異をとなえん |

続・日本の科学技術のレベルは落ちているのか?

2010.03.31 Wed

05:28:18

昨日の記事にコメントやtwitterでの意見があった。
私の記事に反応があるのは珍しいので、とりあえずうれしい。
回答をまとめて記事にしておく。

まず、最初に言っておきたいのは、前回の記事での要点は、科学論文生産数の減少が必ずしも科学技術のレベルと関係がないのではという仮説である。
それが正しいかどうかはよくわからない。
検証する方法としては、国立大学の予算関連を決定している人に論文数の評価基準の扱いが近年変わったかどうかを尋ねるのが一番早いのではないかと思っている。
科学技術のレベル自体については言及していない。
上がっているのではないかという印象を持っているだけで、どうやったら検証できるのか全然わからない状態である。

それでは、まずぽんぽんさんのコメントへの回答。
引用開始

有能な研究者や技術者が高齢化でどんどん引退しているのかも知れませんね。
日本各地の年齢別人口グラフを見ると分かり易いかも知れません。
引用終了

私のイメージとしては定年間近の研究者は一番論文の生産性が低いです。
アメリカの大学でも終身を取ったら、生産性は低くなるという話を聞きます。
だから、引退する研究者はそれほど関係ないのでは?
年齢構成も関係するかも知れませんが、研究者数が増えていれば、それほど大きな影響があるとは思えないでいます。

twitterからの意見。

vikingjpnさんの投稿。
引用開始

反論を書いた方はおそらく研究者ではないと思われるので…まぁその通りですね。 #f_o_s RT @fun9tion 総論文数減ってもレベル高いというなら、ABクラス論文の割合が増えた証明がないと説得力ないな
引用終了

科学技術のレベルが高くなっているかどうかは、わかりません。
そういう印象を持っているだけで、何か根拠を出せないか昔から考えているのだけれど、どうしていいかわからない状態でいます。

vikingjpnさんの投稿。
引用開始

僕個人の考え(別に反駁ではない)としては、「日本の科学のレベルは上がっているという印象」がどこから来たのかを聞いてみたいところです。 http://bit.ly/bCCnUh #f_o_s
引用終了

たとえば、日本の科学技術は進歩しているのだろうか?で書いたのですが、理化学研究所の研究発表数が急増しています。

たとえば、日本のレベルは上がっているで書いたのですが、動くユニコーンガンダムを作ってみた「試作偏」は私の目では結構凄いです。
その部門の人から見るとたいしたことはないのかも知れないけど、無名の若い研究者であろう人がいとも簡単そうにこういう業績を出してくることに、私は日本のレベルが底上げされているという印象を受けます。

たとえば、次の二つは最近発表された物ですけれど、私にはけっこう凄く見えます。

「現在3カ月かかるヒトの全遺伝情報(ゲノム)が1日で解読できる」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100322-00000010-jij-soci(すでに削除済み)

引用開始

 わずか1ナノメートル(ナノは10億分の1)のすき間にDNA塩基分子を通し、電気を
流して塩基を識別する実験に大阪大の川合知二教授らのグループが成功した。
この技術を応用すれば、現在3カ月かかるヒトの全遺伝情報(ゲノム)が1日で解読
できるという。21日付の英科学誌「ネイチャー・ナノテクノロジー」電子版で発表した。

 DNAは二重のらせん構造で、アデニン、グアニン、シトシン、チミンの塩基が連なっ
ている。塩基の並び方が遺伝情報を表すが、1990年代にヒトゲノムを解読した際は
8年で300億円掛かった。現在は3カ月で10億円、数年後に登場する次世代DNAシー
ケンサー(解析装置)でも2カ月で1000万円掛かるとされる。

 研究グループは、ナノポアと呼ばれる穴の入り口に1ナノのすき間を空けた電極を
置き、DNA塩基分子の水溶液を通して電流の大きさで塩基を1個ずつ判読。DNAを
一度バラバラにして増やす従来の方法に比べて長いDNAを解析でき、時間と費用
が抑えられる。この技術を使った次々世代シーケンサーは解読に 1日、費用は10
万円で済むという。

 川合教授は「患者の遺伝子情報を踏まえた個別医療や犯罪捜査、世界的大流行
に備えた新型ウイルス検出などに活用できる」と話している。
引用終了

絶縁体で電気信号伝達=パソコン8割省電力化も−電子の「スピン」使う・東北大など

引用開始

 東北大金属材料研究所などの研究チームは、電流を通さない絶縁体を使って
電気信号を伝達することに成功した。
電子そのものが移動する電流ではなく、電子の自転(スピン)が
次々に伝わる性質を利用する方法で、
パソコンや携帯電話などに使われる集積回路サイズなら
約8割の省エネが可能という。論文は11日付の英科学誌ネイチャーに掲載された。
 通常の集積回路などは、金属や半導体に電流を流すことで電気信号を伝達する。
しかし、電流が流れる際には金属などの内部抵抗による熱(ジュール熱)が生じ、
エネルギーを失うため、素子の小型化や省電力化の妨げになっていた。
 同研究所の斉藤英治教授(物性物理学)らの研究チームは2006年、
白金など一部の金属に電流を流すと、電子のスピンの方向が次々に変化して
隣の電子に伝わる「スピン波」が生じたり、
逆にスピン波が金属に電流を生じさせたりする現象を発見。
この現象を利用して、電気信号を伝達することを考えた。
 研究チームは、「磁性ガーネット」という電流は通さないものの
磁石の性質を帯びやすい絶縁体の両端に白金を取り付け、
片方の白金に電流を流したところ、白金で生じたスピン波が絶縁体を伝わり、
約1ミリ離れた先にあるもう片方の白金に電流が検出された。
 絶縁体そのものには電流が流れないため、ジュール熱はゼロ。
伝達によるエネルギーの損失はごく小さく、集積回路クラスなら
消費電力は約80%削減できる計算だという。
斉藤教授は「絶縁体では電気信号を伝えられないという300年来の常識を覆す発見。
省エネなどさまざまな応用が期待できる」と話している。
引用終了

他にも、最近このぐらいのレベルの発表をよく見かける気がします。
これらの研究が本当に凄いのかどうかは、素人の私にはよくわかりません。
また、これらの研究が凄くても、他の凄いと思っているものはたいしたことないのかも知れません。
さらに、アメリカではこれらを上回る研究が続々と進んでいるのかもしれません。
ちょっと分析のしようがないです。
そんなわけで、印象というだけになります。

以上、回答でした。

なんか、昔の投稿を読み返していたら、書いていることが変わってなかった。
進歩がない。
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日本の科学技術のレベルは落ちているのか?

2010.03.30 Tue

02:49:31

日本の科学論文生産数が減少しているという記事(「グラフで見る日本の科学研究の後退」)を読んで衝撃を受けた。
「日本の2005-2009の論文生産数は1999-2003の水準より減少」していると言うのだ。
私は日本の科学のレベルは上がっているという印象を持っていたので、どうしてかなと疑問を持った。
記事を読んだ限りでは、よくわからなかったので検索して見ると、「ついに日本のサイエンスの「老化」が始まった?:相対的のみならず、絶対的な生産性の低下という事実が示すもの(追記あり)」という、より分析してある記事を見つけた。

その中では、原因を次のように予測している。

引用開始

その時の議論を踏まえるに、やはり「日本のサイエンスの現場で論文を書く研究者が減り、論文を書かない研究者が増えてきた結果として、総論文数自体が頭打ちになっている」と見るのが妥当なのだと僕は睨んでおります。その原因はここまでのデータからでは全くわかりませんが、雑用の増加や大学教員の絶対数の減少による一人当たりの教育義務の増加といった事情によって、論文を「書ける」研究者が減っているということも大きな要因になっているのではないかとも勘繰れます。
引用終了

ただ、これには納得がいかない。
その記事の中にもあるように研究者は純増している。
予算も研究費はたいして変わっていない。

科学技術予算の見方(1)を参照

引用開始

 このうち一般会計の科学技術振興費は、財務省によって、それに含まれる事業が限定され、政府予算のうち政策的経費と呼ばれる政策的にメリハリをつける経費の中で、唯一、張り(ハリ)の対象となって、最近の「ゼロ・シーリング予算」の中でも、毎年、1%程度ずつ増加しています。その資金規模は、2001年度予算の1兆1,000億円から、2008年度では1兆3,600億円となっています。(その他の科学技術関係経費は、減少することがありますから、科学技術関係経費の全体額も増減します。実際、2005〜2007年度の3年間は、科学技術関係経費は、前年に比べて減少することが続きました。)
引用終了

論文の生産するのが人間である以上、研究者が増えれば生産数も増加するのが普通である。
それなのに減ったのは、純粋に能力がないからという可能性もあるけれど、むしろ論文数がそれほど重要視されなくなったからではないだろうか。
2005-2009の間、中国の科学論文数は急増しているが、質は悪いという意見をよく見る。
日本も、もし論文数が重要ならば、質の悪い論文を量産できたはずだ。

では、なぜ論文数が減少したのか?
最大の要因は国立大学の独立法人化に伴ない、研究者の評価基準が変わったせいではないだろうか。

そのブログがリンクしている記事に次のような物があった。

日本人ノーベル賞受賞に見る日本の大学の研究環境の悪さ

そこを見ると、評価項目が次のようになっている。
引用開始

 どういう評価項目があるか、というと、研究分野では、(1)国の科学研究費(科研費)をはじめとする研究費総額が多いか少ないか、(2)国や民間企業との共同研究をしているかどうか、(3)国や地方自治体などの審議会の委員になっているかどうか、(4)世界や日本の学会の役員になっているか、招待講演を年間何回行っているか、あるいは学会、研究会といった集まりを主宰したことがあるか、等々といった項目にそれぞれ点数が付けられ、その総点と上司の判断を加えて、教員各自の評価がなされるわけである。
引用終了

この中では、民間企業との共同研究が大きいように感じる。
文部科学省の官僚は理系がおらず、基本的に科学者の研究の評価ができない。
だから、論文数を評価基準として、予算の配分を行なっていたようにみえる。
その結果、いままで大学の研究者はできるだけ論文を生産するようにした。
独立法人化に伴ない大学は、収入源の確保のために企業との共同研究をより重視せざるを得なくなった。
企業との共同研究の場合、企業は自分たちにとって有益な研究に金を出そうとするはずだ。
これは短期の実用研究という意味ではなく、長期的な視野での基礎研究についてもあてはまる。
企業の技術者は単なる数値の論文数ではなく、研究自体の価値を評価できる。
その結果、研究者は質の低い論文を量産するのではなく、意味のある研究に集中したのではないだろうか。

日本の大企業はちょっと前、外国の大学には多額の寄付をしているのに、日本の大学にはお金を出していなかった。
1998年に日本版バイドール法である大学等技術移転促進法ができて、企業との連係が進み始めた。
そして、国立大学の独立行政法人化に伴ない、それが促進されているのだと思う。
アメリカの大学が基本私立大学であり、かつ業績を挙げていることを考えれば、いい方向に進んでいるはずだ。
日本の科学技術のレベルが落ちているかどうかはわからないけれど、論文数の低下は直接関係ないというのが私の意見だ。
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twitterを始める

2010.03.27 Sat

20:34:05

最近、twitterを始めた。
munya_jaで、脈絡もなく書いている。
フォローしてくれる人がいるとうれしい。

twitter自体はわからない所が多いのだけれど、みんなで集まっているような感じを受け取れるのがちょっといい感じだ。
人脈がある人には便利そうな気がする。
まだ利用できているとは言い難いが、ブックマーク替わりに使ってみることで、細々と続くであろう。
そんなわけで、idを公開しておく。
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中国バブルの最終局面

2010.03.25 Thu

04:09:54

中国の経済はバブルだと判断し、だから賃金が上昇せず、インフレが発生していないのだと「中国がアメリカに対して敵対的になっている理由」で述べた。
でも、最近沿岸部で労働者が雇えなくなっているのだというニュースが聞こえてくる。
賃金も上昇しつつあるみたいだ。
これは何を意味しているのだろうか。
私にはバブルの最終局面に移動しつつあるように見える。
このままではインフレが発生し、社会に多大な負担をかけるだろう。
中国はインフレを許容できないので、それを止めるために引き締め政策に入らざるを得ない。
バブルが発生しているならば、引き締め局面では資産価格の暴落が起きる。
今年2010年中に引き締め局面に入るとすれば、来年2011年までには暴落が起こるだろう。

もっとも、北京オリンピック前に株式価格の暴落があったように、今回の土地価格の上昇も高度経済成長における一つの現象かもしれない。
土地価格は今後下落に転じるとなぜ言えるのだろうか。
あるいは、土地価格が下落したとしても、再度上昇しないとなぜ言えるのだろうか。
前の株式価格の暴落が元に戻りつつあるように、土地価格も上がって下げてまた上げるだけなのだろうか。
その答えは私にはまだわからない。
予測できるのは、もしバブルだったとしたら何が起こるかだけだ。
ただ、バブルの最終局面は株式ではなく、土地の上昇によるものだと思う。
日本にしても、アメリカにしても、最後は不動産価格の上昇が最終局面だ。
中国も土地価格の上昇が最終局面の可能性は十分にある。

今回がバブルだとしたら、資産価格の上昇は価格体系のゆがみを引き起こすことになる。
資産価格が上昇することによって、人々は消費を増やしていく。
あるいは、投資が増えていく。
その結果、需要が増大し、価格が上昇し、経済はその価格に合わせて、均衡状態を作り出していく。
つまり、自分の収入が賃金だけだったら、絶対に買わないものを買っている人たちがいるということだ。
そして、そういう人たちがたくさんいるならば、他の人の消費も最終的にはそれに依存する。
他の人は質素な生活をしていても、その賃金が贅沢をしている人に依存しているとすれば、贅沢をしている人たちが倹約生活を始めたら、賃金が下がらざるを得ないということだ。
つまり、バブルによって、経済構造が変化したということだ。

中国の近年の経済成長は外国からの投資による、輸出依存型の成長だった。
輸出金額自体のGDPに占める割合も非常に大きかったし、その輸出を行なうための外国からの投資による中国の中での資本形成も大きかった。
中国の低賃金労働者の存在が外国からの投資を引き付け、高度成長を生み出したのだ。
低賃金だけだったら、中国以外にも国はある。
中国の高度成長には、中国政府のサポートも大きかった。
港湾などの物流設備の建設など、輸出のために必要なインフラの構築や制度をきちんと整備した。
それらが、コストを縮小させ、輸出を増大させることを可能にした。

この状態が続けば、低賃金労働力が枯渇し、賃金の上昇が始まる。
これは中国の国際競争力を弱め、経済成長の原動力を失わせるはずだ。
もちろん、普通の状況で起きているなら問題はない。
通常の状況では、賃金が上昇して極めて競争力が弱い部分の企業が存続できなくなれば、それらの企業は労働者を吐き出すはずだ。
結果、新たな経済の均衡状態に達する。
もちろん、経済成長につれて労働者の生産性は確実に上昇していくことが予想されるから、均衡点もそれに連れて変わっていく。
つまり、生産性の上昇以上の賃金上昇は自動的に補正されるということだ。
少し上がった賃金の上昇は国内経済の新たな需要を生み、中国全体の効用が増加していくことになる。

でも、現在バブルが生じているとする。
賃金は生産性の上昇以上に上がり、均衡点を大きく越えていくようになる。
その場合、簡単に補正が効かなくなる。
一時的な停滞ではなく、実質賃金の低下自体が必要になるかもしれない。
それは簡単にはできない。
経済が大きく停滞する原因になる。

中国に今回バブルが発生しているとすれば、それはアメリカの金融危機による、輸出の減少を防ぐための、公共投資の増大から始まった。
中国政府の金融緩和と公共投資の増大が爆発的な需要増加を生み出している。
日本のバブルがブラックマンデーによる株式の暴落を食い止めるための、内需拡大から始まったことを思いださせる。
爆発的な需要増加は内陸部で労働者の職を確保した。
高速鉄道の建設、高速道路の建設と中国は内陸部で大幅に公共事業を増やしている。
中国内陸部の労働者は沿岸部に出てこなくなりつつある。
その結果、中国の沿岸部の労働者の賃金の上昇が始まっている。

中国の公共事業が意味のあるものならばいい。
それは中国の労働者の生産性を上昇させているのだから、賃金が上昇し、輸出する力を弱っても問題ないことになる。
でも、それが投資ではなく、無駄な消費であったらどうなるだろうか。
あるいは、北京や上海などで建設されているマンションの需要が本当にあるかだ。
それらの需要が偽物だとしたら、所有者は最終的には消費や投資を減らすしかなくなる。
バブルの崩壊というわけだ。
そうなれば、上昇した賃金で均衡点に達していた経済は大幅な需要不足に陥いる。
輸出を増やしたくとも、大幅に上昇した賃金の元では国際競争力がなくなり、簡単には輸出を増やせなくなる。
これがバブル崩壊による経済の停滞だ。

中国政府は経済の停滞を許容しない。
公共投資を財政に余裕のある限り続ける。
それは歪んだ賃金体系を維持し、ますます狂った状態を維持させる。
日本のバブル崩壊後の公共投資と似たようにだ。
中国が日本と違うのは、日本の場合それが役に立たなければ、時が経てば批判が起こり、それを止める力が生まれる。
中国ではそれが難しい。
マスコミを支配している中国共産党は、世論の批判もなく無駄な公共投資を延々と続けそうだ。

中国自体の中では技術力の上昇は着実に続いているだろう。
最近の工作機械の生産高で中国が日本を上回ったのは、その表れの一つだ。
だから、バブルが崩壊したとしても、経済成長が続いていくような気もする。
けれども、それは現在の価格体系で最適化した結果だ。
価格体系が崩壊すれば、新たに再構築するしかない。
それには時間がかかるだろう。

中国がバブル崩壊後も経済成長を維持しようとしたら、過大な公共投資を続けるしかない。
それは社会に負担をかける。
問題は中国社会がそれに耐えられるかだ。
高度経済成長を続け、所得が伸びていたからこそ、人々はいろいろな不満を耐えてきたと思う。
経済が停滞すれば不満は蓄積され、政府への抗議もさかんになるだろう。
経済をきちんと成長させる、正しい政策を要求するようになる。
正しい政策があるかないかが問題ではない。
自分たちが不満だということを表すために、政府に文句をつけるのだ。
やはり、最終的にはカオスがやってきそうだ。

なんか、「中国はバブルなのか?」と同じことを書いている気がする。
結論も同じだ。
でも、表現だけは少しわかりやすくなっていないだろうか。
そうでないと、ちょっと悲しい。
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平壌の景気がいい不思議

2010.03.23 Tue

02:12:57

平壌の景気がいいらしい。
非常に不思議である。
去年12月のデノミ以後、北朝鮮では経済的な混乱が続いている。
100分の1のデノミをしているのに、賃金は変わらないような常識外れの政策をしているので、混乱が続くのは当然のように思える。
旧通貨を新通貨に変換する際には、政府は交換金額の制約をした。
つまり、今回のデノミは実質的に旧通貨を溜め込んできた人々から、金を盗んだと同じなのである。
あまりにも混乱がひどいことから、交換金額の制限を緩和するとかしているみたいだが、通貨に対して不信感が生まれたのは当然だろう。
通貨に対する信用が崩壊したら、経済システム自体が動かない。
農作物を持っている人間は売りたくとも、通貨が信用できないなら売りようがない。
貿易にしても、中国側で旧通貨を持っている人間は結構いたことだろう。
しかし、中国人が持つ旧通貨など、北朝鮮政府は交換してくれそうにない。
現金の勝手な持ち出しは禁止していたとか主張するに決まっている。
そうすると、中国側では輸出ができなくなってしまう。
代わりに受け取るものがないからだ。
たとえインフレ気味であっても、為替市場が動いているならば、ある程度のリスク費用を取ることで、北朝鮮の通貨を受け取ることができた。
それがなくなれば、どうしようもない。
貿易がほとんど途絶するのも当然のことだろう。

北朝鮮内部では、通貨システムの崩壊によって、飢餓すら発生したなどと書かれている。
失政の最たるものと言えよう。
なんというか、ここまで通貨制度に無知でも国家を運営できることが一つの謎である。
北朝鮮では、外国通貨の流通を禁止したらしいが、実質的にうやむやになっているらしい。
通貨制度の信認が崩壊した以上、商人は信頼できる通貨で商売をするしかない。
新通貨だって、いつ又新しい通貨に変わるかわからないので、信頼できる通貨は、中国の人民元しかない。
実質的に人民元が流通しているのは当然に思える。

さて、そこで平壌の景気がいいという話である。
どっかの雑誌のグラビアで、かの有名な柳京ホテルの建設が再開されているという写真も載っていた。
ただ、何の雑誌だかわからなくなってしまった。
新潮が文春だったと思うのだが、覚えていない。
下記の記事でも平壌は落ち着いているという話だ。

やりたい放題の北朝鮮に 振り回される中国

引用開始

 しかし北朝鮮に暮らす在日朝鮮人の一人は、「混乱と呼べるような混乱は見られない」という。実際、私自信も3月の上旬から4日間平壌を訪問し、限られた行動範囲のなかで見る限り、大混乱という現実には出会っていない。
引用終了

もっとも、北朝鮮全体が混乱していないというのは、ちょっと納得できなくはあるけれど。

平壌の景気がいいらしいというのはなぜだろう?
一つは、北朝鮮政府のお膝元として、いろいろと優遇措置を受けているのかもしれない。
国全体としては、厳しい状態であっても、平壌が混乱していなければ、世界にはわからない。
外国人ジャーナリストが直接行くことができるのは平壌だけだからだ。
平壌は外国へのショーウインドウだから、特別に金を注ぎこんでいる。
柳京ホテルについては、建設の再開は2008年からだということで、直接今回のデノミとは変わらない。
そうすると、ただ単に目立った混乱がないだけという可能性もある。

もう一つの考え方として、実際に平壌の景気がいいのかもしれない。
理由は今回のデノミだ。
デノミは秘密裏に用意され、電撃的に実行されたという話であっても、実際には情報は漏れているはずだ。
政府党の中枢部にはそれなりの情報が出回る。
そうすると、事前にその情報を察知した人間は、ウォンを事前に交換しておく。
一番ありそうなのは、中国の人民元だろうか。
その他にもドルや実際の物資と変換しておくかもしれない。
紙切れになる通貨と実際に価値ある物と変換しているのだから、特権層はある程度得をしているはずだ。
情報を知っている人間にとって理想的なのは、事前に旧通貨を借りておくことだろうけど、それは難しいかもしれない。
しかし、北朝鮮政府自体はまた別物になる。
デノミすることは知っているのだから、事前に旧通貨を印刷して、それは価値あるものに変換しておけば、ぼろ儲けだ。
ここまで来ると、政策の無知とか言うより、単なる盗みだが、北朝鮮政府ならやっても不思議はない気がする。
どうせ、旧通貨が退蔵されるのは、闇商人だと思えば積極的に仕掛けることもあり得る。

そうすると、それらの利益は北朝鮮上層部を中心に積上がる。
儲かった人間が大量に住んでいる平壌の景気が良くても不思議はなくなる。
タコが自分の足を食べているのと同じような、国家としての末期症状だが、北朝鮮政府はその位国民を敵視している可能性はある。
結論としては、平壌の景気がいいとしたら、それ自体が他の地域からの収奪を意味している。
平壌以外の景気はより悪化しているはずだ。
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中国がアメリカに対して敵対的になっている理由

2010.03.21 Sun

20:52:32

中国がアメリカに対して敵対的になっている理由が気になっている。
WEDGE Infinityというサイトのチャイナ・ウォッチャーの視点というシリーズを最近見つけたが、なかなか面白い視点で参考になる。
その中の中華VSアングロサクソン 冷戦時代到来か?という記事では、中国が欧米に対して強硬外交に転換したと指摘している。
米中関係において、アメリカが中国に対して強硬姿勢にならざるを得ないのではないかと私は考え、そういう記事も書いた。
けれども、中国がアメリカに対して敵対的になるかどうかは、あまり意識していなかった。
中国がアメリカに対して敵対する理由があるのだろうか。
そこらへんを考えてみた。

まず、アメリカが中国に対して敵対的になっている理由はアメリカの製造業が中国に対して進出していくことに耐えられなくなっているからである。
多国籍企業の経営者の視点として見れば、アメリカの労働者も中国の労働者も変わらない。
ほぼ同じ労働をして賃金を安ければ、そちらに工場を移していく。
今までは、製造業の仕事がアメリカから失われても、住宅価格の高騰によって、アメリカの所得は増えていたので、それほど問題は起こらなかった。
景気が良かったので、工場の職を失った人も別の仕事にありつくことができた。
しかし、住宅価格の上昇が止まり、景気が悪化すれば、失業者は新たな職にありつくことができない。
そのために、労働者は工場の移転に強力に抵抗するようになる。
労働者として抵抗するには弱くとも、彼らはアメリカの有権者としての力を持っている。
政府に圧力をかけることによって、制度自体の変更を目指すことになる。
アメリカでは保護主義的な力が噴出し、元を高くするように中国に求めているのも、その一つ現れとなる。
アメリカが中国に対して強硬姿勢に転じたのはそのためだ。

それに対して中国は低姿勢でやり過ごすのではないかと思っていた。
しかし、中国は力には力と、アメリカに強力に反撃しようとしている。
その理由はなぜだろうか。
たとえば、通貨が元高に振れるのは中国にとって、それほど問題ではないと思っている。
なぜ中国は元高を激しく否定するのだろうか?

中国はインフレを激しく嫌っている。
その理由はインフレによって、社会構造が壊れることを怖れているからだ。
インフレにより、追い詰められた低所得の人々が流動化し、都会に集中して、過激化することを一番心配している。
だから、インフレが発生すると、それを必死に止めようとするし、インフレにならないように、都市と地方の間の流動をできるだけ減らそうとしている。
戸籍制度を維持して地方から都市に人口が移動しないようにし、交通網の充実を遅らせてきた。
それでも、経済成長が続き、一人当りの生産性が上昇していけば、インフレを避けることができない。
正確にはインフレが元高かの二者択一である。
インフレは、貿易財を生産する労働者が増加して、労働市場が逼迫し、賃金が上昇し、サービス業の労働者の賃金も上昇して、全般的に物価が上昇することになる。
元高は、貿易財を生産する企業の競争力を弱めて、生産が伸びなくなる。
労働市場の需要は減るので、賃金は上昇しない。
しかし、輸入品が安くなることで、相対的に競争力の弱い市場に外国から商品が入ってくる。
中国の場合は農業だと思うが、その場合やはり農家から人が押し出されてゆくことになる。
大きな観点から見れば、インフレも元高も同じような影響を及ぼす。

しかし、短期的には当然違うはずで、中国政府が数年前に為替を元高に向けたのは、インフレより元高を好むからだ。
インフレは労働市場の逼迫によって、人が動くことで、社会に変動が起きていく。
それに対して元高は、輸入品が地方に浸透していくことで社会を変動させる。
人の移動の方が、中国政府にとっては直接的な問題で、阻止したい。
それに対して、商品の移動はシステムが整っていないとなかなか進まない。
小売業が輸入品を扱ってくれないと、地方の消費者は買えない。
それらの観点から、数年前中国政府は元高を選んでいると考えていた。

現在、中国政府は元高を精一杯拒否している。
外国から圧力を受けて実行するのは嫌だという面子の問題もあるけれど、それ以外の理由はないだろうか。
一つはバブルな気がする。
本来ならインフレになるはずなのに、バブルが発生してそれが抑えられている。
消費に向かうエネルギーが全て投資に向けられることによって、インフレを止めているのだと思う。
仕組みはよくわからないが、バブルにはインフレを短期的には抑える力がある。
インフレが発生していなければ、中国政府は元高によるインフレ抑制の努力をする必要がない。
むしろ、競争力を落とすだけ不利だと考えているのだろう。

もう一つは、やはりナショナリズムだ。
中国の経済成長は、先進国と中国の間の賃金の差による利益を多国籍企業と中国政府が手にすることで実現した。
労働者にはインフレが進んでいないことからもわかるように、あまり利益は分配されていない。
それが、労働者と経営者の間の格差を生んでいる。
制度的な都市と地方の間の格差も含めて、中国国民の間には潜在的な不満が高まっている。
その不満を発散させるために、ナショナリズムが利用されているわけだ。
歴史によくある、内政の不満を転換させるために、外交で得点を稼ごうとするケースだ。
欧米に対して、強硬姿勢に転換したのも、それが理由だろう。

アメリカが中国に対して敵対的になり、中国がアメリカに対して敵対的になる以上、それを緩和する術はない。
対立はエスカレートしていくはずだ。
具体的な未来はよく見えないが、あらゆる点で最悪の事態を想定する必要がある。
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ワンピースはなぜアメリカで受けないのか

2010.03.21 Sun

03:30:59

ワンピースは最新刊が日本で初版300万冊を越え、日本で最も売れる本となっている。
現在世界で最も売れているマンガはNARUTOだが、なぜワンピースは世界で売れないのだろうか。

世界で売れない最大の要因はアメリカで売れていないことである。
アメリカ以外の国ではNARUTOには負けているが、その次くらいにつけている国が多い。
けれども、アメリカでは全然売れていない。
VIZが必死になってキャンペーンを行ない、出版スピードを上げて、日本の最新刊まで一気に追いつこうとしている。
それでも状況は厳しいかもしれない。
アメリカでワンピースが売れない要因は何があるのだろうか?

ワンピースが売れないのは、アニメ放送において失敗したことだ。
大幅に子供向けに規制して放送しようとしたが、それをファンに嫌われて大幅に失速した。
煙草をキャンディに、ピストルをおもちゃに変えるのが、子供だましとされたのだ。
元々のファンが少ない中、その数少ないファンを批判的にさせたことで人気が出なかった。
もっとも、原作のファンが少なかったのだから、アニメとしてのファンを持たせれば、それほど問題はないというのが、テレビ局側の考えだったと思う。
それでは、なぜアニメにファンがつかなかったのか?
そして、元々のマンガとしてのファンが少ない原因は何か?

ワンピースは子供向けと大人向けの両方にフックを持っている。
子供向けには、体がゴムで伸びるといった動きを伴うアクション主体のギャグを使っている。
大人向けには、複雑なプロットを持たせ、伏線を縦横に使って感動的な物語を構成している。
その結果、ジャンプの雑誌の中でもアンケートは一位近くをほとんどキープし続け、なおかつ単行本売上高NO1である。
しかし、2ちゃんねるのアンチ層では、子供っぽいという批判も出てくる。
少年期を抜けて、青年期に入ろうとする人には、ワンピースの子供っぽさが、どうも気に障るようだ。

アメリカではマンガを読む層がようやく育ってきた。
しかし、その層はまだ小さく、少年期を離れ、親離れしつつある層が主体に見える。
それ以上の年齢の読者は、まだ育っていない。
ワンピースは、その反抗期にある読者層に対して、ある意味反感を買いやすい。
彼らは子供っぽいということでディズニーを目の敵にしているが、絵柄が似ていることもあって、ワンピースをディズニー同様のマンガとしてとらえ、読んでくれない。
かと言って、子供向けのマンガとしては、ワンピースはいろいろとアメリカの規制に引っ掛かっるので売りにくい。
大人向けのマンガとして売る手もあるのだろうが、読者の数が少ないと大変だ。
そんな訳で、ワンピースの読者層として引っ掛かりやすい部分が読んでくれず、アメリカの読者層の主体である青年は読まず嫌いになってしまうので、ワンピースは売れないでいる。

アメリカ以外の国々では、読者層がもう少し広くなっている。
アメリカはマンガやアニメが浸透しはじめた国では、もっとも遅い国だからだ。
読者層が広ければ、幅広い見方ができる。
それでも、青年期にマンガを読む人間が多いので、トップはNARUTOになるわけだ。
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