済にもいい影響を及ぼしている。
けれども、それは世界全体の景気が良くなっているからだ。
世界の景気が悪ければ輸出が伸びることはないし、そもそも景気が悪ければドル安にはならない。
ドバイやギリシャのように、リスクが意識されればドルは高くなる。
ドルが高くなれば、輸出は増えない。

結局、世界の景気を支えてきたのは、アメリカの住宅資産の上昇だった。
その住宅資産の上昇がなければ世界の景気は簡単にはよくならない。
そして、住宅資産を復活させる政策をオバマ大統領は自ら止めようとしている。
どう考えてもアメリカ経済は袋小路に入っている気がする。
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韓国の企業になぜ日本は勝てないのだろうか?

2010.03.06 Sat

05:39:18

ウォン安とか法人税が低いとかという理由はもちろんある。
実際韓国の企業の技術力とかがついてきて、ほぼ互角になった以上、それらの差は致命的なものになっている可能性が高い。
しかし、それ以上に大きな理由として、貿易についての比較優位の原則がある。
韓国の輸出産業はかなり偏っている。
造船、鉄鋼、半導体、携帯電話、自動車、薄型テレビ、そのぐらいではないか。
石油製品もあったかもしれない。
記憶で書いているので、それほど定かではないが、それほど広い範囲には及んでいない。
サムスン、現代自動車、LG、ポスコなどの主要企業の輸出にほとんど負っている。

日本は違う。
日本の輸出する製品は非常に幅広くなっている。
特に素材部品部門が強くなっていて、消費者ではなく生産者に供給している。
直接消費者ではないので価格よりも品質が重視されることも、それらの製品に特化しているといっていい。
そして、良く言われるように、韓国の輸出産業への素材や部品を供給しているのは日本の輸出産業なのである。

そこで、貿易の比較優位の原則が重要になってくる。
もし、日本が韓国の企業と競争している部門で勝つならば、韓国は輸出できるものがなくなってしまう。
輸出できなければ、貿易収支の悪化から、ウォン安になる。
そうすれば競争力は回復して、日本の企業を上回るようになるわけだ。
貿易収支の悪化が単純にウォン安につながるかどうかは難しい。
為替相場に最大の影響を与えているのは、金利ということになっている。
しかし、それでもサムスンが日本の企業に負ければ景気が悪くなることで、金利が安くなり、やはりウォン安になるだろう。
韓国の競争力が復活することは間違いない。

結局、日本の企業、ソニー、松下、シャープが競争しているのは韓国の企業ではないのだ。
日本の信越化学や旭硝子などの企業と戦っているのだ。
それらの企業に比べて、生産性が低いから韓国に負けている。
生産性と言っても、この場合は寡占市場における支配の能力によって、価格を上昇させる力を持っているということだ。
価格を上昇させることができるので、生産性は高くなるというわけだ。
逆に言うと価格勝負の市場の場合、韓国は勝てるようになるまでウォンは安くなる。
だから韓国の企業は勝つというわけだ。

もちろん、こういう単純ではないパターンもある。
韓国内でも組立てしていたら、採算が取れない製品も多くなっている。
携帯電話や家電とかは、中国で組立てないと競争に勝てない。
そういう部門で日本が負けるのは、日本企業の力不足だろう。
特にちょっと前の景気が良かった時に、工場を日本に持ってきたのが良かったことなのか。
その時点では、確かに日本の工場立地に優位性があったのだろうけれど、長い目で見ると問題だった気がする。
ただ、この点は日本企業も本格的に世界展開しなくてはいけないと感じているみたいなので、期待できる。
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