異をとなえん |

「地域切り捨て」感想

2008.10.10 Fri

18:04:17

金子勝・高端正幸編著「地域切り捨て 生きていけない現実」を読む。
雑誌『世界』に2007年連載された記事をまとめている。
各記事はジャーナリストが地域ごとに取材して、ルポ草稿を書き、
高端氏が全国的な位置付けを書き、最終的に金子氏がまとめている。

目次は以下の通り。

はじめに
第1章 夕張破綻 もう一つのストーリー
第2章 民営化のツケ 誰がそれを払うのか?
第3章 “合併”症 国のモデルは破綻する
第4章 使えない介護保険 使わせない介護保険
第5章 原発のつぎは原発
第6章 命の値段 地域医療が壊れていく
第7章 兵糧攻め 追いつめられる自治体財政
終章 貧困化する想像力 地方から日本が崩れる

本の中では各章ごとにテーマを決めて、
地方が疲弊している状況を描写している。
地方自治体破綻、土地開発公社、地方自治体合併、介護保険、
原子力発電所、地域医療、地方自治体の苦しくなる理由などがテーマだ。

作者は、はじめにの中で、『「住めない地域から出ていけばよい」』というのは、
想像力が貧困だから地域の具体的の崩壊を理解できないとし、
無責任な言説と批判している。
しかし、私には、なぜこれが無責任な言説なのかわからない。
本の中には、地域から移住する事で解決する問題がたくさんあるように見える。
そして、具体的になぜ移住が問題なのかは示されない。

私は取材したわけでないから、移住すればいいと簡単に考えているが、
もしかしたら、いろいろ問題があるのかもしれない。
去年もかなりの人数が地方から都市に流れ込んでいる。
それらの人々が現状で生活に困っているとかだったら、
移住すればいいというのは、確かに無責任な言説と言える。
しかし、そういう話はない。
本の中では、地方に居続けている人たちが生活に困っているという話しかない。
結局、この本に対する最も本質的な批判を、最初から無責任だと決めつける事で、
ごまかしているとしか思えない。

第6章に、「命もお金しだいで決まるのでしょうか」(P119)という言葉がある。
作者たちは、この言葉に対して、
肯定しているのか否定しているのか、よくわからない。
私は、医療に金がかかり、それによって寿命が左右される以上、
命が金によって決まるのは、当然の摂理だと思う。

作者たちは、平等に医療が受けられるのは是としている気がする。
私が摂理だと言うのは、金持ちが優遇されるとかいう話ではない。
医療を全国民平等に受けられるようにするという考えでも、
その場合、受けられる治療行為は全国民の平均所得に依存する。
平均所得が低ければ、かかる治療も低くなる。
そういう意味で、やはり命はお金しだいで決まるのだ。
国民所得が低い国では、日本では簡単に助かる病気も助からない事があるだろう。
日本でもよりよい医療を求め続けるならば、所得を上げ続けるしかない。

逆に平均の医療行為では満足できない。
親にだけはお金をかけた医療をしたいと思い、
平均以上の所得があるならば平等な治療に反対する人が出てくるだろう。

どうであっても、よりよい治療を求めるならば、
より多くの金を稼がなければならないのは当然なのだ。

作者たちは、規制の解除を目指す思想は新自由主義として批判している。
しかし、規制のない自由な状況がより効率的なシステムを作る可能性は高い。
医療にしても、現行の状況が望ましいかは別として、
できるだけ、治療行為については市場で価格が決定される方がいい。
そして、貧乏だから受けられないような人には、直接所得を補助すべきなのだ。

文句をいろいろ言ったが、たくさん文句を出せる本だ。
そういう意味で読む価値がある本だと思う。
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韓国の打つ手 - 世界経済が悲鳴を挙げている(その4)

2008.10.10 Fri

04:57:08

今日も韓国の為替相場は激動していた。
終値は1ドル1379.5ウォンで昨日とほとんど変わらないが、
相場の変化は驚異的で10%近く下げてから、戻したのだ。
末期症状に近い。
10年近く前の通貨危機の状況を再現しつつある。

韓国政府の打つ手は小手先に終始している。
輸出企業はドルを手持ちすることなくウォンに変えろとか、
国民には前回とは違うから政府を信頼しろとか、
そんな精神論だけだ。
現実的な対応策を示していない。
精神論に意味はないとは言わないが、
個人・企業にとって得にならないと長続きしない。
意味のある政策としては、政策金利の引下げという、
通貨防衛とは真逆の政策だ。
現在の危機的状況では、あまり意味がないかも知れないが、
それでも通貨防衛しないというような宣言はいい影響をもたらさない。

それでは、韓国はなぜ危機的状況に陥りつつあるのか。
その原因は韓国の貿易構造にある。
韓国の貿易構造は、原材料を輸入し、それを加工して輸出するものだ。
だから、どんなレートであれ、まず必要な物は輸入するしかない。
食料の自給率が高く、エネルギー資源も豊富にあるオーストラリアなどとは違うのだ。
オーストラリアは為替相場が、あまりにも自国通貨安にふれれば、
輸入しないという選択肢がある。
韓国はそれができないのだ。
もちろん、程度論なので両国はそういう傾向にある事を言っている。

レートがウォン安にふれる事は、輸入のための金額が上昇し続ける事を意味する。
費用の上昇した分を輸出に転嫁できるかどうかは大きな問題だが、
とりあえずできると仮定する。
そうすると、輸入のための費用が上昇し続けている事は、
小売業などで運転資本が増加していることになる。
自己資本が豊富にあるならば、それほど問題ではないが、
融資によって運営しているならば、借金を増やさなくてはならない。
通常の環境なら問題なくても、
現在のように流動性が極端に不足した状態では困難であり、
極端に苦しい金利を要求される事になる。
金利の高い借金をする事自体が、為替相場に悪影響を与え、
更なる悪循環を起こす。

つまり、自国通貨があまりにも安くなると、
輸入が減り、輸出が増え、自然に反発する国と違って、
韓国は輸入が増え続けて、さらに通貨安になる国なのだ。
だから、ウォン安の流れができてしまうと、それを止めるのは難しくなる。

では、韓国政府はどういう手を打ったらいいのだろうか?
はっきり言って、
今のような状況になってから打つ手を考えるのは間違っているのだが、仕方がない。

当たり前だけど、中小企業は経営が苦しいからと言って、
サラ金に手を出して資金を取るなどは破滅の道である。
苦しい時に金利の高い金を返せるわけがない。
とにかく、ありとあらゆる所を削って、
仕入れのための費用を手にするしかない。
韓国も同じ事である。
まず、とにかくムダを削るしかない。
観光のための海外旅行の禁止、ぜいたく品の輸入禁止、
オーソドックスだが、こういう手しかない。
実の所、原油高によって貿易赤字になりそうな時、
こういう手を打たないのか不思議だ。
また、とにかく売れるものを売るしかない。
外貨準備はかなりあるのだから、
均衡さえすれば相場は落着くはずだ。

奥の手としては、輸入を割り当て制にして、
輸出企業に輸出金額分だけ割り当てるというのもある。
これは末期症状に近い。

ある意味一番簡単なのは、他の国から長期で多額の借金をする事なのだが、
これはIMFの時の再来でしかない。
できるかどうかも問題になる。

韓国政府は、巨額の外貨準備を持っているはずなのに、
有効に使えていない。
為替介入する事で、外貨準備高が減るのを恐れているのは、なにかおかしい。
介入によってウォン高にしても、貿易赤字が減らないのなら
結局、外貨準備を減らすだけだ。
これを恐れているのだろう。
そうだとしたら、貿易赤字を止めるために、景気の引締めに回るしかない。
そうできないのは、なにかが狂っているとしか思えない。
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