異をとなえん |

拉致被害者を北朝鮮に戻す?

2008.07.09 Wed

01:08:48

加藤紘一氏が拉致被害者を北朝鮮に戻すべきだと言った。

拉致被害者「戻すべきだった」=日朝交渉停滞の原因−自民・加藤氏

何を言っているんだろうなと思ってしまう。
いや、これは加藤紘一氏だけに言っているのではない。
あの当時、拉致被害者を戻すべき、あるいは、
日本に留めるべきと主張したすべての人に言っているのだ。

私がここで問題にしたいのは、北朝鮮に対する外交の話ではない。
政府に何ができるかという問題であり、
自分の解決する能力を超えた課題に対応しようとする政治家の姿勢の問題なのだ。

拉致被害者は北朝鮮にずっといたからと言って、
日本国民でなくなったわけではない。
当たり前だ。
日本国民ならば、強制的に国外に追放することはできない。
逆に日本から出国したいのに強制的に留めておくこともできない。
憲法第二十二条に、「何人も、公共の福祉に反しない限り、
移住、移転及び職業選択の自由を有する。
何人も、外国に移住し、または国籍を離脱する自由を侵されない。」
と書いてある。
移住、移転の自由が国外に強制的に追い出せない事を意味するのは明らかだ。
また、日本に留めるというのは、第二項にもろに違反している。

加藤氏は国と国との約束だと言っている。
約束自体疑問だが、条約で結ばれたとしても、
憲法の方が条約より優位だから、拉致被害者を戻す事などできない。
そして、罪もない国民をその意思に逆らって他国に引き渡す約束を結ぶ
外交官などいないと信じる。

私には、これは全くの自明な話だと思うのだが、
マスコミが全然解説しないのが不思議でしょうがない。
政治家が法律の事を忘れて、できもしない事をほざいているのも腹が立つ。

北朝鮮に戻せと主張した政治家も、日本に留め置けと主張した政治家も、
当事者たる拉致被害者がその決定を拒否した場合、どうするつもりなのだろうか。
たとえば、拉致被害者を強制的に北朝鮮に戻す場合、
逮捕して実行する以外ないと思う。
外国籍の人間を国外退去させる場合は逮捕して実行しているのだから、
それと同じ理由だ。
その時、こんな理由で警察は動くのか、裁判所は逮捕状は出すのか、
そして、裁判で国外追放を認めるのか。
全部ありえない話だ。

難しい法律論では全然ないと思うこの理屈が、
法律のプロである政治家たちの間で気にもされず論議しているのが、
私には異常に思えてしょうがない。
それとも、私が認識していない落し穴が、どこかにあるのだろうか。

拉致被害者の意思に任せるしかない事を、
政治家がとやかく言うのはおかしい。
政治家は自分の言葉に責任を持たなくてはならない。
できもしない事を、さもできるように言うのは、それが失敗した場合、
有権者の失望を招く。
当時の小泉総理が拉致被害者の意思に任せるとしていたのは、
極めてまっとうだった。
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