異をとなえん |

なぜ日本には偉大な思想家が存在しないのか?

2008.03.21 Fri

15:57:40

日本には偉大な思想家が存在しない。世界に影響を与えた意味での思想家だけでなく、日本自体に大きな影響を与えた思想家も存在しないように思う。なぜだろうか。

偉大な思想は根本的懐疑が生み出したのだと思う。現在の混迷から未来を見直すために、根本に逆のぼって思索を行なう。自分自身が、今まであいまいに準拠していた土台が本当に正しいかどうかを深く問い直す。何一つとして信じられない世の中にあって、何を信じていいか深く思索した結果が思想として結実し、後世に大きな影響を与えたのだ。キリスト、仏陀、マホメッド、孔子、マルクス全てそうだといっていい。

日本では天皇制が長く続いたことによって、秩序全てが崩壊するという自体が起こらなかった。戦国時代でさえ、天皇から与えられる国司などの称号を戦国大名がありがたく貰っていた。つまり、権威が完全に崩壊する事態が起こらないので、今までの権威にすがって生きている人間が絶望するような事はなかった。その結果として、根本的な革命思想は起こらないし、偉大な思想家と呼ばれる存在もなかった。

日本の思想家は、現在の秩序を肯定するタイプが多い。「武士道」の新渡戸稲造や、二宮尊徳もそんなタイプだと理解される。現在の秩序が保たれ、大きな変化がない中で、どう生きていくのが幸せなのかを追及している。

南北朝時代や幕末の動乱の時代のような、社会秩序が大きく乱れた時代では、天皇の権威を疑うというより、逆に天皇の権威が落ちているから国が乱れたのだ考えた人が多い。「神皇正統記」で北畠親房は南朝の正当性を訴えたが、今までの天皇の権威を否定するのではなく、天皇の権威を継承するものとして南朝の正当性を訴えている。

また、天皇制が続いただけでなく、外敵からの征服や大きな内乱がなかった事も、革命的な思想が生まれなかった理由になっている。もっとも、外敵からの征服や大きな内乱がなかったから、天皇制が続いたわけである。

日本人は保守思想というか、何も考えていなくても、なんとかなっていくというような考えを強く持つようになったと思う。もちろん、偉大な思想というのが、人々の団結を促し社会に大きな変動を与え、どちらかというと流血の事態を招いてきた側面が強い。そういう意味で日本に偉大な思想家が出なかったのは喜ばしい。
このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る